成長中のD2Cブランドで最もよく見られるパターンの1つが、これだ。前年比で売上を倍増させていた企業が、突如として壁にぶつかる。売上は横ばいとなり、顧客獲得コストは上昇し、経営陣は答えを求め始める。こうした状況に置かれたD2C企業のリーダーが最初に取る行動は、多くの場合、外部要因──競争の激化、経済情勢、広告費の高騰──に目を向けることだ。
そうした要因が影響することは確かにあるが、成長が停滞する主因であることはまれだと私は考えている。スポーツ、フィットネス、ウェルネス業界のD2Cブランドと仕事をしてきた経験から言えば、成長の踊り場はたいてい社内に原因がある。多くの場合、その企業は現在の段階に到達するのを助けてきた仕組みを、単に超えて成長してしまったのである。以下では、急成長するD2Cブランドの成長が止まる理由として私がよく目にする5つの要因と、リーダーが取るべき対応を紹介する。
1. 当初の顧客獲得戦略を超えて成長してしまう
成長するD2Cブランドが直面する重要な課題は、初期の成功を支えた同じ顧客獲得戦略に過度に依存することだ。初期段階では、有料ソーシャル広告やインフルエンサーマーケティングなどの獲得戦略が大きなリターンを生むことがある。しかし私の経験では、競争が激化し、オーディエンスが飽和するにつれて、どの獲得チャネルもいずれ収益逓減の局面に達する。顧客獲得コストは上昇し、売上が伸び続けていても利益率は縮小し始める。
成果が落ちるのを待つのではなく、リーダーは新たな獲得チャネル、クリエイティブの手法、オーディエンスセグメントを継続的にテストすべきだ。成長鈍化を受けて必要に迫られてからではなく、その前に獲得チャネルを多様化する方が容易である。成長を続けるブランドは、魔法のような解決策を常に探しているわけではない。既存の顧客獲得チャネルが限界に達する前に、継続的にテストし、測定し、適応しているのである。
2. リテンションではなく売上に注力する
多くのブランドは新規顧客の獲得に集中するあまり、最大級の成長機会の1つを見落としている。それは、顧客生涯価値を高めることだ。私が創業者によく尋ねる質問がある。「すべての顧客があと1回だけ購入したら、あなたの会社の売上はどれだけ増えるか」。その答えは、特に新規顧客の獲得コストと比べると、予想以上に大きな意味を持つことがある。
顧客生涯価値を高める方法は、企業によって異なる。補完的な商品、サブスクリプション、会員制度を導入できるブランドもあれば、アクセサリー、教育、サービスへと広げ、初回購入後に追加価値を生み出せるブランドもある。リーダーは、企業を持続的に成長させるために、常により多くの顧客を見つける必要があるわけではない。既存顧客により大きな価値を提供することで、持続的成長を実現できることが多い。
3. 業務体制が販売の勢いに追いつかない
私の観察では、多くの企業は需要が消えるから成長が止まるのではない。社内のオペレーティングシステムが、次の成長段階を支えられないから成長が止まるのだ。売上が増えるにつれて、在庫計画、フルフィルメント、レポーティング、採用、カスタマーサポート、社内コミュニケーションの各所で弱点が表面化し始める。外からは販売上の問題に見えるものが、舞台裏では実行力の問題であることが多い。
成長の各段階には、それぞれ異なるオペレーティングシステムが必要である。スケールすることは、必ずしも人を増やすことではない。リーダーは、そうした投資が緊急課題になる前に、拡張可能なプロセス、テクノロジー、チーム育成に投資すべきだ。
4. 顧客の声に耳を傾けない
企業が成長するにつれて、経営陣は日々の顧客接点から自然と遠ざかっていく。かつてはすべてのレビューを読み、顧客メールに返信していた創業者も、チームを率い、戦略的意思決定を行う時間が増える。これは自然な進化ではあるが、同時に、経営陣と、その事業が価値を提供しようとしている人々との間に距離を生む可能性もある。
強いブランドは意図的にフィードバックループを維持していると私は考えている。顧客のフィードバックを定期的に確認し、インタビューを行い、サポート対応の会話を分析し、繰り返し寄せられる質問や反論に細心の注意を払う。こうした対話は、データに業績低下が表れるずっと前に、商品、メッセージ、顧客体験を改善する機会を明らかにしてくれる。
5. ブランドポジショニングを進化させない
私の観察では、多くのブランドは、競合が進化し、顧客の期待が変化しているにもかかわらず、初期の成功を支えたメッセージに依存し続けている。3年前に事業を差別化していた要素が、今では標準とみなされているかもしれない。適応できないブランドは、価値ではなく価格で競争することになり、持続的成長はますます難しくなる。
リーダーは、顧客が代替候補ではなく自社ブランドを選ぶ理由を定期的に見直すべきだ。必ずしも全面的なリブランディングが必要なわけではないが、企業の価値提案、競争上の差別化、メッセージを磨き、関連性を保つ必要はある。リーダーにとって、企業のブランドポジショニングを進化させることは、単にマーケティングを改善することではない。顧客がなぜ自社ブランドを選ぶべきなのかを、継続的に再定義することなのである。
結局のところ、成長問題は姿を変えた業務上の問題であることが多い
成長が鈍化すると、別のマーケティングチャネルを探したり、新商品を発売したり、広告費を増やしたりしたくなる。私の経験では、そうした解決策は原因ではなく症状に対処していることが多い。多くの場合、成長によって、事業が備えられていなかった社内のボトルネックが露呈したのである。すべての創業者に問いかけてほしい質問がある。「今後12カ月で事業が2倍になったら、最初に壊れるのは何か」。その答えが、たいてい次の制約である。成長を続ける企業は、必ずしも最大のマーケティング予算を持つ企業ではない。ボトルネックを継続的に特定し、チームを強化し、成長に迫られる前に仕組みを構築している企業である。持続的成長とは、より多くのことを行うことではない。より多くを受け止められる組織をつくることである。



