起業家

2026.07.29 13:30

豊田章男氏も学んだ世界一のアントレ教育現場。正解をつくる人と失敗を力に変える起業道

山川恭弘|米バブソン大学准教授

山川恭弘|米バブソン大学准教授

「世界一のアントレプレナーシップ教育」として評価される米バブソン大学。16年以上も同大学で教壇に立つ山川恭弘からの「未来をひらく」メッセージとは。


これからの時代の「新しい成功」とは何か──。全米アントレプレナーシップ教育ランキングで32年連続1位、アメリカ・マサチューセッツ州にあるバブソン大学にて、2009年から16年以上も教壇に立つ山川恭弘にひとつの問いを投げかけた。その問いかけに、山川からは次のような答えが返ってきた。

「自らの問いをもち、行動し、失敗から学びながら、自分と社会の可能性を広げ続けることではないでしょうか。コマが高速回転しているときに周りから何が来ようとはじき飛ばすように、自分が熱中できる軸をもって動き続けることとも言い換えることができるかもしれません」

そして、次の言葉が続いた。バブソン大学でのアントレプレナーシップ教育の授業において、新学期開始早々の数週間を「自己理解」に使う山川らしい言葉だ。

「大事なのは、誰かが用意した正解に早くたどり着くことではなく、自分が何に違和感をもち、何を良くしたいと思い、誰のために、どのような価値をつくれるかを考え、実際に小さく動いてみること」

世界100カ国以上から学生が集い、トヨタ自動車代表取締役会長・豊田章男、スパークス・グループ代表取締役社長・阿部修平、佐藤製薬代表取締役社長・佐藤誠一らが卒業生として知られている、バブソン大学。キャンパスには「Those who dream we call dreamers.Those who do we call entrepreneurs.(夢を描く者をドリーマーと呼ぶ。だがその上で、行動する者をアントレプレナーと呼ぶ)」という垂れ幕が飾ってある。世界一のアントレプレナーシップ教育を行う同大学の看板授業は「Foundations of Management and Entrepreneurship(FME)」。山川はこの大学1年生向けの必須科目の授業も担当している。

約600人の大学1年生全員に起業を経験させる授業では、1クラス40人の学生をチームに分け、前期で会社の立ち上げ、後期で運営をさせる。チームメンバーから社長以下役職を選び、会社設立のうえ銀行口座もつくる。毎年50以上の会社が立ち上がり、1社あたり30~50万円の運営資金を大学から提供する。学期末には必ず会社をクロージングさせ、学生はエントリーからエグジットまでのビジネスサイクルすべての実践経験を積むことができる。

なぜ、山川がこの科目を「自己理解」から始めるのか。「今もこれからも『何を知っているか』の価値はどんどんなくなっていきます。バブソンでは『Desire』『Will』『Legacy』と言いますが、『自分は今、どんな欲望があるか』『どんな世界をつくりたいか』『どんな意志があるか』『どんな社会への貢献をしたいか』『どんなものをつくり後世に遺したいか』をとことん追求すること。『自分は何のために生まれて、何をなそうとしているのか』──。それがアントレプレナーシップのど真ん中だからです」

そしてこれからの人物像についても、3つの大きな変化が生まれていると位置付けている。1. 「正解を探す人」から「正解をつくる人」へ、2. 「評価される人」から「価値を生み出す人」へ、3. 「失敗を避ける人」から「失敗を奨励する(学びに変えられる)人」へ──。そして、10代に伝えるのであれば、と次のように続けた。

次ページ > なぜ今、日本のアントレ教育か

文=山本智之 写真=若原瑞昌

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事