本体ではなく充電ケースに使用したこともあり、イヤホンの音質に直接的な影響を与えることはないが、リニューアブルプラスチックはバージン材と同等の物性を持つため、再評価や音質再調整の手間をかけずに環境対応を実現できたことは大きなメリットになる。
プロのアーティストがステージ上で使用する有線タイプのモニターイヤホン「IER-M500」も、ハウジング(ドライバーを包む外殻部分)にリニューアブルプラスチックを採用する。ソニーが今年新しく発売する製品なので、素材変更による既存モデルのサウンドからの音質変化に気を配る必要がなかった。
本製品はアーティストが装着した時に「目立たない」ことが重要であるため、ハウジングに透明度の高いプラスチック素材を使うことが求められた。マテリアルリサイクルでは無色透明の樹脂を作ることが困難だが、リニューアブルプラスチックを採用することで、デザイン性と音質のバランスを取りながら、製品全体に使用するプラスチックのうち、約35%を循環材料に置き換えることに成功した。
そして3つめの事例が、有機ELテレビのフラグシップモデル「BRAVIA 9 II」だ。テレビの大型化に伴い、樹脂部品の使用量も増加する。本モデルでは背面カバーや一部の光学部品にリニューアブルプラスチックが採用された。
テレビの背面カバーには難燃性を高めるための添加剤が含まれている。従来はベース樹脂の再生材化はできても、添加剤は化石由来の材料に頼らざるを得なかった。今回、添加剤の成分を新しいリニューアブルプラスチックに置き換えたことで、本体の強度と難燃性を保ちながら、さらなる環境負荷低減を実現している。光学部品に関しては、リニューアブルプラスチックの透明度を高くできることが採用の決め手になった。
ソニーは今後も引き続き、新しいリニューアブルプラスチックを同社ブランド製品を中心に採用を拡大していく考えだ。
質の高い環境配慮型素材を生み出す「マスバランス方式」
今回の取り組みで重要となるのが、「マスバランス方式」と呼ばれる製造・管理手法を採り入れたことだ。
バイオマス原料のみで100%のプラスチックを製造することは、現在の世界のインフラや供給量では非常にハードルが高い。そこで、製造工程において従来の化石由来の原料(石油)と、バイオマス由来の原料を混合してプラスチックを生産する。そして、投入したバイオマス原料の「量」に応じて、出来上がった製品の一部に「これはバイオマス由来(=リニューアブル)である」という特性を割り当てるのがマスバランス方式だ。
この方式の最大のメリットは、既存の巨大な化学プラントや製造プロセスをそのまま活用できる点にある。これにより、材料の品質を落とすことなく環境配慮型の素材が生み出せるのだ。


