4. 成長するには、肯定や安心だけでは足りない
AIユーザーの多くが気づいているように、AIには、使う人を安心させたり、考えを肯定したりする傾向がある。それはそれで大事かもしれない。しかし、プロフェッショナルであれ、個人であれ、安心感を得るだけでは成長できない、と言って差し支えないだろう。
優れたメンターやコーチ、リーダーは、相手を尊重した上で課題を提示し、励まして背中を押す。
彼らは、盲点に気づくよう、前提を問い直すように力を貸す。はじめは、相手が居心地の悪さを感じるような考え方を提示するかもしれないが、最終的には、より明晰でより優れ、より確かな決断や行動へと導いていく。
ここで必要とされる「物事を見抜く力」とは、どのタイミングで寄り添い、どのタイミングで異議を唱えればいいかを把握することだ。そして、相手が耳を傾けたり、学んだりできるような形で課題を提示することでもある。
現代のAIシステムにはまだ、そうしたバランスを一貫して保つことができない。
5. 真の判断は、「AI生成」できない
AIは、文体をまねることが驚くほどうまく、語彙や文章、構成、さらには文体の好みですら再現できるようになった。とはいえ、本物のリーダーシップは、単なる文体や話し方だけで成り立つものではない。
本物のリーダーシップには、長年にわたって積み重ねてきた経験や価値、成功、失敗、困難な対話、倫理的な選択、教訓がにじみ出てくる。
そうした経験が、判断力を形作っている。
そして、その判断力こそが結局のところ、どの忠告に従うべきか、どういうストーリーを語るべきか、どんな対話を始めるべきか、他者に委ねるべきでない決断は何かを決めるのだ。
AIは、リーダーが自分の思考をより効果的に表現できるよう、力を貸してくれる。しかし、その思考を生み出したもともとの実体験や判断力に取って代わることはできない。
人間の強みは、いっそう価値が増している
AIを巡る議論で焦点になるのは大抵、「テクノロジーに取って代わられるのは何か」だ。しかしそれよりも、「テクノロジーは何を高めてくれるのか」を問う方がいい。
AIが担う分析や、定型的な認知作業が増えるなかで、人間ならではの能力は、価値が薄れるどころか、重要さを増している。例えば、物事を見抜く力や判断力、エモーショナル・インテリジェンス(感情知能)、相手を尊重しつつ励ますコミュニケーション、信頼の構築、倫理的な意思決定といったものだ。
AIによる職場改革が進んでいるが、本物のリーダーシップは、以前にも増して不可欠になっている。物事を見抜く力は、本物のリーダーシップを発揮するために欠かせない能力の一つだと私は考えている。
リーダーシップの未来は、AIと競争することではない。重要なのは、テクノロジーが大きな価値を生むのはどこか、人間が引き続き判断すべき領域はどこかを見極めることだ。
AIが驚くほど洗練された答えを出せるようになっても、リーダーとプロフェッショナルには依然としてやるべきことがある。最も重要性が高いのはどの問いか、注目と行動に値する事柄は何か、自分を頼る人やチームにいちばん役立つ決断は何かを見極める必要があるのだ。


