習氏は6月の中朝首脳会談の際、人の交流の拡大も訴えた。王氏らが訪れた元山葛麻海岸観光地区は、中国にとって数少ない意味のある訪問地だったと言える。朝鮮中央通信が伝えた王氏らが海岸を視察する写真には、海水浴客とみられる人は写っていなかった。警備のための通行制限かもしれないが、同地区にはホテル客室が計2万室あるとされる。北朝鮮は国内観光も奨励しているが、北朝鮮市民の経済力では十分な消費は期待できない。過去、外国人観光客が最も北朝鮮を訪れたのは新型コロナウイルスの感染拡大直前の時期で、年間約30万人程度だったとされ、その大部分は中国人だった。
王氏らが観光地区を視察したのは、「中国はいつでも観光客を送り込める」と北朝鮮側にアピールする狙いがあるのだろう。ただ、中国人観光客のなかには朝鮮語を話せる人も多い。北朝鮮市民に西側の情報を伝える可能性があるし、中国人が北朝鮮内部の様子を撮影してインターネットに流す可能性も大いにある。北朝鮮は現時点で、中国人観光客の受け入れに踏み切れないでいる。
上述の元幹部によれば、中国は北朝鮮に対して「北朝鮮が改革開放路線を取れば、中国は大規模な経済支援が可能だ」という考えを伝えている。ただ、金正恩氏は逆に、一般市場で販売できる品目を制限したり、電子取引を奨励したりして、経済の管理を強化する道を進んでいる。中国に対しても投資や貿易は歓迎するが、市場メカニズムの共有や情報交流には極めて慎重な姿勢を示している。
この2カ月間にわたる中朝の高官交流を見る限り、中国は北朝鮮をおとなしくさせることで精いっぱいで、米朝首脳会談の仲介で積極的な役割を果たす余地は限られているとみて良さそうだ。


