北米

2026.07.23 12:34

5兆ドル(約815兆円)市場を変えるAI、産業営業の複雑さに挑むEmanate

Adobe Stock

Adobe Stock

工業系企業の営業は難しい仕事だ。営業担当者が通常担うすべての役割──アウトバウンドのアプローチ、インバウンドの問い合わせ管理、顧客との時間、日常の事務作業──に加え、扱う素材やサービスに関する深い専門知識を持ち、最新の関税や規制を常に把握し、価格見積を提示するために複雑な数値計算までこなさなければならない。ベイエリアに拠点を置くスタートアップEmanateは、こうした営業担当者が行う業務の大半を担うAIプラットフォームを提供し、担当者が顧客との関係構築とコミュニケーションに集中できるようにすることで、この状況を変えようとしている。

工業材料および流通企業の市場は5兆ドル(約815兆円)規模にのぼるが、動きが遅く時代遅れと見なされてきた。しかし、創業者のKiara Nirghinは、このテクノロジーが業界間の大きな平準化をもたらすと考えている。「これまで新しいものの導入が遅いと見なされてきた企業が、今や新たなものすべてに対して同じ土俵に立てるようになる」と彼女は語る。「これはかつてないほど大きな平準化だ。エンジニアリング能力の不足や商業サイドをスケールできないといった、これまで彼らを縛ってきた要因が消え去るため、こうした企業を『動きの遅い企業』と見なすことは今後ないだろうと私は考えている」

Nirghinの仮説は、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)をはじめとする有力なVC(ベンチャーキャピタル)からの支持を得ている。「企業向けAIの多くはコスト削減を目的として販売されている。Emanateが際立っていたのは、売上高(トップライン)の成長を促進するAIを構築した点であり、現代経済の根幹を成しながらも見過ごされてきた巨大な産業資材市場に焦点を当てた点だ」と、同スタートアップの初期投資家の1人であるAndreessen Horowitzのゼネラルパートナー、Jonathan Laiは語る。新たに完了した募集超過ラウンドには、M13、そして元Khosla VenturesのGPが率いる会社やGroqの最初の投資家からの資金も含まれている。

もちろん、AIを活用した営業ツールはすでに数多く市場に出ているが、Nirghinはそれらが工業系企業の扱う複雑さのレベルに対応できていないと指摘する。「この業界の製品は極めて複雑だ」と彼女は言う。「技術仕様、グレード、加工要件を理解する必要がある。素材の価格設定、加工、あるいは顧客への納品方法は、実際に数学的な判断を伴う。汎用的なAIではこれを本当に扱うことはできない」

Emanateはまた、工業特有の要件──数週間に及ぶ見積サイクル、ミル・グレードの仕様、端材在庫の追跡など──に合わせて構築されたモデルの「ハーネス」を作り上げることに注力した。「私たちのエージェント・ハーネスは数学的な性質を持つ。エージェントは顧客のライブシステムデータに対して計算し、自身をチェックし、再度チェックし、そして人間が作業を監督する」とNirghinは語る。「自己学習ループが確実に組み込まれるようにしている。優れたエージェント・ハーネスがあれば、ハルシネーションは見たことがない」

Nirghinが注力する市場は、サービスが行き届いていない一方で急速な成長が見込まれる。米政府は今後数年間の最優先課題の1つとして再工業化を掲げているからだ。最近まで、これらの企業の多くはスプレッドシートや電話といった旧来の手法で運営されており、長年勤めた従業員が退職や離職をする際には組織的な知識を丸ごと持ち去ってしまうのが常だった。今やAIによって、彼らはスケールアップし、その知識を保持・活用し、他の市場と競争できるようになる。

「シリコンバレーの人々がこうした業界について考えるとき、彼らは決まって『テクノロジーを取り入れてこなかった非常に古い業界だ』と言う。しかし、それは事実ではない」とNirghinは語る。「蛇口から水が出るようにするために、あの鉄管を敷設するまでにどれほどのイノベーションが必要だったか考えたことがあるだろうか。それはメールよりもはるかに大きなイノベーションだ」

Nirghinはスタンフォード大学の卒業生で、ティール・フェローであり、AI研究でGoogleのグランプリを受賞している。TIME誌の「最も影響力のある人物」リストにも選ばれた。Emanateは、スタンフォード、バークレー、MIT、Google、Meta、NASA出身のコンピュータサイエンティストとAIエンジニアから成るチームだ。

AIが進化するにつれ、複雑で業界特有のタスクを処理できる能力は、業界間の競争条件の平準化を意味する。フロンティア・モデルは、シリコンバレーの最先端スタートアップから中西部の工業企業まで誰もが利用できるようになり、この上げ潮はすべての船を押し上げる(全体の底上げにつながる)ことになるだろう。再工業化は米国が「作るもの」を再構築しつつある。未解決の課題は、それをいかに売るかである。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事