――経産省など日本政府は「海外ファンドからの買収リスク」を日本企業に対して指摘しており、危機感を抱いている。どのような防衛策をとっていますか?
宮田: 最大の防御策は「時価総額と成長性を高く維持し続けること」。これに尽きます。PBR(株価純資産倍率)を高く保ち、会社が常に成長し続けている限り、いわゆる「金だけ持っていて成長していない会社」を狙うようなアクティビストや海外ファンドは手を出してきません。圧倒的な強さで成長し続けること自体が、最大の防衛策なのです。
未来への布石。3次元戦略と新たなイノベーション
―― 50周年記念式典の映像(バンテリンドームナゴヤを貸し切って開催)も拝見しましたが、世界中の名だたるトップドクターたちが駆けつけて、祝福のコメントを語っています。このネットワークが御社の強みだと確認できましたが、「次のブレイクスルー」に向けて、どのような戦略を描いていますか?
宮田: 私はこれまで「3次元のストラテジー(成長戦略)」を掲げて会社を引っ張ってきました。
【アサヒインテックの3次元戦略】
1.【診療科を増やす】心臓(循環器)から、脳血管、末梢血管(脚)、腹部血管、消化器へと拡大
2.【地域を増やす】日本からアジア、ヨーロッパ、そしてアメリカを含め120カ国へ拡大
3.【製品を増やす】ガイドワイヤーから始まり、カテーテルや、M&Aを活用してロボットやソフトウェアへ拡大
今や主要な血管の領域すべてにおいて、私たちのガイドワイヤーはほぼ世界ナンバーワンのシェアを獲得しています。そして今、この技術をさらに次のステージへ進めるためのイノベーションを仕込んでいます。
これまでのワイヤーのような物理的に血管の詰まりをこじ開けることだけではなく、「プラズマ」エネルギーを活用することを視野に入れて開発していきます。
もう一つは、AIを用いた「半自動ナビゲーションシステム(ソフトウェア)」への進出です。ドクターが手術をする際に、二次元のX線画像から三次元の心臓の構造を瞬時に判断し、「どちらにワイヤーを進めるべきか」を画面上でナビゲートするソフトです。ハードウェアだけでなくソフトウェアも自社で開発することで、手術時間の劇的な短縮と成功率の向上を目指しています。
―― カテーテル以外の「外科手術ロボット」の分野にも進出されていますが、これもその戦略の一環ですか?
宮田: よく「朝日インテックがなぜ手術ロボットなんて飛び地をやるんだ」と言われますが、実はロボットの「手の駆動部分」には、私たちが得意とする超精密なワイヤーロープが組み込まれているんです。だからこれも私たちのコア技術の延長線上にあります。
私たちが開発して投資している手術支援ロボットは、大ヒットしている『ダヴィンチ』のような執刀医の代わりをするものではなく、「助手の役割(カメラを動かしたり、臓器を固定したりする)」に特化したロボットです。現在、外科医の減少や働き方改革が大きな叫ばれる中、5人でしていた難しい手術が、1〜2名でできるこのロボットは、将来必ず日本、そして世界中で必要とされるコア技術になると確信しています。
―― 最後に、直近で掲げられた新しいスローガンについて教えてください。
宮田:最近、私たちの製品をコピーして安く売る中国メーカーなども出てきていますが、私たちが世界に向けて発信した新しいメッセージがこれです。
"Powering the physicians of tomorrow"(未来の医療を担う医師たちの力になる)
"Imagined by you. Engineered by us."(あなたが描く未来を、私たちの技術で実現する)
「ドクターの皆様にお願いします、臨床現場での課題を教えてください。それを多様な技術で形にするのは、私たち朝日インテックです」という、これまで私たちがやってきた歴史そのものを言葉にしたスローガンです。この「イメージを具現化する力」がある限り、私たちはこれからも世界の医療に貢献し、持続的に成長し続けることができると信じています。

● インタビューを終えて
Forbes JAPANでは「BtoP」というビジネスモデルを定義することがある。「P」とは「プロフェッショナル」のことで、世界のトップクラスのプロに認められた製品は、圧倒的なスピードで世界中の地域に広がり、また、後輩という次世代にも浸透していく、というものだ。
朝日インテックは「P」を束ねるプロデュース能力の高さと、Pが考えるイメージをスピーディーに具現化することで、技術革新を連綿と生み出す仕組みをつくっていると言えるだろう。これが長期にわたって成長を続ける要因ではないだろうか。
もう一つ評価すべきは、日本の製造業の理想的なチャレンジを行なっている点だ。技術力は高いけれど、儲からないと嘆きがちな日本の製造業が進むべき道の一つが、医療や航空宇宙など高度なレベルを要求される異分野への挑戦である。成長産業のこれらの分野に、自分の技術を融合できるか。その成功事例だろう。


