記者説明会にて応対したソニー株式会社 技術センターの大場契沖氏は、マスバランス方式を採用した理由について次のように語っている。
「マスバランス方式は、将来的に完全に100%バイオになる未来につなげるために、あくまで過渡期のソリューションとして、少しでもバイオ素材の比率を拡大するための挑戦です。現状のインフラを活用しながら、現実的に社会実装を進めていくことができる有効な選択肢だと考えています」
「Road to Zero」に対する貢献
このリニューアブルプラスチックの導入は、製品に採用する素材を置き換えることだけが目的ではない。ソニーと三菱商事が中心になって立ち上げたプロジェクトでは、バイオマス原料の調達から、化学メーカー、樹脂メーカー、そして最終製品を製造するソニーに至るまで、5カ国・14社をまたぐグローバルサプライチェーンを構築した。さらに、この長大で複雑なサプライチェーンの全貌を可視化し、一元管理できる仕組みを整えた。
従来は製品に採用したプラスチックの原材料がどこから来ているのか、ブランドオーナー側が完全に把握することは難しかった。サプライチェーンが可視化されることで、ソニーは素材の製造過程におけるCO2排出量を正確に把握し、削減するための主体的な選択が可能になる。また資源の枯渇を防ぐ「新たな採掘資源の使用ゼロ」という目標と、気候変動への対策が両輪で進められることにもつながる。
一方では、環境に配慮した新素材の導入にはコストの壁が立ちはだかる。現状、バイオマス原料から作られるリニューアブルプラスチックは、従来の化石由来のバージンプラスチックに比べてコストが高い。
ソニーは、この素材をまずフラグシップモデルや高付加価値製品に採用し、段階的に導入を広げることで、製品価格や利益率への影響を抑えている。先に挙げたリニューアブルプラスチック採用製品の担当者に取材した際にも、「環境性能と製品品質のどちらもあきらめない」という姿勢が一貫していた。コストの上昇を理由に、製品の性能や品質を妥協することはなかった。
課題はバイオマス原料の絶対的な供給量と、市場の需要とのギャップだ。大場氏も指摘するように、現在はまだバイオマスの生産能力が世界的に十分ではなく、過渡期にある。需要を喚起し、スケールメリットを生み出すことで将来的なコストダウンを図ることが、これから業界全体の課題になる。


