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2026.07.31 11:00

KOKO HOTELSを起点に始まる、ポラリス・ホールディングスの挑戦

インバウンド需要の拡大と旅行スタイルの多様化を背景に、ホテル業界はいま大きな転換期を迎えている。かつて、いわゆるビジネスホテルと称される宿泊特化型ホテルは、「安全・清潔・機能的」であること、そして価格競争力が重要な価値とされた。しかし、いまはこうした機能的価値だけでは差別化が難しい時代だ。その先にある新たな価値の創出が、これからのホテルには問われている。


全国63カ所で「KOKO HOTELS」を運営するポラリス・ホールディングスも、その変化を見据え、「Here Discovery Begins. ここから見つける旅を」というタグラインのもと、ホテルを“旅の起点”へと進化させてきた。

「『KOKO』というブランド名には、3つの意味を込めています」と語るのは、ポラリス・ホールディングスの取締役兼COOとしてホテル運営事業を統括する下嶋一義(以下、下嶋)だ。

「まずは、“ここ”という場所。いま自分が滞在している場所、この街、このホテル。旅の出発点となる現在地を意味します。つぎに“いま、ここ”という時間。過去でも未来でもなく、その土地でしか味わえない瞬間を楽しんでいただきたいという思いです。そして最後が、“心地よさ”。旅の目的も、過ごし方も、人それぞれではありますが、その根底には常に快適性への追求があります」(下嶋=以下同)

下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼COO。
下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼COO。

基本コンセプトとなるのは「FEEL THE LOCAL」

「Here Discovery Begins. ここから見つける旅を」というタグラインには、“ここ”を起点に、街へ踏み出してほしいという思いが込められている。「ホテルは単に眠るだけの場所ではなく、その土地と出会う入口でありたい」と考える下嶋が重視するのが、「FEEL THE LOCAL」、地域ならではの魅力を宿泊体験へと取り込み、その土地との出会いを生み出していくというコンセプトだ。

「『KOKO HOTELS』のようなリミテッドサービスホテルは、施設の中だけで体験価値を完結させることは難しい。ホテルの外にある地域の魅力を、お客様へ届けることが私たちの役割だと考えています」

この「FEEL THE LOCAL」を実現するため、各ホテルでは地域とのコミュニケーションに力を入れてきた。地元の祭りへの参加や地域コミュニティと積極的に交流し、下嶋自身も札幌、福岡で開催されるリレーマラソンに社員とともに参加するなど、ホテルの外へ出て地域との接点をつくることを大切にしている。

また各ホテルで提供するご当地食材を生かした朝食も、「FEEL THE LOCAL」を体現する取り組みのひとつだ。札幌のスープカレーや旭川の海鮮丼、東京は築地名物の玉子焼き、沼津の鯵の干物、大阪の串カツ、高松のうどんや下関のふぐ雑炊などなど……スタッフが自ら街を歩き、飲食店を訪ね、地域の文化や暮らしに触れることで発見した魅力をサービスへ結実させてきた。

「朝食は、お客様がその地域性を強く感じていただける機会ですから、力を入れています。ホテルの競争力は建物や設備だけで決まるものではありません。地域とのつながりや、そこで働くスタッフの想い、その土地で積み重ねてきた時間――そうした目に見えない価値こそが、我々のブランドを育てるのだと思います」

KOKO HOTEL 旭川駅前では“イクラかけ放題”の海鮮バイキングを提供。
KOKO HOTEL 旭川駅前では“イクラかけ放題”の海鮮ビュッフェを提供。
KOKO HOTEL 大阪新世界では、下町グルメ「粉もん」「串カツ」「ホルモン」「肉すい」などを取り入れた和洋ビュッフェを提供。
KOKO HOTEL 大阪新世界では、下町グルメ「粉もん」「串カツ」「ホルモン」「肉すい」などを取り入れた和洋ビュッフェを提供。
KOKO STAY 下関の一番人気は、とらふぐのあらで出汁をとった「ふく雑炊定食」。
KOKO STAY 下関の一番人気は、とらふぐのあらで出汁をとった「ふく雑炊定食」。

この考え方は、「KOKO HOTELS」だけにとどまらない。同社は現在、より上質な滞在を提案する「KOKO HOTEL Premier」、長期滞在を見据えた「KOKO HOTEL Residence」に加え、アップスケールブランド、さらにはライフスタイルホテルや旅館など、新たなカテゴリーの開発も進めている。しかし、ブランドや価格帯が変わっても、目指すものは共通しているそうだ。

「温泉でも、長期滞在でも、アップスケールでも、その土地の文化や人との接点をどう生み出すか。そして、ホテルを旅の起点にするという考え方は変わりません。『FEEL THE LOCAL』は、すべてのブランドに共通する我々の軸となるコンセプトです」

「ホテル」が地域をつなぐ場所になる

ここでひとつ、注目したいのは「KOKO HOTEL 飛騨高山」(岐阜県高山市)で開催されている「サステナブルファッションショー」だ。

「まずホテルの館内に不要な衣料品の回収ボックスを設けました。そこから回収された衣類や、ゲストの忘れ物で保管期限を過ぎた衣類を、地元の飛騨高山高校生活デザイン科生徒たちがデザインしてアップサイクル。出来上がった作品を高校生と障害者支援施設の利用者がモデルとなって着用し、ファッションショーとして披露しました」

会場となったのは、地域のホールなどではなくホテルのレストラン。宿泊施設が、地域の人々をつなぐコミュニティの場へと姿を変えたことは地元でも大きな話題となったが、この取り組みはそこで終わらない。このショーに参加した高校生から新卒採用者が生まれたことは、下嶋も予想していなかっただろう。

「地域との取り組みが採用にもつながり始めています。ブランドに共感した仲間が増え、その仲間がまた地域との新しい関係をつくっていく。そうした循環が少しずつ生まれてきました」

これは地域との関係性を積み重ねてきた「KOKO HOTEL 飛騨高山」が土地に根づく存在となった好例といえるだろう。やがて、こうした時間そのものが他社には簡単に真似のできないブランド価値へと育っていくはずだ。

「ポラリス ホテルズ&リゾート」マスターブランド構想

2026年6月18日にオープンした KOKO HOTEL Premier 東京ベイ幕張。
2026年6月18日にオープンした KOKO HOTEL Premier 東京ベイ幕張。

「今後はプレミアム、レジデンス、ライフスタイルホテル、日本旅館など、カテゴリーはさらに広がっていきますが、どのブランドへ泊まっても、『ポラリスらしい』と感じていただけることが大切です」

ホテルカテゴリーの拡大に伴い、同社が次のステージとして見据えるのが、マスターブランドの構築だ。運営するホテルブランドが増えれば増えるほど、顧客がどのホテルを選んでも共通の価値を感じられる“ブランドの背骨”が必要になるからである。

そこで新たに構想するマスターブランド「ポラリス ホテルズ&リゾーツ」では、マリオットやヒルトンのように、多様なホテルブランドを束ねながら、それぞれの個性を生かしつつ、グループ全体として一貫した価値を提供することを目指す。

「その核となるのが、やはり『FEEL THE LOCAL』。ブランドや価格帯が変わっても、その土地ならではの文化や人との接点を宿泊体験へと昇華するという思想は揺るがないものです」

「FEEL THE LOCAL」は、地域とのつながりを語るだけのスローガンではない。地域ごとに異なる魅力を生かしながら、ひとつの価値観でブランドを束ねていく。そして、旅の起点となるホテルを全国へ広げていく――。ポラリス・ホールディングスが描いているのは、日本の地域性をブランド資産へと変える、新しいホテルグループ像なのである。

ポラリス・ホールディングス
https://www.polaris-holdings.com/


しもじま・かずよし◎ポラリス・ホールディングス取締役兼COO。ホテル・旅行業界でマーケティング、ブランド戦略、国際事業に従事。国内外のホテル運営やオンライン旅行事業に幅広く携わり、2021年よりミナシア代表取締役社長、2025年より現職。

promoted by ポラリス・ホールディングス | text and edited by Miyako Akiyama | photo by Kenta Yoshizawa