起業家

2026.07.29 13:30

豊田章男氏も学んだ世界一のアントレ教育現場。正解をつくる人と失敗を力に変える起業道

山川恭弘|米バブソン大学准教授

「失敗文化のススメ」と「5つの問い」

山川はバブソン大学では「Dr.Failure」という異名で知られ、「Failure is Good!」が代名詞ともなっている存在だ。山川は「起業道」とともに「失敗道」を教えている。バブソン大学で毎年開かれる、失敗を祝福するアワード「MVF(Most Valuable Failure)」は山川によって、日本でもよく知られる存在となった。アカデミー賞のレッドカーペットばりに開かれる同イベントでは、表彰された失敗者たちが誇らしげに自分の失敗を語る。失敗の質で大賞が決まるので、自慢するのだという。授業の評価も同様で、前述の大学1年生が受講するFMEも、失敗すれば成績が上がるという。

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「これまで16年間教えていますが、失敗しないチームはありません。絶対に失敗します。でも、この授業での成績は、いくらもうけたか、ではなく、いかに学んだか。だから、失敗すればするほど、『こんなに学びました』となり、生徒も先生も喜ぶというすごいシステム。だから、誰も失敗を怖がらなくなる。失敗しても、そこから学んだことを次に生かせばいいという文化がアントレプレナーシップにとってはとても重要なことです」。一方で、こうも続ける。「失敗は精神的に負担になるため、安易に推奨できるものではありません。だからこそ、失敗の学びの側面に着目して学び、変わってほしい。『Fai lure is Good!』と言い続けているのもそのためでもありますから」

冒頭の問いである「新しい成功」に対する山川の返答には実は続きがある。

「成功を『名詞』ではなく、『動詞』としてとらえることが大切だと思います。成功は、到達点ではなく、つくり続けるもの、あり続けるものです。勝ち取って終わりではありません。学び続け、変わり続け、周囲を巻き込みながら、より良い未来をつくっていくプロセスそのものです」。そして「10代とともに『未来をひらく』ための仕掛けができるのであれば、5つの問いかけをしたい」と続ける。

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「あなたは何に違和感をもっていますか』

「誰のどんな困りごとを解決したいですか」

「明日できる小さな実験は何ですか」

「失敗したとき、そこから何を学べますか」

「その挑戦は、自分だけでなく、誰かの未来を少しでも良くしますか」

そう問いかけた後、山川は最後に「これらの問いに向き合うことが新しい成功を創造していく第一歩です」との言葉も付け加えた。アントレプレナーシップ教育の核心をボストンから日本に広め、アントレ教育を人生の羅針盤として位置付け、一部向けではなく、次世代の「これからの生きる力」と再定義して社会に広めていく──。山川が描く「世界を変える夢」も、次世代の学生たちや先生たちとともに動き出している。


山川恭弘◎バブソン大学准教授。慶應義塾大学法学部卒業後、エネルギー業界にて新規事業開発やスタートアップ設立の経験をもつ。ピーター・ドラッカー経営大学院にて経営学修士(MBA)課程修了。テキサス州立大学ダラス校にて国際経営学博士号取得。2009年度より現職。

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文=山本智之 写真=若原瑞昌

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