経営・戦略

2026.07.25 11:15

「私欲を超え、大欲に立つ」──金融界の巨人をつくった生き方の指南書|SBI会長・北尾吉孝

そして、ふたりの共通点ともいえる「知行合一」。大欲を抱くにとどまらず、また良書を読むだけにとどまらず、消化し実践する。「知行合一、これが一番重要。社会生活、日常生活の中で実践して初めて意味をなす。僕はその実践をずっと続けてきた」(北尾氏)

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内を正し、外を変革する教育

北尾氏は75歳を越えた今、経営トップとして後継者の育成にも心血を注ぐ。論語の『後生畏るべし』を引き、人間社会は次世代によって必ず前進していくと信じる。

「会社にとって、ここからが重要な時期。僕が一から生んで育ててきた会社を、どう継承していくか。僕がいなくなったらすぐダメになるような会社ではしょうがない。200年、300年と続く事業体にしていかなければいけない」(北尾氏)

人を育てる立場としての北尾氏を支える森の教えは、こうだ。

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真の教育というものは、その根本において、実に人間救済に対する偉大な情熱を持つでなければ、とうてい真の力を持つものではないわけです。しかも人間救済の情熱は、これを大別する時、結局、政治と教育という二つの現れ方をすると言ってよいでしょう。

すなわち政治は外を正すことによって、内をも正そうとするものであり、教育はこれに反して、内を正すことによってついには外をも正そうとするものであります(第1部・第35講「為政への関心」)

その「教育」の姿勢が表れているのが、北尾氏による若手社員の見極めと登用だ。SBIグループでは、新入社員に小論文を課している。小論文の課題となるのは、北尾氏自身が知らない、もしくはこれから知りたい分野。若者の感性から学びながら、才能を見極める。光るものがあればチャンスを与える。

「若者を信じてはいる。しかし、鍛えないと、せっかくいい素材があっても伸びていかない。小論文を読めば、その人の能力がどれぐらいか、その人物がどういう人物か、だいたい頭に入る。読んで気に入ったら呼び出して、『1億円渡すから、会社を作れ』と即決したこともある」(北尾氏)

例えば、アフリカ進出を画策していた際に社内で担当者を募ったところ、若手社員が手を挙げた。その若手社員が打ち出したのは、日本の中古車をアフリカで販売するビジネスだった。北尾氏はこれをすぐに事業化することを決断し、その若手社員を代表とする会社を設立した。

北尾氏はその若手社員に対して、「今の事業(中古車の販売事業)はそのままでいい。しかしSBIグループとしては、金融事業でアフリカを制覇したい」と方向性を示した。そして、次のように助言したという。

「既存事業に暗号資産やステーブルコインをどう組み込み、送金・決済にどう活用するか。あるいは、アフリカでの資産形成をどう支援するか。アフリカは固定電話より先に携帯電話が普及し、モバイル端末が広く行き渡っている。このモバイルと消費をどう結びつけるか。あらゆる取引の裏に金融がある。だから金融は必ずやりなさい」

制度や社会の仕組みを外側から変え、人を導く営みを「政治」とするなら、社会基盤を更新するSBIグループの事業は、それと重なる。また、若者を信じ、鍛え、責任ある仕事を託すことは、人間の内側から社会を変えていく「教育」の実践と読める。森の「政治は外から内を正し、教育は内から外を正す」という教えが、同グループには息づいている。

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文= 本田賢一朗 編集=谷本有香、大柏真佑実

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