それでも、セルビア政府はこのロシア依存からの脱却に本気で取り組んでいるように見える。昨年12月に成立した2026年度予算では、エネルギー安全保障のために1640億ディナール(約2600億円)が計上された。この資金は、ロシア側が株式売却を拒否した場合、政府がNISを国有化するために充てられる可能性がある。
米政府との戦略対話を強化すれば、セルビアはこうした移行を加速させ、自国を米国・西側のエネルギー・サプライチェーン(供給網)に深く組み込むことができる。そうなれば、ロシアはバルカン地域でなお保持している最も有効な地政学的テコのひとつを失うことになる。
第2の理由は戦略鉱物である。それほど広く知られていないが、セルビアは欧州最大のリチウム埋蔵量を持つ。セルビア西部のヤダル鉱床は世界有数の埋蔵規模を誇り、欧州の現在のリチウム需要の最大90%を賄う能力があると推定されている。
セルビアはこれらの埋蔵資源について、中国ではなく欧州と協力して開発することを約束している。2024年には欧州連合(EU)との間で、原材料やバッテリー・バリューチェーンに関する戦略的パートナーシップを正式に締結し、その後、ヤダル鉱床はEUの重要原材料法の重要プロジェクトに指定された。
こうした取り組みは、セルビア政府が自国の最も価値ある戦略資源について、中国ではなく西側のサプライチェーンに組み込むという意図的な選択を行っていることを示している。これは後押しすべき流れである。なぜなら、世界のリチウム供給を中国以外に分散させることは、米国にとって直接の利害関係がある課題だからだ。
第3の理由は国防力の近代化である。セルビアは軍の近代化を積極的に進めており、フランスから戦闘機、スペインから輸送機、ドイツからヘリコプター、さらにイスラエルからさまざまな兵器システムを取得している。しかし米国の歴代政権はこれまで、近隣諸国からの反対もあってセルビアへの米国製兵器の売却に慎重な姿勢をとってきた。
こうした慎重姿勢はむしろ逆効果になりつつある。セルビア軍が米国製装備を導入すれば、北大西洋条約機構(NATO)との相互運用性が高まり、透明性も向上し、ロシアの基準よりも西側の基準に沿った方向へ変化していくからである。


