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AI

2026.07.21 16:57

トークン単価は下がっても、企業のAIエージェント費用は下がらない

stock.adobe.com

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Meta(メタ)は7月9日に同社初となる有料モデルのAPIを公開し、Muse Spark 1.1の価格を、100万入力トークンあたり1.25ドル(約1万未満円)、100万出力トークンあたり4.25ドル(約1万未満円)に設定した。これらの料金はOpenAI(オープンAI)やAnthropic(アンソロピック)のフラッグシップモデルを下回るものだが、割引の規模はモデルやトークンの種類によって異なる。企業バイヤーにとって、料金表は請求書に記載される一項目にすぎない。

エージェントシステムは、ユーザーからの1つのリクエストを、計画立案、データ検索、ツール呼び出し、検証、再試行といった何巡もの反復処理へと変換する。そのため、トークン単価が下落しても、完了したタスクあたりのコストや、組織全体のAI支出総額は上昇する可能性がある。この結果は、企業の普遍的なトレンドとしてまだ定着しているわけではなく、本番環境におけるエージェントコストに関する公開データも依然として少ない。それでも、予算管理における教訓は変わらない。財務チームは、想定される呼び出し回数に公表されている100万トークンあたりの価格を掛け合わせるのではなく、ワークフローの成功に伴う成果をモデル化すべきである。

加速する価格競争

最先端に近い3つのモデルのリリースが、わずか8日間のうちに行われた。SpaceXAIは7月8日にGrok 4.5をリリースした。OpenAI(オープンAI)は7月9日にGPT-5.6ファミリーを一般提供開始し、Meta(メタ)も同日にMeta Model APIを公開した。DeepSeek(ディープシーク)も遠くない位置におり、5月下旬にV4-Proの価格を恒久的に75%値下げした。

OpenAI(オープンAI)が公開した料金は、フラッグシップのSolが100万トークンあたり入力5ドル(約1万未満円)、出力30ドル(約1万未満円)で、Terraはその半分、Lunaは入力1ドル(約1万未満円)、出力6ドル(約1万未満円)となっている。これらの料金は7月13日時点のものである。4つの発表はすべて、コーディングやコンピュータ操作、マルチエージェントのオーケストレーションに関する能力の高さを主張しつつも、価格と1ドル(約1万未満円)あたりのパフォーマンスに異例の重点を置いていた。OpenAI(オープンAI)は開発者に対し、GPT-5.6を各トークンからより有用な成果を引き出せるように訓練したと説明した。

料金表は別として、これらの一連のリリースは、クラウドサービスから借用したある仮定に基づいている。それは、単価は毎年下落するため、推論コストはいずれ運営予算における端数程度になるはずだという考えだ。確かに、ストレージとコンピュートの価格は10年間にわたって下落した。しかし、消費量、マネージドサービス、データ転送(イグレス)の拡大に伴い、クラウドの請求総額は上昇し続けた。エージェントも、より短いスパンでこのパターンを繰り返す可能性がある。なぜなら、ユーザーの目に見える1つのアクションが、従量課金対象となる数十の処理のトリガーになり得るからだ。

異なる4つの数字

エージェントの予算に関する議論の多くが破綻するのは、性質の異なる4つの数値を同一視しているからだ。1つ目は料金表に記載されている「トークン単価」。2つ目はワークフローが実際に消費する「試行あたりのトークン数」。3つ目はワークフロー全体のコストを正しく完了したタスク数で割った「成功タスクあたりのコスト」。そして4つ目は、これらすべてにタスク量を掛け合わせた「組織全体の支出総額」である。

これらは独立して動き、時には相反する方向に進むこともある。最初の試行でチケットの90%を解決できる高価なモデルは、40%しか解決できず、再試行やエスカレーションを繰り返した末に人間の対応が必要になる安価なモデルよりも、解決チケットあたりのコストが低くなる可能性がある。また、完了したタスクあたりのコストが下がっても、単に多くのチームがより多くのエージェントを稼働させることで、支出総額が上昇することもある。

モデル化すべき方程式は至ってシンプルだ。支出総額=タスク量×タスクあたりの試行回数×試行あたりのトークン数×実質的なトークン価格+ツールおよびインフラのコスト。この連鎖の中で下落しているのは、4番目の項目だけである。

エージェントのワークロードが膨大なトークンを消費する理由

従来のチャットのやり取りでは、検索やモデレーション、ルーティングが伴う場合であっても、通常は1回の主要な生成処理で済む。これに対し、エージェントワークフローでは、その上に計画立案、ツールの呼び出し、検証、再試行のループが加わり、その都度コンテキストが再送信される。ユーザーが目にする回答は1つだが、ベンダーはループ全体の費用を支払うことになる。

ゴールドマン・サックスは、2026年から2030年の間にトークン消費量が24倍に増加し、月間12京トークンに達すると予測している。同行は、この急増の原因はより多くの人々が質問をすることではなく、常時稼働する企業向けエージェントにあると考えている。これは市場予測であり、タスクごとの測定値ではない。エージェントによるコーディングの研究では、タスクあたりの使用量が単純なチャットよりも数桁多いことが報告されている。同研究では、同じタスクを繰り返し実行した場合でも結果に大きなばらつきがあることが示されており、あらゆるワークロードに適用できる共通の乗数は存在しない。

それでも、計算の現実は予算を圧迫する。例を挙げると、あるタスクでのトークン消費量が20倍に増加する一方で、単価が75%下落した場合、モデルの利用料金総額は5倍に増加する。実際の料金は、再試行、キャッシュ、ルーティング、ツールの利用料によって左右される。

推論モードも同じ方向に作用する。Muse Spark 1.1は内部の思考トークンを出力レートで課金するため、高負荷なChain-of-Thought(思考の連鎖)の呼び出しは、長い回答を生成するのと同様のコストがかかる。GPT-5.6は、4つのエージェントを並行して調整する「Ultra」設定を提供しており、これはスピードと引き換えにトークン消費量を増加させる。

実際の支出先

請求額の大部分を入力と出力のどちらが占めるかは、ワークフローによって異なる。エージェントによるコーディングでは、システムが実行のたびにリポジトリのコンテキスト、ツールの実行結果、会話履歴を再送信するため、膨大な入力ボリュームが発生する。エージェントによるコーディングに関する研究では、入力トークンが全体のコストを押し上げていることが分かっている。一方で、長い文書の生成や高負荷な推論を伴うワークフローでは、出力トークンがコストの主因となる。

月間にキャッシュされていない入力トークンが1000万、出力トークンが100万あると仮定しよう。Muse Spark 1.1では、入力コストが12.50ドル(約1万未満円)、出力コストが4.25ドル(約1万未満円)となる。GPT-5.6 Solでは、それぞれ50ドル(約1万未満円)と30ドル(約1万未満円)になる。どちらの場合も、出力の単価がより高いにもかかわらず、入力が最大の支出項目となっている。出力価格だけを基準に考えるチームは、請求書の的外れな部分に基づいて予算を算出することになる。

キャッシュの活用は、これらの数値を最も大きく変動させる手段であり、その条件はプロバイダー間で大きく異なるため、システムアーキテクチャの観点からも重要となる。Meta(メタ)はキャッシュされた入力の読み取りを100万トークンあたり0.15ドル(約1万未満円)としている。OpenAI(オープンAI)はGPT-5.6のキャッシュ読み取りに対して90%の割引を適用しているが、キャッシュの書き込みにはキャッシュなしの入力料金の1.25倍を課金する。Anthropic(アンソロピック)はキャッシュの書き込みを別途課金し、5分間の保持ウィンドウでは入力の1.25倍、1時間の保持ウィンドウでは入力の2倍を請求する。Google(グーグル)は、明示的なコンテキストキャッシュに対して時間あたりのストレージ料金を追加する場合がある。プロバイダー固有のキャッシュの境界値、保持時間、ストレージ料金は、特定のベンダーのキャッシュ挙動に合わせてアプリケーションを厳密に調整している場合、ベンダー移行コストを生じさせる要因となる。ただし、プロンプトの抽象化レイヤーを導入することで、そのリスクを低減することは可能である。

直面する課題

トークン料金は、エージェント利用コストの一部にすぎない。本番環境のワークフローでは、検索と情報取得、ベクトルストレージ、再ランキング、ブラウザやコンピュータの使用セッション、サンドボックス内でのコード実行、オブザーバビリティ(可観測性)、そしてエージェントの間違いを修正する人間によるレビュー費用も発生する。モデルのAPIコストだけで完結するコスト計算モデルは、請求書のごく一部しか測定していない。

評価基準に関するレイヤーは、価格を巡る議論で想定されているほど強固ではない。OpenAI(オープンAI)は「SWE-Bench Pro」を検証し、タスクの約30%が機能していないと見積もり、コーディング評価の主要ベンチマークとして推奨することを止めると発表した。安価なモデルが十分な品質であることを証明するために公開スコアを求めていたバイヤーは、今やワークフローに特化した独自の評価を自ら実行せねばならず、その評価には多額の費用がかかる。

交渉上の優位性も条件次第である。公に展開される価格競争がバイヤーの利益となるのは、モデルの代替が可能な場合に限られる。品質に決定的な差がある場合、ワークフローが独自のツールに依存している場合、すでに利用規模の契約が締結されている場合、あるいはコンプライアンス要件によりプロバイダーが制限されている場合、公表されている価格表が安くなっても、状況はほとんど変わらない。

要約すると、料金表の価格は下落しているが、実際の請求金額は全く別問題である。企業は成功した成果ベースで予算を策定し、スケールアウトする前にループのコスト状況を測定・可視化すべきだ。そして、モデル化するすべての価格に日付を記録しておくべきである。なぜなら、これらの数値はわずか8日間のうちに3回も変動したからだ。

次のベンダーとの商談では、次の3つの質問をぶつけるべきだ。まず、再試行やエスカレーションを含めて、正常に解決されたタスクあたりのトークン消費量の中央値はどれくらいか。次に、ワークフロー内のどのステップであれば、明らかな品質低下を招くことなくLuna(ルナ)クラスやMuse(ミューズ)クラスのモデルで実行できるか。最後に、それぞれの従量課金レイヤーが独立して請求される中で、ツール呼び出しが倍増した場合、請求額はどう変化するか。

今回の価格競争により、企業顧客は、推論コストが予算項目となって以来、最も有利な立場に立っている。その強みを交渉力へと変えられるのは、ベンダーが提示する料金表ではなく、自社独自の「成果あたりのコスト」の数値を手にして交渉に臨む顧客である。

forbes.com 原文

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