北米

2026.07.25 09:00

UCバークレーから清華大へ ノーベル賞科学者の中国移籍が象徴する米「頭脳流出」の背景

米カリフォルニア大学バークレー校から中国の清華大学に移籍したオマー・ヤギー教授=ゲッティ

米カリフォルニア大学バークレー校から中国の清華大学に移籍したオマー・ヤギー教授=ゲッティ

米国で最も名高い科学者のひとりが全米屈指の公立大学を離れ、中国に移ることになった。

金属有機構造体(MOF)の先駆的研究で2025年にノーベル化学賞を共同受賞したカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)の化学者、オマー・ヤギー教授は、北京にある清華大学の常勤教授に就任することを受諾した。清華大学では、人工知能(AI)を活用して新材料の発見を加速する新たな研究所の設立を支援する予定だ。

ヤギーほどの研究者の移籍は、どんな場合であれ注目を集めたに違いない。けれど今回は、中国が科学人材の育成や獲得に巨額の資金を投じる一方、米国が中国の研究機関との研究協力に新たな制限を設けているなかでの出来事だった。これらの動きは全体として、科学分野の主導権をめぐる世界的な競争が激しくなっている現状を映し出している。

研究者を引き寄せる中国

ヤギーはヨルダンでパレスチナ難民の家庭に生まれ、10代で米国へ移住した。アリゾナ州立大学、ミシガン大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、そしてUCバークレーと米国内の著名大学でポストを得て、研究者として卓越したキャリアを築いてきた。ガスを吸着・貯蔵できるスポンジ状の材料である金属有機構造体に関する先駆的な研究を行い、クリーンエネルギーや大気中からの水回収(ウォーター・ハーベスティング)などの技術進歩に道を開いた。

新たな赴任先となる清華大学では、ヤギーはエネルギーや先端製造業、その他の重要技術など戦略的に重要な領域で、AIを活用して新材料の発見を加速する研究を主導することになる。

ヤギーの引き抜きの裏には、研究大学の強化と世界トップクラスの科学者の招聘という中国の長期的な戦略がある。中国はかつては優秀な研究者を外国に送り出す側の国として知られていたが、現在は国際的に高い評価を受ける研究者を自国の大学に引き入れるべく、積極的な競争を展開している。清華大学のような中国の大学は、研究成果、資金力、世界的な野心といった面で、いまでは米国の多くの名門大学に肩を並べる存在になっている。

制約が強まる米国の研究環境

ヤギーの中国移籍のタイミングがとりわけ注目されるのは、それが米国の科学政策の大きな転換と重なっているからだ。

次ページ > 米科学者の4人に3人が国外への拠点移動を検討している

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事