どのような事業を営んでいても、どの業界で活動していても、追いかけたくなる「きらびやかなもの」は常に存在する。私が自分の会社を成長させていたとき、善意ある投資家や取締役、ビジネスパートナーからの圧力は絶えなかった。「これを買ってはどうか」「あの会社のような製品を作ってはどうか」。慎重に検討した結果、答えはたいていの場合、ノーだった。振り返ると、こうしたノーがあったからこそ、会社は中核となる提供価値であるヘルスケア・ナビゲーションに集中し続けることができ、最終的にそれが最大の競争優位になったのだと思う。
競合との比較が「きらびやかなもの症候群」を生む
多くの創業者は「きらびやかなもの症候群」に陥る。常に次の目新しいものを追いかけているため、同時に10ものことを抱え込む。その結果、中核となる提供価値に、成長に必要な酸素を与えることができない。この問題の一般的な原因のひとつが、比較の罠である。競合が何か新しいものを立ち上げると、必ず「自分たちもやるべきか」という問いが出てくる。その問いは創業者自身から出ることもあれば、取締役、投資家、ビジネスパートナー、さらには顧客から出ることもある。
しかし、競合にとらわれ過ぎることは罠である。そうなると、自社の定義を競合に委ねることになるからだ。父はいつも、競争とは他者との戦いではなく、自分自身のベストとの戦いだと教えてくれた。第一に集中すべきなのは、常に自社であり、顧客のために価値を創造する上で自社が最も得意とすることである。
イースターバスケット理論 自社の「チョコレートのウサギ」を知る
この考え方を別の角度から説明するために、私は「イースターバスケット理論」と呼ぶものを使っている。イースターバスケットを受け取ると、中にはさまざまなものが入っている。飾り草、色付きの卵、マシュマロのひよこ、小さなチョコレートの卵。そして、その中に誰もが本当に欲しがる大きなものがひとつある。巨大なチョコレートのウサギだ。チョコレートのウサギこそが本当の賞品である。とはいえ、チョコレートのウサギだけが入ったイースターバスケットを誰かに渡すわけにはいかない。座らせるための偽物の草の敷物すらないバスケットの中で、それだけががたがたと動いている様子は、どこかおかしく見えるだろう。
そこで企業は、バスケットに入れるほかのものを探し、製品やサービスを追加する。だが、その際に、それらの追加要素が本当に価値を生み出すかを必ずしも確認しているわけではない。単にバスケットをいっぱいにしようとしているだけだ。最初のうちは、そのバスケットは見栄えがよいかもしれない。しかし顧客が中身を取り出し始めると、その内容に満足しないかもしれない。まともなのはチョコレートのウサギひとつだけで、残りは欲しくもないものばかり、ということになりかねないからだ。
別の選択肢は、バスケットに入れるひとつひとつに意図を持つことである。新たな買収、ポイントソリューション、誰もが不可欠だと言い張るテクノロジーといった、きらびやかなものをめぐる圧力に直面したとき、私はいつも同じ根本的な問いに立ち返る。これは消費者にどのような価値を生み出すのか。
競争優位は中核となる提供価値への集中から生まれる
中核となる提供価値に集中することは、顧客のニーズや欲求に常に応え続けるための方法である。追加機能や製品、サービスで人々を満足させようとするのではなく、既存の提供価値をさらに良くすることで満足を維持する。他社の動向にばかり気を取られ、きらびやかなものを追いかけ始めた瞬間、あなたは主導権を他者に渡してしまっている。状況を認識し、戦略的に集中することで、自社の未来と立ち位置を自ら定義し、長期的な競争優位を明確に示すことができる。



