リーダーシップ

2026.07.21 16:42

エンタープライズAIの成功を左右するのは技術ではなく「人」だ

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ビジネス変革の推進力としてエンタープライズAIが持つ潜在的価値は、リーダーの間で広く認識されている。それにもかかわらず、あまりにも多くの組織が、その意欲を測定可能なビジネス価値へと転換することに苦戦し続けている。

問題の原因はテクノロジーにあり、企業におけるAIの価値は過大評価されており、導入のハードルがいまだに高すぎるのだと結論づけるのは簡単だ。

しかし、実際にはそうではないようだ。テクノロジーの導入が決して簡単でないのは確かだが、企業内の多くの変化と同様、根底にある障害の多くは本質的に人と組織に関わるものなのである。

エンタープライズAIの人間的側面

Tribe(トライブ)のCEO兼共同創業者であるジャクリン・ライス・ネルソンは、10年以上にわたり、エンタープライズ規模のAIイニシアチブ(取り組み)を実装する際の課題を目の当たりにしてきた。彼女はAIの台頭を最前線で見てきた人物である。

かつてAlphabetのグロースエクイティ(成長企業投資)ファンドであるGoogle Capital(現在はCapitalGに改称)のバイスプレジデントを務めていたネルソンは、投資先スタートアップにGoogleのエンジニアを送り込み、市場投入に向けた準備を加速させる仕事に携わっていた。GoogleのAIにおける先駆的な取り組みにより、彼女は生成AI以前の初期のAI機能を経験し、それが同社のポートフォリオ企業にもたらす成果を目にしていた。

2015年の時点で、ネルソンには未来が明確に見えていた。ほぼすべての企業が、AIを活用する組織になるという未来である。

その後の数年間で、彼女は自身の人生の方向を変えることになる気づきを得た。多くの企業は熱意を持っているにもかかわらず、Googleなどの企業が生み出す新興技術に容易に関与し、それを統合してビジネス価値を引き出せる状態にはなかったのである。

特にAIが急速に台頭する中で、ネルソンは、組織が前進するには、質の高いデータ、強固なデータガバナンス(管理・統制体制)、モダンなデータインフラといった必要な技術的前提条件に加え、専門的な技術スキルとビジネススキルを大量に必要とすることを明確に理解した。

この洞察を得たネルソンはGoogleを離れ、この機会に応えるためにTribeを創業した。

エンタープライズAIに必要なのは優れたモデルだけではない

圧倒的多数の企業は、チャットボットなどの生成AIツールを採用し、現在エンタープライズアプリケーションで利用可能になっている多くのAI機能から恩恵を受けている。しかし、複雑なAIソリューションを構築し、既存のワークフロー(業務フロー)に統合する成功については、同じことは言えない。そうした取り組みにおける失敗率は、依然として痛ましいほど高い

複雑で統合型のAI施策がしばしば成功しない理由は、データ品質や準備状況の不十分さから、問題定義やプロジェクトガバナンスの弱さまで多岐にわたる。

また、今日のAIを「プラグアンドプレイ(接続するだけで使える技術)」であり、箱から出せばそのまま機能すると考えるリーダーが多すぎることも一因だ。既存のシステムやプロセスにAIをうまく統合するには、AIを大規模に支えるために必要なインフラ、統合レイヤー、セキュリティ制御、AI運用能力など、重要な前提条件が必要となる。

ビジネスリーダーはAIによる問題解決や新たな能力の創出を望んでいる。しかし、AIの機能を利用することと、それを安全かつ信頼できる形で大規模に実用化することとの間にある溝は、多くの人が考えているよりもはるかに深い。

エンタープライズAIの機会はビジネスの再発明にある

ネルソンは、多くのAI施策が本番環境に至らない理由に関する報告書の指摘を裏付けている。同時に、CEOやその他のリーダーには、自社の事業においてAIが果たし得る役割を再定義する余地があるとも考えている。

彼女が目にしているのは、AIを特定の課題を解決する新たな方法、あるいは個別ソリューションを構築する手段として捉える、善意のリーダーたちである。ネルソンは、こうした要望はいずれも妥当であり、適切なスコーピングが行われれば、AIが正しいアプローチになり得ることを認めている。

しかし、これまで登場してきた多くの新興技術と異なり、AIがもたらすのはビジネスを再発明する機会である。ネルソンは、現在の業務の進め方を単に自動化したりコストを削減したりするためにAIを使うのではなく、AIには自社の事業運営のあり方を根本的に再設計する可能性があることを、より多くのリーダーに理解してほしいと考えている。最悪の場合、野心が不十分であれば、その可能性をつかんだ競合に後れを取ることになりかねない。

リーダーは破壊する側にも、破壊される側にもなり得る。それは選択であり、ネルソンは多くの企業の動きが十分に速くないことを懸念している。

リーダーはAI成功率をどう高められるか

CEOがAIによって自社を変革したいのであれば、全体像と、AIから何を得たいのかを明確に定義しておく必要がある。具体的には、リーダーは明確なビジネス目標を設定し、成功をどのように測定するかを定義すべきだ。さらに、その取り組みがいかに困難で複雑であるかを踏まえれば、投資を正当化するための厳密な精査が求められる。

ネルソンはこの点を強調する。定義が不十分、あるいは野心が不足した要件からAIの旅を始めることは、その可能性を狭める。開始時点で正確なスコーピングを優先しなければならない。そうすることで、事業内に存在するギャップ、それにどう対処すべきか、そして取り組みにかかる実際のコストを理解できるからだ。また、事業上の目標が技術的に実現可能かどうかを判断する助けにもなる。

技術的実現可能性の評価の一環として、既存のシステムやワークフローとの統合を分析し、設計しなければならない。これは、早い段階で検討されなければ、大規模なAI施策がつまずきやすい領域である。統合上の問題を発見する最悪のタイミングは、いざ統合するときである。

組織としての準備が整い、要件が明確であることを前提に、ネルソンは迅速で反復的な構築サイクルを推奨している。まず基盤となるデータとAIインフラを導入し、その後、測定可能なビジネス価値を示す小規模な機能スプリント(短期間の集中開発)を定期的に行い、組織の信頼を築き、より大きな変革を着実に前進させるべきだ。

それでも、強固な技術基盤を持つ組織でさえ、変革の人間的側面を過小評価すればつまずく可能性がある。

変革は人から始まる

大規模で複雑なAIプロジェクトにおいて最も難しい部分は、テクノロジー、ガバナンス、データ、スキルではなく、組織再設計の実装を支え、可能にするうえで人間が果たす役割なのかもしれない。

新しいテクノロジーやプロセスの導入が抵抗に遭うのは、決してAIに限ったことではない。しかし、AIが持つ影響範囲の広さは、その抵抗を増幅させる。人は変化と不確実性を恐れ、それは承認の遅れから根強い否定論まで、あらゆる種類の障害としてさまざまな形で表れることがある。

こうした障害は決して乗り越えられないものではないが、可能な限り予測し、軽減しなければならない。厳密なチェンジマネジメント(変革管理)、ステークホルダーの関与、強力なコミュニケーション、インセンティブの再設計を検討すべきである。

多くのエンタープライズAI施策がこれまで期待外れの結果に終わっていることは、テクノロジーに問題があることを示しているわけではない。むしろ、組織変革が常にいかに難しいものであったかを浮き彫りにしている。リーダーは、エンタープライズAIの成功がテクノロジーそのものよりも、それが求めるビジネス変革と人の変化の規模に備えて組織を整えることに大きく依存していると認識すべきである。

forbes.com 原文

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