「高輪は日本の近代化を進めてきたイノベーションの始まりの地。その歴史を引き継ぎ、100年先の豊かな社会をつくるための実験場にしたい」
今年3月、TAKANAWA GATEWA CITYが全面開業した。東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)が進めてきた大規模再開発プロジェクトで、総事業費は約6,100億円以上。すでに昨年まちびらきが行われていたが、今回、複合型ミュージアム「MoN TAKANAWA」など、新たに3棟が開業してグランドオープンとなった。
代表取締役社長の喜㔟陽一がTAKANAWAGATEWAY CITYの意義を熱く語るのは、社運を懸けた巨大プロジェクトであることだけが理由ではない。イノベーションの実験場という位置付けは、2018年に自身が常務としてプロジェクトを直接担当したときに練り上げたもの。生みの親のひとりとしてそれを強調するのは当然だ。
そもそも喜㔟はプロジェクトとの付き合いが長い。再開発が決まったのは03年。決断したのは当時社長を務めていた大塚陸毅で、喜㔟は秘書として大塚に仕え、意思決定を間近で見てきた。
15年後、担当役員として開発のスタートボタンを押した。工事を始めると、地中から想定外のものが姿を現す。高輪築堤の石垣だ。明治5年、日本初の鉄道が新橋・横浜間で開通。一部区間は海の上を走らせたが、そのとき海上に築かれた堤が高輪築堤である。
「高輪築堤は、日本の近代化に挑戦した先人たちの偉業です。なんとか残すべく計画を見直して、計120mを現地に保存できました。そうやってかかわってきたプロジェクトのオープニングを、こんどは社長として迎えることができた。因縁を感じます」
明治初期の高輪は、日本の鉄道網の形成を支えた。では、令和の高輪ではどのようなイノベーションが生まれようとしているのか。
一例はロボットデリバリーだ。TAKANAWA GATEWAYCITYのアプリでフードを注文すると、ロボットがオフィスまで配送。ロボットはエレベーターと同期していて、何階でも利用可能だ。このサービスは実装済みで、ほかにもさまざまなイノベーションの実証実験が進行中である。
壮大な実験の鍵を握るのはSuicaだ。喜㔟はモビリティと生活ソリューションの2軸経営を打ち出しており、Suicaを基盤に2事業を連携させることを目指している。
「例えば駅の改札を出たら、その情報が部屋に届いて帰宅前にクーラーが自動でついたり、宅配業者がちょうどいいタイミングで荷物を届けてくれたりする。Suicaを生活デバイスにして新しい生活圏をつくっていくイメージです」



