新規事業

2026.07.24 11:45

成長率926%! 厄介ものだった焼酎粕を“宝の山”に変えた「いいちこ」の出島組織

研究所の前にて。渡邉さん(右)と新谷さん(写真=三和酒類)

主力商品は、失敗と偶然から生まれた

━━そして2001年に食品の新会社を立ち上げて、本格的に別部隊をつくる。この時点で、いまの主力商品であるGABA(ギャバ)には目をつけていたんですか。

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渡邉:いや、GABAは研究の過程で生まれたもので、2001年の段階では「これで商売しよう」というものではなかったんです。開発は2004〜5年ごろ。しかも、もともとは偶然見つかったものなんですよ。

━━偶然なんですか?

新谷:そうなんですよ。もともとは焼肉のタレやドレッシングをつくっていた流れで、旨味を高める調味料の研究をしていたんです。旨味成分はグルタミン酸ですよね。ところがその研究の中で、あまり見慣れない菌が見つかった。

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━━当初の目的とは違うものが。

新谷:そう。でも研究員が「念のために取っておこう」と、その菌を捨てなかったんです。後になって調べてみると、「これ、もしかしたらGABAができてるんじゃないか」と。

新谷:ちょうどそのころ、調味料事業のほうは工場を建てようとした段階でいろいろ問題があって、進められなくなっていました。そのときに研究員が「GABA、つくれますけど、どうしますか」と聞いてきた。それで「やろうか」と。

━━積極的に「GABAをつくろう」と言ったのではなく、どちらかというと消極的に「GABAもできるけど、どうしますか?」と言って始まったところが面白いですね。

新谷:そうですね。本命の研究がダメだったときに、他の研究に切り替えられるのは、それまでトライアンドエラーを繰り返すなかで身についた、研究のセンスのようなものがあるのかもしれません。

渡邉:ただGABAに関しては、市場がすでに立ち上がりつつあったのも大きい。我々が参入した2006年には、GABA入りのチョコレートも出ていて、機能性素材として注目され始めていた。参入しやすいタイミングではありました。

━━そこから事業として一気に伸びるきっかけは何だったんですか。

渡邉:2015年の機能性表示食品制度です。それまでのトクホ(特定保健用食品)は、開発に莫大なコストと時間がかかって、市場がなかなか伸びなかった。それが規制緩和で、国の「許可制」から企業の責任による「届出制」に変わった。開発のハードルが一気に下がって、機能性を謳った食品が爆発的に増えたんです。いまでは保健機能食品の中で一番大きな市場になっています。

━━健康系の食品をつくる会社が増えて、そこに三和酒類のGABAが素材として入っていった。いまでは多くの会社が原料などに三和酒類のGABAを使っているというわけですね。でも渡邉さん、GABAを見つけてから制度が追いつくまで、10年かかってますよね。

渡邉:10年ですね。

━━普通、すぐに結果が出ない研究って、途中でやめてしまうことが多いと思うんです。なぜ続けられたんでしょうか。

渡邉:いろんな意見があるでしょうけど、基本的に、焼酎粕は出続けますからね。しかも海洋投入はできない。そして研究員にとってはそれが宝の山だとわかっている。だから可能性を信じてやり続けるしかなかった。この山からは、まだ何か出るかもしれませんからね。いまも研究は続いています。粘り強い性質はあるんでしょうね。

総務畑の男が『これはいける』と確信した理由(筆者撮影)
三和酒類の出島組織「拝田グリーンバイオ事業所」の外観(筆者撮影)
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