経営・戦略

2026.07.22 15:36

「安さ」で選ばれる市場で、プレミアム製品を売り抜く戦略

stock.adobe.com

stock.adobe.com

「競合の見積もりに合わaせてくれれば、発注する」——この言葉を、私は数えきれないほど耳にしてきた。アクセス制御およびセキュリティの分野では、スペック上は似通った製品が市場にあふれている。そのため、買い手は自分が理解できる唯一のレバー、つまり価格に手を伸ばす。この勝負では、プレミアム製品は利益率以上のものを失いかねない。

創業初期、当社も価格対抗を試みたことがある。より安価な競合を相手に大型案件を獲得するため、大幅な値引きを提示し、「これは足がかりだ」と自分たちに言い聞かせた。しかし顧客が当社製品を評価することはなかった。なぜなら、私たち自身が「箱に書かれた価格ほどの価値もない」と教え込んでしまったからだ。結局、顧客は追加発注のたびに値引きを求めるようになり、1年もたたないうちに離れていった。

プレミアム製品を売る際、創業者や営業責任者が、勝てない単一の指標で競争するのをやめるためにできることは次の通りだ。

価格論争に勝とうとするのをやめる

消費者にとって比較軸が価格だけであれば、常に最安値が勝つ。したがってプレミアム製品を扱う売り手が犯す最大の過ちは、そもそも価格を巡って議論しようとすることだ。値引きの計算は、多くのチームが認識している以上に過酷である。マッキンゼーの調査によれば、S&P500の典型的な企業において、価格を1%改善すると利益に6%のインパクトを与えるという。これを逆から考えてみよう。価格で譲歩する1ポイントごとに、値引き額以上の利益が消えていく。案件獲得のための10%の値引きは、その案件を獲得する意義そのものを消し去ってしまうのだ。

プレミアムブランドとしての仕事は、価格を守ることではない。買い手が比較している対象を変えることだ。会話を「製品にいくらかかるか」から「問題にいくらかかるか」へと移すのである。たとえばアクセス制御およびセキュリティの買い手は、ロックの故障でテナントが締め出された、拡張性のないアクセスシステム、5年で二度も交換するはめになった安価なハードウェアといった問題に直面している可能性がある。買い手が、あなたの価格をその問題を放置するコストと比較するようになれば、それは価値についての議論となり、あなたが勝てる議論となる。

心地よいと感じる基準を超えて厳しく選別する

プレミアム販売において最も難しい規律は、すべての買い手が自社の顧客ではないと受け入れることである。しかしそれは、無駄な提案書に何時間も費やすよりずっとましだ。価格重視の買い手をプレミアム製品で追いかけるのは、二重に負ける道である。まず値引きで獲得し、次に相手を満足させることのなかった数字を関係を通じて延々と弁明し続けることになる。

DORIXでは現在、見積もりを出す前に価値の観点から見極め(クオリファイ)を行っている。買い手の最初の質問が価格で、次の質問も価格、そしてその間に耐久性やデザイン、故障がもたらすコストへの関心がまったく見られなければ、私たちは一歩引く。この見極め方を始めてから2つの変化があった。獲得した案件は、次の予算サイクルを超えて生き残る理由で顧客が私たちを選んでいるため長続きするようになった。また、許容できる価格で成約する見込みのない案件を数えなくなったことで、営業パイプラインの精度が向上した。誤った案件から歩み去ることこそが、正しい案件のための余地をつくる方法である。

営業担当者に、値引きではなく価値を売る能力を身につけさせる

多くの営業担当が値引きをするのは、それが案件成立のために手元にある最も簡単なレバーだからだ。もう一つの選択肢——価値の物語を知識と自信をもって語ること——よりもはるかに速い。しかしそのレバーを取り上げれば、より優れたものを渡すことができる。営業には、買い手の問題から会話を始めるよう教えよう。製品がその価格である理由を説明する言葉、それを裏づける根拠、そして値引きする権限ではなく歩み去る権限を与えるのだ。

この転換は戦術ではなく、文化の問題だ。プレミアムの価値を信じるチームは、プレミアムを売る。信じていないチームは、毎回数字に手を伸ばす。

プレミアムカテゴリーで価格競争をするのは、廃業へと向かう最も緩やかな道である。最終的に維持できない案件を獲得し、維持できる案件を失う。そして値引きするたびに、自社の価格が本物ではなかったと市場に教えることになる。価格主導の市場で存続する会社を築くには、安さだけを求める買い手から歩み去る必要がある。営業のその時間は、より良いものを求める買い手に費やすべきだ。

次に誰かがより低い価格に合わせるよう求めてきたとき、自分が本当は何を値引きするよう求められているのかを考えてみるとよい。たいていの場合、それは製品ではない。その製品にどれだけの価値があるかという、自分自身の信念である。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事