経営・戦略

2026.07.22 13:24

メジャーレーベルはいかにしてインディーズのレコード市場シェアを侵食しているのか

Adobe Stock

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大手(メジャー)音楽レーベルは、拡大を続け魅力度が増す世界の音楽売上というパイから、より大きなシェアを獲得しようと飢えており、その標的となっているのがインディペンデント(インディーズ)音楽部門だ。

MIDiA Researchの2026年のレポートによると、インディーズは現在、世界の音楽ソフト市場で38%という驚異的なシェアを誇っており、2025年の世界売上高は9.4%増の395億ドル(約6兆4300億円)に達したと報じられている

メジャーレーベルの「消化不良」をさらに悪化させているのは、世界で最も人気のあるアーティストの多くが、シンプルなインディーズの配信契約を好む傾向にあることだ。それは、間違いなく美味しいピザのように余計な飾り付けがなく、回収不能な経費や所有権・管理権をめぐる問題などで高額な「請求書」を突きつけられ、後味の悪さを残すようなメジャーレーベルの複雑な契約とは無縁のものだ。

では、こうした契約はどのような仕組みになっているのだろうか。

契約条件は様々だが、典型的なインディーズの配信契約では、アーティストが会社に支払う手数料は売上の10〜30%程度である。これに対し、昔ながらのレコード契約では、会社側がアーティストの取り分の4〜5倍を回収することもある。従来の印税契約ではレーベルがプロモーションやマーケティングのサポートを提供するが、配信契約ではそれほど行われない。また、従来の契約ではレーベルが少なくとも数年間は音源の権利を所有することが多いが、インディーズ契約ではそうではない。

メガスターたちが、複雑なレーベル印税契約を避け、骨組みだけの配信契約を好むのも不思議ではない。

例えば、現在世界で最も偉大なアーティストのひとりであるバッド・バニーは、メジャーレーベルの強力なプロモーション体制を必要としていないようで、代わりにジ・オーチャード(The Orchard)を利用している。これはバッド・バニー自身のインディペンデント音楽会社であるリマス・エンターテインメント(Rimas Entertainment)の弁護士、ジョン・バルディビアによる情報だ。ジ・オーチャードはインディーズ配信の先駆者であり、ソニーに買収されたものの、今でもインディーズの風情を残している(これについては後述する)。

また、テイラー・スウィフトは、2025年5月時点で、最初のアルバム6枚のオリジナル音源を含む自身の全ディスコグラフィーの原盤権(マスター権利)を所有しており、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)傘下のリパブリック・レコードとの配信契約に基づいてリリースされたその後の全作品についても同様であると報じられている。したがって、このビリオネアのポップスターは、UMGとの契約の詳細は公表されていないものの、自身の音楽をどこで配信するかについて、完全とは言わないまでも、かなりの管理権を握っているとみられる。

もうひとつの例はドレイクだ。彼は5月に3枚のアルバムを同時に納品するという「前代未聞」の行動に出た。報道によると、この戦術によってユニバーサル ミュージック グループとの契約を満了し、独立して活動を継続できるようにすることを目的にしていたとされる。

このようにメガスターたちがメジャーから離れようと画策しているからといって、新人や中堅のアーティストが、自分たちの音楽をより多くの人々の耳や心に届けてくれる巨大な音楽会社を望んでいないわけではない。彼らは望んでいる。その点は変わっていない。

変化したのは、リマス、エンパイア(EMPIRE)、シークレットリー・グループ(Secretly Group)といった真に独立した企業が、メジャーレーベルとの契約に魅力を(あるいは必要性を)感じていないアーティストを惹きつけることで、メジャーと互角に渡り合っていることだ。ケンドリック・ラマーやアンダーソン・パークはエンパイアから作品をリリースしており、ミツキ(Mitski)やフィービー・ブリジャーズといった人気アーティストはシークレットリー・グループを通じて音楽をリリースしている。

「ビッグ3」の「インディーズ」レシピ

メジャー各社は、トレンディなインディーズ企業が提供するものに対抗し、それに見合うような選択肢(メニュー)をアーティストやその代理人に提示することに躍起になっている。彼らはインディーズ企業の買収(ソニーによるジ・オーチャードの買収など)、自社インディーズの設立(ワーナー・ミュージックによるADAの設立など)、そして大昔に買収したインディーズレーベルの再ポジショニング(UMGによるヴァージンの再編など)を行っている。

メジャーレーベル・グループごとの内訳は以下の通りだ。

  • ソニー・ミュージック: ジ・オーチャード(The Orchard)を運営している。同社は1997年に真のインディペンデントとして設立された実力派企業で、2012年にソニーに買収された。また、かつてインディーズの聖地であったAWOL(Artists Without A Label)もソニー傘下で維持している。さらにジ・オーチャードは、ソニーの旧配信部門であるREDも吸収している。
  • ユニバーサル ミュージック グループ(UMG): ヴァージン ミュージック グループ(Virgin Music Group)に多額の投資を行っている。同社はかつて、伝説的な音楽大物であるサー・リチャード・ブランソンによって設立された最前線のレーベルで、ブランソンはビジネスに不慣れ(バージン)だったことから会社を「ヴァージン」と名付けたと語っている。今や彼らは百戦錬磨のプロだ。UMGはダウンタウン・ミュージック(Downtown Music)やハイテク配信インフラ企業であるフガ(Fuga)も買収し、これらすべてをUMGのヴァージンのインディーズ配信部門に統合しようとしている。メジャーの中のメジャーのようにも聞こえるが、同社は大手に対抗する、真にインディーズ志向の選択肢であると主張している。
  • ワーナー ミュージック グループ(WMG): 1993年に設立された、業界で最も歴史のあるメジャー資本のインディーズ配信会社であるADA(Alternative Distribution Alliance)を利用している。

メジャーとインディーズの中間に位置するが、最近ではメジャーに近い存在となっているBMG(Bertelsmann Music Group)も忘れてはならない。2026年4月、BMGはそれ自体が強力なインディーズのメガプレイヤーであったコンコード・ミュージック(Concord Music)を買収。コンコードは2025年3月にインディーズで人気のSTEMを買収していた。このように動きは急速であり、BMGは独自の総合的な配信機能を備えた本格的なメジャーへと移行しつつあるのかもしれない。

こうしたインディーズとメジャーのハイブリッド企業は、「アップストリーム(上流移行)」契約を画策することも多い。これは、スターダムにのし上がりそうなアーティストが、まずはメジャー傘下のインディーズレーベルからスタートし、特定の目標を達成した場合には、同じシステム内でメジャーレーベルのレベルへとステップアップできる仕組みだ。

しかし、地元産でオーガニックな味わいを持つ純粋なインディーズ配信会社を好むアーティストにとって、メジャー傘下のインディーズは魅力的(食欲をそそるもの)には映らない。クラフトビールのようでありながら、実は極めて巧妙に作られたビール瓶を想像してほしい。ラベルには書かれていないかもしれないが、実は大手ビール販売会社が所有しているのだ。アンハイザー・ブッシュ傘下の「グースアイランドIPA」のように。

ピザと一緒にビールはいかがだろうか。

このトピックの詳細については、著者のポッドキャスト「Shmoozic Biz」を参照されたい。

forbes.com 原文

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