起業家

2026.07.31 13:30

北海道の小さな町で小中学生が起業家を体験するアントレ教育と徹底して遊ぶ効果

渡邊雄大|中富良野町立なかふらの学園/一般社団法人GENEBOX代表

渡邊雄大|中富良野町立なかふらの学園/一般社団法人GENEBOX代表

北海道の小さな町で実践するユニークな「アントレ教育」。牽引する教諭・渡邊雄大が子どもたちがアイデアを「生み出し」「実行する」ために大事にしていることとは何か。


旭川空港から車で約1時間、北海道のほぼ中央に位置する中富良野町は、人口約4300人の小さな町だ。この町に新たに2026年度開校したのが、9年制の義務教育学校、中富良野町立なかふらの学園。この学校では総合の時間を利用して、公立小学校としてはユニークなアントレプレナーシップ教育、「コトづくり探究」を行う。

毎年校庭で廃棄されるラベンダーを利用して何かできないか? 小学3年生は、それをドライフラワーにして旭川空港で観光客に手渡しし、手書きのメッセージを添えて中富良野町をPRするプロジェクトを実行した。4 年生は、札幌市の人気ボードゲームメーカーClaGla社に協力をあおぎ、町の魅力をすごろくにするプロジェクトを考案。「ラベンダーを20本ゲットしたら上がり」という、ゴールのないゲームのようなすごろくづくりに挑戦した。

途中でストーリーの必要性、ルールを書く難しさなど、思わぬ壁に突き当たりながらも試行錯誤して完成させ、町の温泉施設に置かせてもらった。6年生は文具店から創業したオフィスづくりの会社、オカモトヤと協力し、中富良野町オリジナルのインクづくりに挑戦。色のコンセプトや原価計算、パッケージデザインなども手がけ、完成したインクの販売会も実施。70本を完売した。

総合学習の専任教師としてカリキュラム全体をマネジメント、リードする渡邊雄大は、北海道上川管内で20年以上にわたり教員として勤務、教育行政を経て、21年になかふらの学園の前身となる中富良野町立中富良野小学校に赴任した。

ゼロからつくるそれぞれの単元では、渡邊が初見の企業に直接問い合わせ、協力をあおぐ。「突撃ですが、事前にリサーチは入念に行い、協力してくれそうな企業か、相手にもメリットがあるかを考えてコミュニケーションをとります」。また、小学生の子どもたちをやる気にさせるための秘訣は、最初に「徹底して遊ぶ」ことだという。「ボードゲームでも、インクでも最初に十分な時間を使って遊ぶことで、子どもたちは『少し詳しくなったかも』『できるかも』と思い始める。この『できるかも』感は重要だと思っています」

総合学習で育てたいのは「かかわる」「集める」「生み出す」「実行する」「続ける」の5つの力だ。なかでも自身でアイデアをもち、「生み出し」「実行する」ことは簡単ではない、と渡邊は語る。思い通りの結果にならないこともある。プロの人たちに単発ではなく、継続的に参画してもらい、意見を聞きながら試行錯誤し、フィードバックをもらうサイクルを重視している。

自ら立ち上げた一般社団法人では、レモネードスタンドや地域イベントの出店など子どもたち主体の企画の後押し、折り紙天才少年の展示会など、個人の「やりたい」を支援する活動、自らが開発した教材の他地域や学校への横展開も行う。

「『アントレプレナーシップ教育』と聞くとお金やビジネスのことがまず思い浮かぶが、それだけに注目するとアントレ教育の楽しさが半減してしまう。本質は『自分のアイデアで社会とつながっていく』ということ。それを大切にしたいと思っています」

文=岩坪文子 写真=若原瑞昌

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