欧州

2026.07.23 07:00

プーチン露大統領の失脚は先送りか 国防相の更迭巡るウクライナ国内の混乱で

ウクライナの首都キーウで、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領によるミハイロ・フェドロウ国防相の解任に抗議する市民。2026年7月20日撮影(Paula Bronstein/Getty Images)

ウクライナの首都キーウで、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領によるミハイロ・フェドロウ国防相の解任に抗議する市民。2026年7月20日撮影(Paula Bronstein/Getty Images)

大きな反響を呼んだ前回の記事では、現状のままではロシアのウラジーミル・プーチン大統領は失脚に向かうだろうと予測していた。だが、その流れは完全にではないが、大きく変わってしまった。

すべては、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、就任からわずか半年、しかも大きな成果を上げた半年で、国民から絶大な人気を集めていた若きミハイロ・フェドロウ国防相(35)を解任したことが原因だ。すでに世界中で報じられているように、ウクライナでは首都キーウをはじめ、国内各地で同相の解任を巡る抗議デモが発生している。ソーシャルメディア(SNS)のコメント欄では、現場の兵士も含め、大規模な批判が噴出し、ウクライナ軍は報復をちらつかせている。この混乱は現在も収まっていない。

簡単にまとめると、更迭されたフェドロウ前国防相は、自国に有利な形で戦況を好転させた功績を広く認められている。同相は無人機(ドローン)の大量配備を指揮し、ロシアの夏季攻勢を阻止し、同国の補給線や製油所を壊滅させたほか、首都モスクワを爆撃し、同国が実効支配するウクライナ南部クリミア半島を孤立させるなど、数々の成果を上げた。

世間一般の見方では、フェドロウ前国防相の戦場での功績と、軍内部の旧体制派を標的とした容赦ない腐敗撲滅運動が結び付けられている。そのため、抗議デモのプラカードやインターネット上のコメント欄では、ウクライナのオレクサンドル・シルスキー軍総司令官(60)が、ひそかにフェドロウ前国防相の更迭を要求した悪役として描かれているのも不思議ではない。その結果、抗議の声は高まり、ゼレンスキー大統領は21日、シルスキー総司令官をも解任するに至った。

ウクライナ軍はこれまで、数々の惨事や暗部を抱えてきた。多大な犠牲を伴ったが失敗に終わった2023年の攻勢や、ロシア軍による都市や州の陥落、調達を巡る汚職や横領、兵士に対する虐待や拷問の報告、約20万人に上る脱走兵といった問題だ。シルスキー前総司令官は、こうした負の側面の原因とされる、軍が受け継いだ旧ソビエト時代の悪習と結び付けられていた。こうした旧体制の悪習は、ロシア軍でも同様に悩みの種となっていることから、ウクライナ国民は「小さなソビエト軍は決して大きなソビエト軍には勝てない」という悲観的な批判を繰り広げている。シルスキー前総司令官を巡っては、自分に逆らう兵士や将校に対し、命に関わるほどの報復を執拗(しつよう)に繰り返しているとの話も浮上していた。

シルスキー前総司令官はロシア系で、親族は皆ロシアに住んでいる。同総司令官はロシアで初期の軍事訓練を受けたが、さまざまな役職を経て、2019年以降はウクライナ軍の頂点に立ってきた。ウクライナ国民が、解消不可能な問題の蓄積を同総司令官のせいにし、あらゆる陰謀論が飛び交うのも無理はない。シルスキー前総司令官は勝利ではなく、消耗戦による膠着(こうちゃく)状態を望んでいる、ゼレンスキー大統領が権力を維持し選挙を回避するために紛争を長期化させるべく同総司令官を支持している、2人は共謀して身を守り、過去の汚職を隠蔽しようとしている、そして最終的には、ウクライナが旧ソビエト連邦から独立して以来苦闘してきた新興財閥オリガルヒ体制の最後のとりでを守ろうとしている、といった具合だ。

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翻訳・編集=安藤清香

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