欧州では記録的な熱波が続いている。しかしニュースで伝えられる最高気温の数字だけを見ても、その暑さが現地の暮らしや交通、宿泊環境にどのような影響を与えているのかまではなかなか想像しにくい。
海外在住日本人による現地支援サービス『ロコタビ』を運営する株式会社ロコタビは、フランス、ドイツ、英国、イタリア、スペインに住む日本人81人を対象に「記録的熱波下の現地状況と、海外出張者が渡航前に確認すべきポイントに関する調査」を実施した。その結果、回答者の約8割が「例年より暑い」と感じており、ホテルに冷房があっても十分に効かない、地下鉄や列車が暑さで止まる、観光施設の営業時間が短縮されるといった、日本では想定しにくい事態も起きていることが明らかになった。
【調査概要】
調査名:記録的熱波下の現地状況と、海外出張者が渡航前に確認すべきポイントに関する調査
調査方法:ロコタビ登録者へのWebアンケート
調査期間:2026年7月9日~7月14日
配信対象:フランス、ドイツ、英国、イタリア、スペイン在住のロコタビ登録者1万44人
有効回答数:81人(フランス25人、ドイツ20人、イタリア18人、英国11人、スペイン7人)
※本調査は任意回答によるもので、各国の在住者全体を代表するものではない。
西欧は観測史上最も暑い6月に
世界気象機関(WMO)が紹介したCopernicus Climate Change Serviceの月次データによると、2026年6月は西欧で観測史上最も暑い6月となった。西欧の平均気温は20.74℃で、1991~2020年の6月平均を3.05℃上回った。WHO欧州地域事務局は、フランスの一部都市で救急医療への電話が最大50%増加したことや、ロンドンで生命に関わる救急要請が過去最多となった日があったことを公表している。
ただしこうした大きな数字と、実際の出張中の行動を結びつけるのは簡単ではない。「予約したホテルの冷房は動くのか」「訪問先の会議室で商談できる状態か」「地下鉄で移動できるのか」といった情報は、現地に暮らす人の声を聞かなければわからないからだ。

欧州熱波で海外出張者はどう動くべきか(プレスリリースより)
◾️フランス:熱波が停電や交通機関にも影響
フランスでは、冷房の普及率の低さだけでなく、停電や交通機関の故障、施設の営業時間短縮など、都市機能に関わる影響も報告されている。パリ在住者からは、次のような声が寄せられた。「40℃を超えた熱波の最後の日、我が家は35時間停電した」「パリ市内および郊外で広範な停電が起こった」「メトロや地方行き電車、新幹線の故障で本数が減り、エレベーターの故障リスクも高まる」「熱波時にルーブル美術館が16時に閉館した日があり、他の観光施設や店舗でも営業時間が短縮される場合がある」。
暑さの影響は、屋外だけではない。冷房環境については、複数の回答者が「ポータブルエアコンをつけても、室内はようやく29℃」と答えている。フランスは、今回の調査で自宅にエアコンがない人の比率が最も高いグループのひとつだった。据え付け型のエアコンではなく、排気ダクトの付いた後付けのポータブルエアコンで暑さをしのいでいる家庭も目立つという。

パリの住宅で使用されているポータブルエアコン。排気ダクトが付いた後付け型の機器で暑さをしのいでいる/写真:ロコタビ登録ロコ提供
また、公共交通機関でも「冷房があるから安心」とは限らないようだ。パリのバスについては「エアコンがあっても、運転手や車両によっては稼働していないことが多く、車内が40℃を超えることがある」との証言があった。日本では、真夏のバスや鉄道に冷房が入っていることを前提に移動計画を立てることが多い。しかし、パリでは「冷房設備があるか」だけでなく、「その日に実際に動いているか」まで考える必要があるようだ。
日没後も暑さは続く
フランスの暑さで注意したいのは、気温が上がる時間帯だ。パリ在住者は次のように話している。「パリは日没が22時頃と遅く、16時前後が最も暑い時間帯。夕方以降も気温は下がりにくい」。日本では、夕方になれば少しは暑さがやわらぐと考えがちだが、日照時間の長いパリでは、夕方から夜にかけても暑さが残る。フランス南東部のコロンジュ=スー=サレーヴ在住者からは、車内温度についての注意も寄せられた。「日向に置いた車内は45℃になる。レンタカー利用時は特に注意」。レンタカーで移動する場合は、駐車場所や車に戻る時間も含めて計画する必要があるようだ。
日本の暑さ対策用品を持参
暑さ対策用品については、日本から持参した方がよいという声が複数あった。パリ在住者は「保冷剤はフランスには売っていない。日本から多めに持参し、凍らせてタオルに包み首の下に置くと良い」と話す。また、ニース在住者からは、「使い捨ての冷却タオルは日本ならではの暑さ対策グッズ。少しの間でも心地よく過ごせる」との声も寄せられた。日本ではコンビニやドラッグストアで簡単に手に入る保冷剤や冷却タオルも、現地では同じように購入できるとは限らない。必要なものは、日本を出発する前に準備しておく方がよさそうだ。

シャンゼリゼ通りのカフェテラスに設置されたミスト装置/写真:ロコタビ登録ロコ提供
フランス出張を予定する人に対し、現地在住者は次のようにアドバイスしている。「暑さと太陽の強い光で体力を奪われるため、日程は余裕を持ったスケジュールをおすすめします。日本人はサングラスをしていない人が多い傾向ですが、こちらでは必須アイテムです」。

南仏マントンのビーチ。強烈な日差しへの対策として、日焼け止めやサングラスが欠かせない/写真:ロコタビ登録ロコ提供



