経営・戦略

2026.07.22 07:44

なぜ高額でも売れるのか? ラグジュアリーファッションに潜む経営の秘訣

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私が仕事で関わっているあるラグジュアリーファッションブランドでは、メンズの水着に445ドル(約7万円)、スーツには最大2万ドル(約325万円)の値札がつく。機能面だけを見れば、まったく同じような商品はアメリカのどの街のディスカウント店の棚でも10ドル(約1万未満円)や199ドル(約3万円)で見つかる。ある人にとっては「その値段?」と目を疑うような価格設定が、こうしたブランドにとっては莫大な利益率を意味する。しかし、なぜそれが成立するのか。

同等の商品やサービスをより高値で売る競合と比べ、自分はどれほどの利益を取りこぼしているのか──そう考える経営者にとって、答えは高品質な素材の調達やサプライチェーンの巧みさとはほとんど関係がない。もちろんそれらも重要ではあるが、ラグジュアリーファッションの世界からすべての経営者が学べることは別にある。秘訣は、「何を」売るかではなく、「どう」売るかにあるのだ。

1984年、心理学およびマーケティングの教授であるロバート・チャルディーニ博士は、影響力や説得のための6つの原則を提唱した。これらの原則は、当時と変わらず今日でも有効であり、ラグジュアリーファッションの世界にあてはめてみると多くのことが見えてくる。

1. 返報性:「何かを得るには何かを与える」という根底にある原則は、さまざまな形を取る。無料の水やコーヒーを提供された顧客は、実店舗に足を踏み入れた後に高額を支払う可能性が高くなる。年に一度の検診後、小学生の患者に小さなおもちゃを渡す歯科医も、同じ前提に基づいて行動している。

2. コミットメントと一貫性:ひとたび何かに公に、たとえ小さな形であってもコミットすると、人はその後もそのコミットメントに一貫した振る舞いをしなければならないという圧力を感じるようになる。特定のブランド、あるいは特定のスタイルに忠実だと自認する人々は、ラグジュアリーファッションブランドにとって信頼できるリピーターの供給源となる。

3. 社会的証明:口コミマーケティングにおいて、ファッションには明確なアドバンテージがある。ターゲット顧客が口を開く必要はない。ただ人前でその服を着ている姿を見られるだけでいいのだ。この原則は普遍的である。ターゲット層があなたのブランドを街中で目にしたり耳にしたりすれば話題が生まれ、時間も労力も要さないオーガニックなマーケティングキャンペーンが自然発生する。

4. 権威:権威を示す言葉遣いは、「自分は何を話しているのかを理解している」というメッセージを伝える。医師や歯科医であれば、白衣を着て仕事をするだけでよい。ファッションのような競争の激しい分野で際立とうとするなら、その方程式はより複雑になる。分野を問わず、経験の浅い新参者ではないことを示せば、尊敬を集めやすくなる。

5. 好意:この項目を一言で言えば「感じの悪い人間になるな」ということだが、ターゲット顧客に好感度をどう伝えるかは、彼らの好み、嗜好、文化的な帰属を深く理解していなければ成立しない。ファッションのビジュアル表現は、いかに少ない言葉でこれを実現するかの完璧なケーススタディを提供してくれる。

6. 希少性:ハイエンドの小売店で希少性の演出をするのは、実は簡単だ。奥のストックルームに同じ商品がいくらでもあっても、フロアには1点か2点だけ並べておけばいい。虚偽を真実と思い込ませようとしているのではない。商品を「唯一無二の一点」として提示し、その独自性を強調することで価値を伝えているのだ。

この6つの原則を習得した人は、それがビバリーヒルズでもバーミンガムでも、ファッションモールでも診療所でも、同じように機能することに気づくだろう。これらの考え方が成功するかどうかは、ひとえに実行者がそれを実践できるかにかかっている。鋭い顧客であっても、自分が「マーケティング入門」を学んだブランドから購入していると知って不快に思うことはない。返報性の原則は、その理由を見事に示している。

顧客が店に入り、価値ある何かを受け取ると、帰る前にお金を使う可能性が高くなる。笑顔、あいさつ、握手は良い出発点だ。自動車販売店の敷地に足を踏み入れたことがある人なら、この仕組みを理解しているだろう。だが、実際の贈り物はさらに効果的である。私が関わるラグジュアリーファッションブランドは、来店客にエスプレッソ、ワイン、カクテルを提供している。飲み物1杯が利益率を削るという考えを受け入れているのは、その小さな先行支出を十分に上回るリターンがあるからだ。顧客が450ドル(約7万円)の水着を1着、あるいは5000ドル(約81万円)のスーツを1着でも購入して店を出れば、利益率はなお驚くほど高い。

さらに重要なのは、何かを提供するという行為が顧客にどう感じさせるかである。それは関係性とロイヤルティを生む。自分には価値があるという感覚を呼び起こす。自分はそのカクテルを受け取るに値すると考える人は、理屈の上では新しい服に散財することにも値すると感じる。(これは、顧客から求められた後で何かを提供することとは根本的に異なる。多くの実店舗型ビジネスが犯す過ちである。)富裕層の顧客に対応する場合、この返報性は、彼らが日常生活で慣れ親しんでいるサービス水準を反映するものでもある。あなたの店舗や診療所での体験だけが違っていてよい理由があるだろうか。

ほぼすべてのビジネスパーソンが、意識せずともチャルディーニの原則の1つか2つは日々実践している。この6つすべてを日常業務に効果的に組み込める者こそが、抗いがたい魅力を持つブランドを作り出すのだ。

小売ファッションほど過密で競争の激しい業界は多くない。ショッピングモールを10分歩けば、衣料品を販売する店はいくらでも見つかる。最も高い利益率を享受する企業を分けるものは、細部と実行の熟達度にある。

forbes.com 原文

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