トランプ大統領は、今回の大統領令について、企業に過度な規制負担を課すことを避けるため、「対象フロンティアモデル」の評価期間を、当初の90日から30日に変更したと報じられている。また官民の枠組みも「政府による義務的なライセンス、事前承認、許可の創設」を認めると解釈してはならず、企業の自主的な行動であることが強調されている。
このような企業の自主性を重視する大統領令の内容は現在の業界の動きと大きく異ならない。すでにアンソロピック社やオープンAI社などの米国の主要AI企業は、商務省傘下の国立標準技術研究所(NIST)との間で、自主的にフロンティアAIモデルの安全性評価等の協力を進めている。一方で、今回、輸出規制が課されたことは、官民の間で安全性リスクに対するコンセンサスが得られない場合、政府が規制措置を講じる可能性があることを示した。
フロンティアAIモデルのアクセス停止は、日本の政府や重要インフラ(サイバーセキュリティ政策では重要インフラ15分野が指定)のサイバー防御にも大きく影響する。今後は、米政府が規制措置を講じる場合の基準やプロセス等が整備されるかを注視するとともに、そのような措置が講じられる場合、日本の信頼できる組織に対して例外措置を設ける可能性などを米国と協議していく必要があるだろう。
山田哲司◎地経学研究所主任客員研究員。専門は、地経学、経済安全保障。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修了(MBA)。1996年より日本企業にて各国政府向けの社会インフラ事業などに従事。2018年から2022年にかけてワシントンDC駐在員として、米政府などに政策提言を実施した。2022年より現職。


