宇宙は世界情勢において最も重要な分野のひとつでありながら、最も理解されていない分野のひとつでもある。宇宙は各国が支配を争う戦闘領域であると同時に、商業機会と科学探査が広がるフロンティアであり、さらには向こう数十年にわたり世界の技術競争を左右することになる技術を実証する舞台でもある。
4月には米航空宇宙局(NASA)の有人月探査計画「アルテミス」の第2弾「アルテミス2」で、半世紀以上ぶりとなる低軌道(LEO)以遠への有人飛行が成功裏に完了し、宇宙への関心が国際的にあらためて高まった。
宇宙というエキサイティングで急速に進化している領域の全体像を知る一助になるよう、この記事では、政府や企業のリーダーが戦略を立案するにあたって理解し、考慮しておくべきいくつかの重要なトレンドを概観したい。以下の見解は主に、筆者が過去7年、米ノースロップ・グラマン社で宇宙・サイバー・情報分野の戦略・開発担当副社長を務めた経験に基づくものである。
宇宙防衛分野への政府支出は新たな時代に入る
米宇宙軍は2027会計年度(2026年10月〜2027年9月)の予算として、前年度比124%増となる711億ドル(約11兆5000億円)を求めている。内訳は衛星通信能力の強化に67億ドル(約1兆900億円)、ミサイル警戒・追跡体制の構築に68億ドル(約1兆1000億円)、宇宙での戦闘能力の強化に必要な各種宇宙統制システムの整備に216億ドル(約3兆5100億円)などとなっている。これとは別に、米国防総省のほかの予算や各情報機関の予算にも宇宙関連のものが含まれるのは間違いない。
米国の宇宙関連費の急増は世界的な潮流を映すものでもある。現在、世界全体の宇宙関連支出では政府部門の宇宙防衛費が54%を占めており、民間部門の宇宙関連支出を上回っている。これは大きな転換点と言える。宇宙は陸、空、海に並ぶ中核的な安全保障領域だという認識が国際的に強まっているのは明らかである。
宇宙分野に大きな影響を及ぼす計画のひとつが、米国の「ゴールデンドーム・フォー・アメリカ」構想である。ゴールデンドームはドナルド・トランプ米大統領が2025年、大々的に打ち出した構想であり、米本土全域を対象にイスラエルの「アイアンドーム」に似たミサイル防衛体制を構築することを目指している。宇宙は、ミサイルの探知、追跡、運動エネルギーを用いた手段による迎撃をしやすくする役割から、この構想の中核に位置づけられる。ホワイトハウスは2027会計年度に、先端研究や各種センサー、迎撃手段を中心にゴールデンドーム向けに175億ドル(約2兆8400億円)の予算を要求している。



