研究者たちは、これらは初期の調査結果であり、AIがもたらすスピード向上や情報アクセスの拡大といった利点が、こうしたデメリットをどのように相殺するかはまだ分からないと、しばしば慎重に指摘している。
しかし、これが警戒すべき危険性であり、その犠牲になるのを避けるために最善を尽くすべきであることを示唆しているのは確かだ。では、何ができるのだろうか。
デスキリングを防ぐために私たちができる対策
研究をさらに深く掘り下げると、最大のリスクは、AIを使うか使わないかではなく、「どのように使うか」にあることが明らかになってくる。
Anthropicの研究チームは、AIを使って学習や問題解決、意思決定を行う際に、認知的な関与を維持するような行動をとった参加者の間では、スキルへの悪影響が軽減されることを発見した。
先ほどの家庭料理人の例に戻れば、これは腕の立つ料理人が夕食を作るのを見て学ぶ有能な料理人と、脚を投げ出して料理が出てくるのを待つだけの人との違いにあたる。
このことは、問題解決を考える上で格好の出発点となる。そこで、日々のAI利用において実践できる具体的なアドバイスを紹介しよう。
1つ目は、何を失うリスクがあるのかを理解することだ。以前は(時間はかかっても)自力でうまくこなせていたことのうち、現在は何をAIに依存しているだろうか。
それが自分自身の本質や業務の根幹(執筆、コミュニケーション、プログラミング、デザインなど)に関わるものであるなら、手放すべきではない。これらのタスクに人間ならではの性質を吹き込むことこそが、機械の成果物と自らの仕事を差別化するものだからだ。それがなければ、自身の提供価値は劇的に低下してしまう。
2つ目は、AIはあくまでアシスタントであり、業務の責任を負うのは人間であることを常に忘れないことだ。つまり、AIに頼る前に、自らが主導権を握り、自分の意見を形成し、何をしたいかを明確にしておく必要がある。曖昧なアイデアのままAIに頼り、そこに目的や方向性を与えてもらおうと期待することは、一般に「AIスロップ(AIが生成した低品質な粗悪コンテンツ)」と呼ばれる、低品質で平凡な成果物を生み出す原因になる。また、それは自分自身の仕事ではないため、主体的に関与することもできなくなる。
時にはAIというセーフティネットを取り外してみるのも良い方法だ。「まだ自力でできる」という自信を保つという価値ある目的のために、あえてAIを使わずに仕事やタスクを完了させてみるのだ。


