サイエンス

2026.07.23 18:00

史上最凶の牙を持つスミロドン、噛む力はイエネコ並みだったと判明

スミロドン(stock.adobe.com)

スミロドン(stock.adobe.com)

かつて南北アメリカ大陸に生息していたサーベルタイガーの一種、スミロドン(学名:Smilodon fatalis)は、最長で18cmほどもある一対の巨大な犬歯を備えていた。そのため、この牙をアイスピックのように獲物の骨に突き刺し、噛み砕いていた、というイメージを持たれることが多い。

こうしたイメージは、これまで1世紀以上にわたって、あらゆる博物館のジオラマや先史時代のドキュメンタリーで広められてきた。しかし、生体力学の専門家がスミロドンの頭骨をモデリングしてあごの筋肉や頭骨の形を復元し、このあごでかんだ場合にテコの原理で生まれる力を計算したところ、はじき出された数字は、驚くほど弱く、頼りないものだった。

2007年に『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されたこの画期的な研究では、スミロドンのあごが生み出す力を分析し、筋肉を一対一で比較した場合、同等なサイズ(体長約2m)のライオンと比べて約3分の1しかないことが判明した。スミロドンの噛む力は、ずっと体の小さなジャガーと同程度だった。さらに、体の大きさの違いを計算に入れると、大型のイエネコと大差ないレベルであったという。スミロドンは、化石記録に残るなかでも最も凶暴な見かけを持つ種だが、そのあごには、実は驚くほど弱い力しかなかったことになる。

あごではなく、前脚の力が強かった

この謎を解明した答えは、他の動物を捕まえて殺す捕食動物が、進化によっていかに形作られるかを示す教訓になっている。つまり、たった一つの武器にすべての力を集中させる必要はない、ということだ。

スミロドンの頭蓋骨や脚に関する複数の研究では、真の武器は前脚だったということが一貫して示されている。スミロドンの前脚は並外れて強靭で、多くの筋肉がついていた。その作りは、現生種の大型ネコ科動物というより、むしろクマの脚に近い。

生物学者たちは、スミロドンがこのような上半身の力を用い、獲物を組み伏せて動けないようにして、力で抑えていたと考えている。彼らの獲物は、巨大な地上性ナマケモノや現在のバイソンの祖先、マンモスの若い個体など、自身の何倍もの大きさのものも多かった。

獲物の動きを封じれば、今度こそあごの出番となるが、この段階に至っても、あごの力で骨を砕いて息の根を止めていた可能性は低いとみられる。現在主流となっている説では、スミロドンは、獲物ののど、あるいは腹の急所を正確に突くひと噛みで、すでに絶体絶命の状態になっている獲物の、生命維持に不可欠な部位を噛み切っていたとみられている。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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