同じ市場は2つとして存在しない。それにもかかわらず、あまりに多くの多国籍企業が、画一的なグローバル戦略を携えて新たな環境に参入し、本国で通用した同じ手法がどこでも機能すると期待している。私が一緒に仕事をしてきた最も成功している国際的リーダーたちは、異なる発想を持っている。彼らは戦略をレゴ®ブロックのように捉える。同じ中核的なピースを、環境が求めるものに応じて異なる形に組み立てるのだ。
固定的な計画の問題
1990年代のバグダッドで育った私は、市内に点在するスカンジナビア製の防空シェルターに魅了されていた。それらは巨大なコンクリート構造物で、窓はなく、分厚い壁と1つの出入り口だけがあった。ベージュ色のれんが造りが延々と続くバグダッドの街並みを背景にすると、ほとんど異物のように見えた。だが側面に色鮮やかな壁画が描かれていると、私にはなじみのあるものを思い起こさせた。特大のレゴブロックである。当時の制裁下にもかかわらず、私は何とかレゴのセットをいくつか手に入れていた。そのため、10歳の私の頭にはそうした連想が浮かんだのだ。
数年後、イラクのような複雑な市場に参入する多国籍企業と仕事を始めたとき、あの「レゴ」のブロックが再び頭に浮かんだ。あまりに多くの場合、私は企業が固定的な計画を携えてやって来るのを目にした。彼らにはそれを調整する意思がなく、その結果として苦戦していた。一方、成功した企業は別のアプローチを取った。レゴのピースが適合して初めて機能するのと同じように、戦略も現地知識、文化的配慮、地域社会への投資といった適切な接合要素がそろって初めて成り立つことを理解していたのである。私はこれを文化的アジリティと呼んでいる。自社の中核的価値観を損なうことなく、現地の規範の中で機能できるだけの柔軟性を保つ能力である。
市場に合った適切なピース
文化的アジリティには、自社の戦略のうち、どのピースを変える必要があり、どのピースを固定したままにすべきかを見極めることが求められる。中核的価値観、倫理、基準は妥協すべきではない。これらはグローバル戦略の土台となる構成要素であり、どこへ行くにも持参するレゴのピースである。だが、手持ちのキットがどれほど充実していても、現地に入るまでは持っていない、そして持ち得ないピースが必ず存在する。
イラクで事業を展開する多国籍企業の異文化リーダーシップ戦略に関する私の博士研究では、参加者の60%が、リーダーはなじみのない文化との衝突や誤解を避けるために現地パートナーを活用すべきだと述べた。その現地知識自体が1つの構成要素であり、私がイラクで目にした多くの欧米系多国籍企業には欠けていたものだった。そうしたピースがそろっていなければ、どれほど資源に恵まれた企業であっても、立ち上がらないものを組み上げることになる。
適切な接合要素は市場によって異なる。地域社会を知る現地マネジャー、その地域の出身で言語だけでなく文化的なニュアンスを理解している通訳、あるいは単に、いくつかの言葉を学び、現地の慣習を観察し、それに応じてコミュニケーションの取り方を適応させる意思のあるリーダーである。一見小さく見えても、こうした「ピース」は、新市場におけるグローバル戦略の成否を左右し得る。
持続するグローバル戦略を組み立てる
私が複雑な市場で成功するのを見てきたリーダーは、最大の予算や最も精緻な計画を携えてやって来た人々ではない。好奇心を持ち続け、柔軟であり続け、適切なピースを見つけるために時間をかけた人々である。グローバル戦略の強さは、その適応力にかかっている。適応できない戦略は持続しない。



