着用により疲労回復をサポートする「リカバリーウェア」。大手アパレルメーカーや低価格ブランドも相次いで参入し、その国内市場規模は2024年の約189億円から2030年には約1,700億円へ拡大すると予測※1されている。
過熱するマーケットにおいて、価格競争とは一線を画すブランドとして独自のポジションを築いているのが、TENTIALの「BAKUNE」だ。「挑戦する人のコンディションに向き合い、ポテンシャルを引き出す」——。この一貫した思想はどこから生まれ、いかにして製品に落とし込まれているのか。同社の哲学と、それを支える研究開発の最前線を追った。
エグゼクティブ、一流ホテルが「BAKUNE」を選ぶ理由
野球日本代表「侍ジャパン」への提供、ANA国際線ファーストクラスでの採用、さらには帝国ホテル 大阪やシックスセンシズ 京都といったラグジュアリーホテルへの導入など、「BAKUNE」の採用実績には、品質に妥協を許さないブランドの名が並ぶ。また、エグゼクティブやプロアスリートが、愛用を公言するなど支持を広げている。
2021年2月の販売スタート以来、累計販売枚数は200万セットを突破し、今なお快進撃を続ける。この数字が意味するのは、BAKUNEが「一着買って終わりのヒット商品」にとどまらない本質的な価値が認められ、ブランドとして定着する段階に入ったという事実だ。
なぜ、厳しい目を持つプロフェッショナルたちからこれほどまでに選ばれるのか。この問いに、TENTIAL代表取締役CEOの中西裕太郎はこう答える。
「私たちはアパレルブランドでも、マーケティング先行で流行を生み出す会社でもありません。『挑戦する人たちの体のコンディションをどうすれば整えられるか』という目的意識でものづくりをしており、その思想と機能性に多くの方が共鳴してくださっていると考えています」
「勝負したい時に舞台に立てなかった」原体験が生んだ事業構想
中西はサッカー少年だった。地元の選抜チームには選ばれるものの、クラブユースからスカウトが掛かる神童ではない。それでも中学生からプロサッカー選手になる夢に本気で向き合い、強豪高校への進学を果たす。さらに努力を重ねる中で実力を伸ばし、「本当にプロになれるかも」というところまで手を伸ばしていた。
ところが正念場を迎えた高校3年の夏に心臓疾患が判明し、入院生活を余儀なくされる。それは競技人生の終わりを意味していた。
「勝負すべきタイミングで、フィールドに立つことができなかった」。この痛烈な原体験が、のちにTENTIALを創業するモチベーションとなる。
その後、ビジネスの世界へ飛び込んだ中西は、心身の酷使を省みずに働く人が多いことに違和感を覚えた。「スポーツをやってきた自分にとって、体を整えることは当たり前でした。しかし社会では違いました」
1994年生まれの中西は、根性論ではなく、エビデンスに基づく練習メニューを重視する環境で育った。競技力を高めるには、練習だけでなく、睡眠や食事、休養など、オフの時間を含めて心身を整えることが欠かせない。
TENTIALでは、コンディショニングを「ライフパフォーマンス向上のために、体調に関わるすべての要因を良い状態に整えること」と定義している。
もともとは、本番で100%の力を発揮するために、24時間365日、体と心を整えるというスポーツの世界の考え方だ。中西は、この考え方はアスリートだけでなく、ビジネスパーソンをはじめとする一般生活者が本来のポテンシャルを発揮するためにも必要ではないかと考えた。この確信が、同社の原点となった。
なかでも着目したのが睡眠だ。多くの人が悩みを抱える一方で、ソリューションが充分ではない。そこで毎日の睡眠時間をコンディショニングの時間へと変えるために生まれたのが、疲労回復パジャマ「BAKUNE」だった。
「大切な1日」のために――「科学的根拠にこだわる」研究開発
「人類のポテンシャルを引き出すために、コンディショニングを実装する」という中西の経営哲学に共鳴し、研究開発を牽引しているのがChief R&D Officer(最高研究開発責任者)の舟山健太だ。東京大学大学院にて薬科学博士を取得し、大手製薬会社で研究に従事した経歴を持つ一方で、サバット(フランス式キックボクシング)の日本代表選手という現役プロアスリートの顔も併せ持つ。
その哲学に共鳴したのは、舟山だけではない。TENTIALのR&Dチームには、大手企業で研究開発に携わってきた熱量の高いメンバーが集い、それぞれの専門知を掛け合わせながら、TENTIAL独自の研究知見を築いている。
R&Dチームの特徴は、「コンディショニング科学に基づいた徹底した研究開発」と「高い水準の臨床試験を通じたエビデンスの蓄積」だ。
BAKUNEの核となる技術は、特殊機能繊維「SELFLAME®」。この繊維は身体から発せられる遠赤外線を吸収し、再び身体に輻射(熱エネルギーを放射)することで血行を促進する。血行促進により筋肉のコリ等の改善、疲労回復が促される仕組みだ。
科学的根拠に基づいて開発されたBAKUNEは、家庭用遠赤外線血行促進衣自主基準をクリアし、一般医療機器として届出を完了している。※2
さらに、臨床試験ではさまざまなデータを収集し、商品に活かす。例えば体温に関しては、体表温度を測定するだけでは不十分とチームは考え、被験者にカプセル型の体温計を服用させ、腸内の深部体温をモニタリングして生理学的データを蓄積している。
「臨床試験やデータ収集は、研究者の熱量次第でいくらでも深掘りできる」と舟山は語る。ここまで徹底する理由は、かつて製薬会社で社長の戦略サポートをした経験上、エグゼクティブたちの「休めない切実な想い」を知っているからだ。
「次の日も、その次の日も重要なミーティングが詰まっていて、絶対に体調を崩せない。そんな状況下で、ある種『救いの手』を求めて私たちの製品を選んでくださる方々がいる。『明日が勝負の日という夜に、BAKUNEが選ばれて恥ずかしくないか?』と考えれば、一切の妥協は許されません」(舟山)
良質な睡眠環境を追求し、研究成果を結集したシリーズ最高峰モデル「BAKUNE Dry Pro」
TENTIALは2026年5月に「シリーズ最高峰モデル」として「BAKUNE Dry Pro」を上市。「良質な睡眠において本当に必要なものは何か」を改めて問いかけることからはじめ、ユーザーやアスリートの声をもとに研究を重ねて生まれた。
TENTIALは、良質な睡眠を睡眠生理学と睡眠環境の両面から深掘り追求していく中で、寝床内環境(温度・湿度)のコントロール、肌あたりや素材の快適性、睡眠中の動きやすさという3つの要素が重要であると捉えた。そして、その各要素に対し、これまで積み重ねた研究成果を落とし込んだのが「BAKUNE Dry Pro」だ。
綿素材比約2.4倍の通気性と約1.3倍の吸放湿性※3が熱と蒸れを効率的に逃がし、接触冷感のナイロン「SELFLAME®」×レーヨンの独自構造でひんやり滑らかな肌触りを実現。さらに寝姿勢を前提とした独自パターン「BAKUNE Motion Design® Pro」が寝返り時の衣服の歪みを91%低減。
「『プロ』の名の通り、現段階の研究成果を追求し尽くした一着です。私たちの商品開発に終わりはありません。寝るためにベストな状態を100とするなら、まだ誰もそこに到達していない。その100に近づけるために何ができるかを問い続け、積み重ねてきた答えのすべてを、一段上の次元で込めたのがBAKUNE Dry Proです」(舟山)
「コンディションの差」が「能力の差」を生む
TENTIALにとってコンディショニングの本質とは何か。舟山は、この説明としてビジネスパーソンが体感する「リアルな差分」を例に挙げる。
「例えばプレゼンテーションの際、体調が万全なら話しながら10秒先の展開まで思考を巡らすことができますが、調子が悪いと今しゃべっていることをつなぐだけで精一杯になってしまう。この差分が、実は大きい」
中西も、社名の由来でもある「ポテンシャルを引き出す」という言葉の真意を解きつつ、次のように語った。
「挑戦というのは、一過性ではなく長く継続していくものです。その中で大事なのは、自分のベースがマイナスにならない方法を確立すること。ポテンシャルの開花は、ある日何か爆発的な武器を手に入れるのではなく、毎日の積み重ねで身に付けるものです」
日々のコンディションの「差分」を埋め、その積み重ねで自分の能力を最大限に持っていく。いかにも本気で競技人生に挑んだ2人らしい考えではあるが、コンディションにこだわる人々が「BAKUNE」を選び続ける理由は、まさにここにあるだろう。
挑戦への実体験と、徹底したエビデンスに基づく「BAKUNE」。今後、国内のみならずグローバル市場のビジネスパーソンたちのパフォーマンスをも変革していくだろう。
※1 日本能率協会総合研究所調べ:https://mdb-biz.jmar.co.jp/20251127
※2 医療機器製造販売届出番号:13B2X10608000001(ABJにて提供しているBAKUNEに関する届出)
※3 通気性はJIS L 1096、吸放湿性はJIS L 1954に基づき、いずれも綿素材と比較した測定値。衣服の歪み低減率はメーカー従来品比。
なかにし・ゆうたろう◎埼玉県出身。高校時代サッカーで全国大会に出場するも、心臓の病気により競技生活を断念。自らは夢を手放さざるを得なかった経験から、「誰にも、自分のポテンシャルを手放してほしくない」という想いを持ち、挑戦を続けるには心身の健康が大切だと痛感する。株式会社リクルートキャリア(現・リクルート)で新規事業開発を経験後、2018年に株式会社TENTIALを創業。「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す。」をミッションに掲げ、心身を整えるコンディショニングを手軽に取り入れられるコンディショニングブランド「TENTIAL」を展開。2025年2月には創業から7年で同社を東京証券取引所グロース市場(325A)へ上場に導いた。
ふなやま・けんた◎東京大学大学院薬科学研究科で神経科学の基礎研究を行い、薬科学博士を取得。武田薬品工業株式会社のR&D部門に入社し、中枢神経疾患の創薬研究のプロジェクトや国内外のアカデミック研究機関との共同研究の起案から研究リードまで行う。2020年にMBAを取得。その後、経営企画部において代表取締役CEOの戦略サポートを経て、2022年5月にTENTIALに参画。2022年11月より経営戦略本部長、2023年8月より執行役員Chief R&D Officer (CRO)に就任。仕事を行いながら、サバット(フランス式キックボクシング)の現役の日本代表選手として活動中。2024年の世界選手権で銅メダル、2019年の世界選手権では銀メダルを獲得。



