1. パターンを認識するのがAI、意義を認識するのがリーダー
生成AIが得意とするのは、関係性を明らかにしたり、大量の情報を要約したり、妥当なアイデアを推奨したりすることだ。しかし、AIは多くの場合、最も目を向けるべき情報を見極めて選び出すことはできない。
エグゼクティブやリーダーを相手にする経験豊富なビジネスコーチなら知っているように、物事を一変させるきっかけが、誰の目にも明らかな事実から浮かび上がってくることなどめったにない。そうしたきっかけはむしろ、何気ない発言や、矛盾する事柄、ふと生じた迷い、言葉だけでは言い表せない深い次元の何かを浮き彫りにする感情的な反応から生まれるものだ。
より深く検討すべきものを見極める力は、パターンの認識ではない。物事を見抜く力なのだ。
その2つの違いは、キャリアやリーダーシップ、ビジネスに関して重要な決断を下すプロフェッショナルの成果を根本から変える要因になるかもしれない。
2. AIは問いに答えられるが、常に正しい問いを立てられるわけではない
プロフェッショナルの多くは今、キャリアの方向性に迷ったり、リーダーとして悩んだり、対立を解消したり、人生の大きな決断に迫られたりした時にAIを頼る。するとたいていは、考え抜かれた答えが提示される。
しかし、意味のある進展は、答えが得られる前に起こることが多く、それは、慎重に選び抜いた問いを通じて浮かび上がってくる。
経験豊富なコーチやアドバイザー、リーダーは、周りの言うことにただ反応するようなことはしない。前提を探り、矛盾に目を向け、限定的な考えを疑い、不完全あるいは不確かと思われる結論を吟味する。
時には、取り組んでいる問題がそもそも間違いだったと気づくよう助けることで、相手がこれ以上ないくらいの価値を得られることもある。
確かにAIは、本質を突く問いを生成することもできる。しかし、人間同士の対話において最も重要な問いはいまだに、人間にしか見極めることができない。
3. 文脈がすべてを変える
コミュニケーションで大事なのは言葉だけ、ということはめったにない。メールや難しい対話、勤務評価、交渉といったコミュニケーションは、信頼や、組織内の人間関係、これまでの関係性、タイミング、力関係、感情的な文脈によって形づくられている。
コミュニケーションを構成するそうした要因次第では、ほぼ同じ言葉で書かれた2つのメッセージから、まったく異なる結果が導き出されることもある。
生成AIが作成するコミュニケーションは、文法が正確で、論理も整っている。それでも、経験豊富なリーダーは、何かが欠けていることに気づく。それは、文章が拙いからではない。人と人とのあいだの奥底に存在する力学が、十分に理解されていない、あるいは考慮されていないからだ。
コミュニケーションを首尾よく成り立たせるためには、人間や人間関係の微妙なニュアンスを理解することが不可欠だ。非の打ち所がない文章を書けばいいというものではない。


