山本一成は2021年8月、チューリングを創業。カメラから得た情報をもとに認識・判断・車両制御までを一気通貫で担うE2E(エンド・ツー・エンド)自動運転システムを開発している。さらに、歩行者・標識・信号・道路状況などを言語的に理解し、複雑な運転シーンにも柔軟に対応するフィジカル基盤モデルの開発にも取り組む。モデル開発から車両への実装まで自社で一貫推進し、完全自動運転の社会実装を目指している。同社は26年7月、シリーズAラウンド全体で278.9億円の資金調達を完了した。
宮宗孝光が代表取締役を務めるDIMENSIONは、22年7月のチューリングのシードラウンド、その後プレシリーズAでも投資を実行した。
宮宗:山本さんに初めてお会いしたのは、2019年11月。山本さんはまだ起業前だったのですが、現役の将棋名人に初めて勝った、将棋AIプログラム「Ponanza(ポナンザ)」を開発したすごい人がいると。起業後にあらためてご連絡いただいて、川崎の拠点にお伺いしました。
山本:拠点と言えないような研究室の隅っこ(笑)。当時、宮宗さんが誰よりも先に「投資する」と言ってくれたことは今でも鮮明に覚えています。シードラウンドで10億円調達すべく動いて、「無理じゃないか」と言われたり、途中から連絡が取れなくなる投資家が多いなかで、「投資する」と最初に言ってくれることは、起業家にとって本当に大きなこと。事業が軌道にのる前のお金と後のお金は全然違いますから。
宮宗:僕らは起業家の大きなチャレンジを後押しするためにリスクマネーを供給していますから。だから、初回と次のラウンドもトライし続けていたら投資しますとその場でお伝えしました。山本さんに投資をした理由は、当時から「We Overtake Tesla(テスラを超える)」という壮大なミッションを掲げていたこと。さらに、ミッションだけでなく、すでにものをつくりテストをしていたことも大きいですね。将来確実に起きるであろう動きであり、かつ、大きなマーケットで、しかもハードルが高く、困難さが大きな領域を、「ここをやりきる」と明確におっしゃっていたのが印象的でした。
山本:宮宗さんが投資を約束してくれた後、「うちも」「うちも」と続くかと思ったらそうならなかった。資金がなくなってきて「ヤバい」と自分のお金を入れなければならなくなったくらいでした。それくらいギャップがありました。
宮宗:僕が思う、山本さんの起業家として優れているところは、初期に掲げた「錦の御旗」を下げていないところ。当初想定していたことと事業の環境や進捗など変わってきているなかで、またハードシングスなどがあるなかでも、高い目標を変えていない。



