【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

経営・戦略

2026.07.21 10:22

グローバル・マインドセットを養うのに、パスポートは必要ない

Adobe Stock

Adobe Stock

組織が国境や文化、時差を超えて拡大するにつれ、リーダーシップにおける課題は、単に異なる場所にいる人々を管理することよりもはるかに複雑になっている。これからの成功は、文化的違いを乗り越え、インクルージョンを促進し、前提条件やコミュニケーションスタイル、期待値が大きく異なる人々の間に信頼関係を築くリーダーの能力に、ますます依存するようになるだろう。

書籍『Global Mindset: A Guide for Cross-Cultural Leadership(グローバル・マインドセット:異文化リーダーシップのためのガイド)』の共著者であるブライアン・マッキニーは、多くの組織がこの能力を育成し損ねたときの影響を過小評価していると考えている。異文化リーダーシップに関する自身の取り組みを踏まえ、彼はグローバル・マインドセットがもはや単なる競争優位性ではなく、リーダーとして必須の資質であると主張する。

マッキニーの考えでは、グローバル・マインドセットを軽視することの代償は抽象的なものではない。「リーダーがグローバル・マインドセットを養わないと、組織の動きが遅くなるだけでなく、盲目的に進むことになる」と彼は言う。「そのリスクは至る所に現れる。現地の現実にそぐわない戦略、従業員やステークホルダーとの信頼関係を損ねる無神経な意思決定、そして特定の地域や文化、顧客セグメントを密かに排除してしまう“コピペ”されたプレイブックなどだ」。やがて「その盲目さは大きなコストとなって跳ね返ってくる。市場参入の失敗、多様な人材の離職率の上昇、そして自国中心の狭い言語でしか考えられない“自称”グローバル企業という評判などだ」

なぜこれほど多くの組織が、いまだに文化的違いを活用すべき資産ではなく、管理すべきリスクとして扱っているのかという問いに対し、マッキニーは悪意というよりも慣性によるものだと指摘した。「変化への抵抗、コンフォートゾーンにとどまろうとする傾向、あるいは衝突への恐れがあるのだと思う」と彼は語る。「多くの場合、イノベーションよりもリスク管理を優先する時代遅れのフレームワークに行き着く。しかし、それは筋肉のようなもので、負荷をかけるからこそ成長を促すことができるのだ」

マッキニーは、どのような思い込みがリーダーを最もつまずかせるかについて、率直に語っている。「大きな誤解の一つは、優れたリーダーシップは普遍的であり、自国市場でうまくいった方法なら、十分にわかりやすく伝えさえすればどこでも通用すると思い込むことだ」と彼は言う。「現実には、リーダーシップは常に文化というフィルターを通して見られている。階層やリスク、スピード、さらには沈黙に対する前提は、国境を越えれば劇的に変化するのだ」

2つ目の誤解は、その取り組みを単なるマナーと勘違いすることだという。「異文化リーダーシップとは、挨拶や食事、祝祭日を覚えるといった愛嬌やエチケットのことだと思われがちだが、本質的な取り組みは、文化が信頼関係、意思決定、対立、モチベーションをどのように形作っているかを理解することだ」。そして、このことは海外駐在員に限られた話ではないと彼は付け加える。「Zoom会議で3つの時差をつないで仕事をしているリーダーは、本人が意識しているかどうかにかかわらず、すでに異文化リーダーなのだ」

さらに難しい出発点は、そのレンズを自分自身に向けることだとマッキニーは言う。「私たちは組織の内側にいるため、視野が狭くなりがちだ」と彼は言う。「自分自身を客観的に見るには練習が必要だ。他文化について学び、自文化と比較することで、それまで普遍的だと思い込んでいたものの違いに気づき始める。他文化の出身者が、彼らの視点からこちらの文化をどのように説明するかを聞くのは、非常に大きな気づきとなる」

根深い文化や政治的分断を超えて協力することについて、マッキニーはそれをソフトスキルというよりも、意図的なプロセスとして説明する。「二極化が進む世界において、リーダーは架け橋となる存在にならなければならない」と彼は語る。「私はまず、共通の目的に向けて人々を結束させ、その上で決して妥協できない明確なルールを設ける。意見の議論は徹底的に戦わせるが、お互いに敬意を払い、善意を前提とし、目の前の仕事に集中するということだ」。そこから、メンバーが実際にどのように協力し合うかを設計し、「文化的違いが停滞の原因ではなく、より良い問いや優れた解決策を生み出す源泉となるようにする」必要があるという。

彼はまた、リーダーが「カルチャートラップ(文化の罠)」に陥る様子も見てきた。「リーダーは似たようなバックグラウンドや性格を持つ、同じような考え方の人ばかりを採用するという罠に陥ることがある」と彼は言う。それによって「重大な盲点」が生じ、組織内にすでに存在する「隠れた天才」を見落とすことになる。よくある誤解の一つとして、おとなしいチームメンバーに対する評価を挙げた。「一部の東アジア文化でよく見られるように、会議中に静かにしていることや、リーダーの発言を遮るのをためらうことを、文化的違いとして認識するのではなく、関心のなさや能力不足の表れだと誤解してしまうことだ」

職場がグローバル化し、ハイブリッドワークが標準となる中、マッキニーは、リーダーシップを伝える方法だけでなく、リーダーシップのスキルセットそのものを変える必要があると主張する。「リーダーは対面でなくとも相手の声のトーンや窮地を読み取り、文化やチャネルを超えてインクルーシブにコミュニケーションを取り、命令するのではなくコーチングを行い、状況の変化に素早く適応しなければならない」と彼は言う。彼はこれを3つの役割に集約する。「距離を越えて連携を指揮すること、違いを越えてインクルージョンを推進すること、そして人々を燃え尽きさせることなく成果を持続させることだ」。これにより、リーダーシップ開発は単なる研修コースではなく、日常に組み込まれた継続的な実践となるという。なぜなら「すべてのマネージャーがリーダーシップシステムの重要な結節点(ノード)となるため、上位5%の優秀な人材だけを育成する余裕はもはやないからだ」

国や時差をまたいで活躍するリーダーにとって、最も重要な資質を一つ挙げるとしたら何か、という問いにマッキニーは迷わず答えた。「適応力と謙虚さだ」と彼は言う。「私たちが共に仕事をする最も賢く、最も成功しているリーダーたちは、謙虚であり、他者からの指導を素直に受け入れる。こうした高い成果を上げる人々は、まるでスポンジのように貪欲に学ぶのだ」

マッキニーが描く最も鮮明な対比は、単に違いを「容認する」リーダーと、それを実際に「活用する」リーダーの違いだ。「『寛容な』リーダーは、基本的には回避戦略をとっている。彼らは違いを排除することはないが、重要な局面でそれらを積極的に取り入れることもしない」と彼は言う。「彼らは礼儀正しい環境を作るが、必ずしも高いパフォーマンスを発揮する環境を作るわけではない」。対照的に、違いを活用するリーダーは、それを戦略的資産として扱い、意図的に「この議論に参加すべきなのに、参加していないのは誰か」と問いかける。摩擦をただ我慢するのではなく、異なる視点の間を翻訳する能力を構築し、異なる手法を用いる余地を残しながら、成果に対する責任を負わせる。マッキニーはこう表現する。「違いを容認することは、全員を居心地よく保つことだ。違いを活用することは、より良い結果を得るために全員を不可欠な存在にすることなのだ」

パスポートにスタンプがそれほど押されていない若手プロフェッショナルに対して、マッキニーのアドバイスは旅行パンフレットのような話とはまったく無縁だ。「『グローバル』になるために、上海への海外赴任を待つ必要はない。今いる場所から始めればいい」と彼は語る。「自国以外の情報も積極的に取り入れるようにし、オンラインや自分の住む街で異文化の人々と意図的に関係を築き、国境や時差、専門分野を越えて協力する必要があるプロジェクトを探すのだ」。彼の考えでは、本当の評価基準は地理とは一切関係がない。「グローバル・マインドセットとは、身体がどこに移動するかということではなく、あなたの関心、共感、そして日々の意思決定がどこに向かっているかということなのだ」

この再定義は、他のどの話よりもじっくりと噛みしめる価値がある。多くのリーダーは、グローバルなスキルセットについて、組織図が拡大したときや新たな市場を開拓するときなど、いずれ必要になるものだと思い込んでいる。しかしマッキニーの見立てでは、そのテストはすでに静かに始まっている。複数の時差をつないだすべての通話や、誰かが異様に静かにしていたすべての会議の中で、すでに試されているのだ。残された唯一の問いは、その場にいた誰かがそれに気づいていたかどうかだ。

forbes.com 原文

2026年8月号発売中

最新号の購入はこちらから

2026年8月号発売中

最新号の購入はこちらから

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事