教育

2026.08.01 13:30

大手企業就職率も上昇。淀商業高校・秋月麻衣教諭が教えるアントレプレナーシップ教育

秋月麻衣|大阪府立淀商業高等学校 首席教諭

秋月麻衣|大阪府立淀商業高等学校 首席教諭

地元の風物詩となった、大阪府立淀商業高校の「淀翔モール」。リアル版「アントレプレナーシップ教育」の舞台裏とは。


大阪府立淀商業高校では毎年12月の第2土曜、年に1日だけのショッピングモールが開かれる。名づけて「淀翔モール」。生徒たちが自ら企画・仕入れたパンやドーナツ、日用品、福祉関連商品など20社以上ものブースが並び、販売係の生徒たちの元気な声が飛び交う。消防署や行政の防災イベントや、地域ボランティア、障がい者支援施設のブースも併設され、1日で約1500人が来訪。地元では年の瀬の風物詩になった。「地域の方々に親しんでいただいています。卒業生や、異動した先生方も集まってきますので、ちょっとした同窓会です」。2014年の立ち上げからかかわる同校教諭の秋月麻衣は、頬を緩めそう語る。

同校では2、3年生を対象に、独自の授業「アントレプレナーチャレンジ」を展開する。「淀翔モール」はその集大成、大規模販売実習として位置付けている。生徒たちはクラス内で3グループに分かれ、会社を設立。市場調査からビジネスプランの検討、社長・総務・経理・仕入れ・販売・企画活動を生徒たちがすべて行い、実践力を高めていく。「簿記や情報処理、マーケティングなど机上ではない『実践』、わたしは『実戦』と呼んでいますが、その経験を積ませたい」。秋月はその思いで走ってきた、と語る。「Perspective(見通す力)」「Partnership(強い協調性)」「Presentation(プレゼンテーション力)」──「3つのP」を2年間で身につけ、最後の株主総会では、当初計画とのギャップを分析し、利益目標実現の可否・原因に着目する。

24年2月、秋月らはAKINDO SPARKLEという株式会社を設立した。住吉商業高校、工芸高校、東淀工業高校と連携し、「課題研究」のオンライン授業を通じ、デザイン、プロダクト、マーケット、各校それぞれの長所を生かし、社会に貢献する新商品を創出する。主力商品は、5年間の長期保存が可能な「備蓄パン」。北海道の社会福祉法人が製造している商品をより広めることができないか。それを箱に詰め「のし」をつけ、自分たちでラベルデザインできるよう改良案を出した。営業や販売、のしのデザインを生徒が担う。記念品用として使えるほか、学校に売り、入学時に「卒業後の自分」へのメッセージを書き校内で保存し、卒業時に「卒業記念品」として配る、というアイデアも出された。「これが人気! いろんな学校で広がれば。災害時、自分のパンが学校にある。しかもめっちゃおいしい!」。のしのラベル巻き作業は、近くの就労継続支援B型事業所が担う。「1枚10円でお仕事を頼んでいます。めちゃくちゃ喜んでくれはった」。働く喜び、社会とかかわるうれしさが、ここでも花開いた。

「アントレプレナーシップの良い点は、自分が役に立ち、輝ける場所をつくれること。意欲とやる気が最も光ること」。自身も商業高出身で、高校時代に数々のコンテストに出場し積極性を培ってきた秋月だからこそ、胸を張って言える。同校は大手企業への就職実績も上昇中。試行錯誤や失敗を重ねた経験こそが、ひるまず社会に立ち向かっていく力へと昇華する。

文=加賀直樹 写真=若原瑞昌

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