米国とサウジアラビアは米国時間7月22日、平和的原子力協力協定(通称「123協定」)と、付随する二国間保障措置協定に署名した。署名したのは、クリス・ライト米エネルギー長官とアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相だ。米エネルギー省によると、協定は今後、ドナルド・トランプ大統領による正式な承認声明などを添えて米議会に送付される。
ニューヨーク・タイムズの報道では、サウジに有利な譲歩を盛り込んだとされる。国際的な核査察を制限し、サウジによるウラン濃縮やプルトニウム再処理を認める可能性があるという。また署名は、トランプと一族が第2次政権下でサウジとの事業関係を強めている時期に行われた。
トランプ一族、サウジ関連取引で2024年に約81億5000万円
トランプとサウジアラビアとの関係は1980年代までさかのぼる。トランプとその一族は1期目の任期終了以降に同国でのビジネスを拡大させており、2024年にサウジアラビアの投資家と交わした取引は少なくとも9件、規模にして推定5000万ドル(約81億5700万円。1ドル=163円換算)に達するという。
トランプ一族とサウジアラビアによる最新の取引の1つが、トランプ・オーガニゼーションが2025年11月に発表したサウジアラビアの不動産開発会社ダール・アル・アルカンとの提携だ。これにより、モルディブのホテルにトランプのブランド名がライセンス提供された。ダール・アル・アルカンとのライセンス契約はこれ以外にも、2024年7月と2025年9月にそれぞれ発表された「Trump Tower Jeddah」および「Trump Plaza Jeddah」、さらに2024年12月に発表されたリヤドの2つの高級住宅コミュニティ開発などが含まれる。
トランプがサウジアラビア側と交わした記録上最初の取引は1987年で、武器商人のアドナン・カショギを通して2900万ドル(約47億3100万円)の大型クルーザーを購入したことだった。1990年代には、トランプはこのクルーザーとニューヨークのプラザホテルの所有権の一部をサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール・ビン・アブドゥルアジズ・アル・サウード王子に売却している。
モルディブでの事業提携の発表直後に皇太子と会談
トランプは第1次政権の2017年5月、大統領就任後初の外遊でサウジアラビアを訪れた。その後、トランプがサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と最後に会ったのは2025年11月のホワイトハウスでの会談だ。前述のモルディブの案件が発表されてから4時間もたっていなかった。その際、トランプは記者団に対し、自身の一族はサウジアラビアと「ほとんどビジネスを行っていない」と主張した。
トランプはまた、反体制派のサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ(前述したアドナン・カショギの従兄にあたる)が殺害された事件をめぐり、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子を繰り返し擁護してきた。バイデン政権時代の米情報機関の報告書はムハンマド皇太子が暗殺を承認したと結論付けているが、皇太子自身はこれを否定している。そんな中、トランプは昨年11月の会談で記者団に対し、皇太子は事件について「何も知らなかった」と主張し、カショギを「非常に物議を醸す人物だった」と表現した。
原子力発電所建設の提案と利益相反の指摘
米下院監視委員会の民主党議員らによる報告書によると、トランプ政権の1期目において、億万長者の不動産投資家トーマス・バラック・ジュニアはホワイトハウスに対し、自身が経営する企業を含む米企業がサウジアラビアによる原子力発電所の建設を支援すべきだと提案していた。バラックは、サウジアラビアなどイスラム教徒が多数を占める国々に対してトランプが課した渡航制限をめぐる緊張がこれによって緩和されると主張していた。
トランプは、利益相反の懸念を避けるため、2期目の大統領就任時に一族企業における自身の利害関係を息子が管理する信託へと移管した。しかし一方で、トランプは自身の資産を売却しておらず、多くの資産において財務上の利害関係は維持し続けられているとの批判もある。



