リーダーは、組織の課題を特定するために、レポートの分析、業績評価指標(メトリクス)の検証、会議への出席に多大な時間を費やしがちだ。これらのツールに価値があることは間違いないが、組織にとって最も重要な情報のなかには、ダッシュボード上に決して現れないものもある。
ファシリティ運営と高等教育の分野でキャリアを積むなかで、私は、現場の従業員こそが、新たに発生しつつある問題や非効率、改善の機会を誰よりも早く察知することが多いと学んだ。彼らはプロセスの成否をリアルタイムで目にしている。問題が管理職のデスクに届くはるか前に、彼らは顧客、機器、システム、そして同僚と接しているのだ。
それにもかかわらず、多くの組織は意図せずして、経営陣と最も現場に精通した人々との間に最大の距離を生み出す意思決定プロセスを作り上げてしまっている。
そうなるとリーダーは、技術的には正しいものの、関係する人的要因を見落としたために失敗する意思決定を下すリスクを負うことになる。
データは「起きたこと」を説明し、人は「なぜ起きたか」を説明する
指標は重要である。リーダーが傾向を把握し、業績を測定し、リソースを配分する助けになる。
しかし、数字が物語のすべてを語ることはほとんどない。レポートは、残業コストの増加や離職率の上昇、生産性の低下を明らかにするかもしれない。だが、それらのトレンドがなぜ起きているのかを説明してくれないことが多い。
通常、現場の従業員はその理由を知っている。彼らはプロセスのどこで不満が生じているかを理解している。どの手順が無駄な業務を生み出しているかを知っている。機器の不具合が発生する前に問題を特定できる。また、従業員意識調査や退職インタビューに現れる数カ月前に、モチベーションの低下を察知することも多い。
私がともに働いてきた最も有能なリーダーたちは、従業員を単なる労働者としてではなく、業務上の「インテリジェンス(情報)源」として捉えていた。
感情は、多くのリーダーが思う以上に重要である
これは、ハイパフォーマンスなチームと凡庸なチームを分かつ大きな要因となることが多い。一部のリーダーは、客観性が損なわれることを恐れ、意思決定の際に従業員の感情を考慮することをためらう。
しかし、私はその逆が真実であると気づいた。従業員の感情を無視したからといって、その影響が消えるわけではない。リーダーがそれを理解できなくなるだけだ。
組織におけるすべての意思決定は、何らかの反応を引き起こす。従業員は、自身の経験、懸念、期待というレンズを通じて変化を解釈する。会議室では単純に見える決定が、現場では意図しない結果を生むことがある。
これは、リーダーが困難な意思決定を避けるべきだという意味ではない。予算の制約、業務上の必要性、あるいは戦略的優先事項から、従業員が当初は支持しない変化が必要になることもある。
しかし、従業員の感情を理解していれば、リーダーは課題を予測し、より効果的にコミュニケーションを取り、よりスムーズに変更を実行できる。人々は、自分たちの視点が真摯に考慮されたと感じられれば、受け入れがたい決定であっても支持する可能性がはるかに高くなる。
最大の資産は、往々にして最も経験豊富な従業員である
ファシリティ管理の現場では、20年や30年の社歴を持つ従業員が、他の誰も気づかないうちから潜在的な問題を特定する場面に何度も遭遇してきた。彼らは建物の歴史を知っている。過去の対策がなぜ成功し、あるいは失敗したのかを理解している。どこにも文書化されていない業務上のリスクを特定できるのだ。
組織は、このような知識を数値化するのが難しいために、その価値を過小評価することがある。それは間違いである。
優れたリーダーは、専門知識が組織のあらゆる階層に存在することを認識している。肩書は報告系統を定義するかもしれないが、誰が価値ある洞察を持っているかを決めるものではない。
私がこれまでに実行してきた優れたアイデアのいくつかは、マネジメント層ではない一般の従業員から生まれたものだ。彼らの唯一の資格は、その業務を理解していることだった。
「耳を傾ける」ことは「同意する」ことではない
よくある誤解の一つは、従業員からのフィードバックがすべての決定を左右すべきだというものだ。リーダーシップは、そのようには機能しない。リーダーは、予算、戦略、コンプライアンス要件、そして組織の優先事項のバランスを取らなければならない。従業員の懸念を押し切ってでも、意思決定を前に進めなければならない時もある。
重要な違いは、従業員の意見が「聞かれたか」どうかである。
プロセスが公平であり、自分たちの意見が尊重されたと感じられれば、同意できない結果であっても受け入れることができる。従業員にとって本当に苦痛なのは、「無視されている」と感じることなのだ。
リーダーが積極的に耳を傾け、質問を投げかけ、自身の論理を説明すれば、たとえ最終的な決定が支持されないものであっても、信頼関係は深まる。
意思決定プロセスにフィードバックを組み込む
私の経験では、最も強い組織は、問題が危機になるまで従業員の意見を求めることを待たない。定期的にフィードバックを促す仕組みを構築している。
これは、職場を歩き回る、インフォーマルな対話をする、チームミーティングを開く、あるいは従業員に「どのような障害があなたの仕事を妨げているか」を尋ねる、といったシンプルな方法でも可能だ。目的は不満を集めることではない。情報を集めることである。
あらゆる組織は、従業員のなかに膨大な知識の蓄積を有している。課題は、リーダー層がそれにアクセスする意思を持っているかどうかである。
リーダーシップは「聞くこと」から始まる
リーダーシップに関する議論の多くは、ビジョン、戦略、意思決定に焦点を当てる。いずれも重要である。しかし、リーダーが十分な情報に基づいた意思決定を行うには、その前に組織内で何が起きているのかを理解しなければならない。
業務に最も近い立場にいる人々は、多くの場合、他の誰よりも早くその理解に到達している。私の経験では、最良の業務改善、コスト削減の機会、組織文化を育てる取り組みのいくつかは、現場の従業員との何気ない会話から始まった。
従業員がすべての答えを持っているとは限らない。だが、あなたが耳を傾ける意思を持つなら、彼らは問題がどこにあるのかを的確に教えてくれることが多い。
それこそが、従業員があらゆるリーダーにとって最も価値ある資産の一つである理由なのだ。



