教育

2026.07.30 13:30

神山まるごと高専が挑むAI時代の教育革新と齋藤亮次が語る理想の未来

齋藤亮次|神山まるごと高専カリキュラムディレクター

齋藤亮次|神山まるごと高専カリキュラムディレクター

約20年ぶりの新設高専として話題の神山まるごと高専。最先端高専として今、取り組んでいるのが「AI時代の学び」の設計だ。


徳島県神山町に2023年に設立された神山まるごと高専。Sansanを立ち上げた起業家・寺田親弘が創立し、「15歳から、テクノロジーとデザイン、起業家精神を一度に学ぶ」最先端の高専として注目を集めてきた。創設4年目を迎えた同校では、学生像として「モノをつくる力で、コトを起こす人」を掲げている。

「AIの急速な進化により、私たちのカリキュラムの中核であるテクノロジー、デザインがAIに部分的に代替されるかもしれない。モノをつくることのハードルも下がり高速化している。であれば、何が求められるようになるか」。26年4月から同校カリキュラムディレクターに就任した齋藤亮次は今、新たな挑戦を始めている。同校では5月、教職員(以下、スタッフ)が集う合宿が急きょ開かれ、「AI時代における教育カリキュラム」のあり方が議論された。

齋藤は「モノをつくる力が民主化されるなかで、『どんなコトを起こすのか』。その『野心』の部分が重要になる。それこそ私たちがアントレプレナーシップの一丁目一番地として掲げている『理想の未来を定める』につながることだ。だからこそ、理想の未来との差分としての課題を定義すること、つまり、自分が解きたい問いや解くべき問いに出合える機会をつくれるか、が大きなポイントになる」と話す。

それは、これまで齋藤が教員として大切にしてきたことと重なる。地理教員だったが、元は地理嫌い。「なんのために山の名前とか米の収穫量を知るのか、当時は理解できませんでした(苦笑)」。だが、国内外のフィールドワークを重ねるなかで「世界は面白い」という原体験を経て変わる。前任校では学生にそんな原体験を経験させたいと、ベトナムの山奥や南アフリカをはじめ、フィールドワークの機会を数多くつくってきた。原体験に加え、自分の行動への反響を通じて社会に対する自己効力感を高めていく必要があるのではないかと、地域や企業とのコラボレーションも数多く行った。企業に伴走してもらう探究プロジェクトやプロダクトを社会に届けたりしながら、探究学習やキャリア教育のカリキュラム改革を行ってきた。そして「本当の意味で『社会を変えていく教育』には、より遠くの人にもソリューションを届けられるテクノロジーとモノをつくることが必要なのではないか」と、25年4月に同校に赴任。同校のディプロマポリシー(卒業認定方針)策定に取り組み、今、カリキュラム改訂に試行錯誤しながら挑んでいる。前例にとらわれず、リソースを限定しないという同校のスタイルとスピード感に驚きながら、齋藤自身も「理想の未来」を探究している。

「未完成の状態で回し続けているスタッフの姿を見せることも大切。学校のビジョンである、未完成のβ版を次々とつくりだし、あらゆる角度から検証し、想像以上に良くしていくコトを意味する「β Mentality」にも通じている。私たちの使命は『人間の未来を変える教育』をデザインすること。そのエッセンスを広く届けることで日本の教育全体にインパクトをもたらしたい」

文=山本智之 写真=井上陽子

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