サッカーのワールドカップ(W杯)が旅行への関心を呼び起こしたことは、驚くに値しない。実際、W杯の開幕以来、グーグルでは「モロッコの名物(what is Morocco known for)」というフレーズの検索数が170%以上急増し、「モロッコ行きの格安航空券」という検索ワードも、かつてないほど検索されている。
「W杯の期間中、長年旅行者と密接に仕事をしてきた私や現地のサプライヤーのもとには、まるで初孫が生まれたかのように、お祝いや応援、励ましのメッセージが顧客から次々と届き始めた」と、モロッコを拠点とするラグジュアリー・ヘリテージ・ツアーズ(Luxury Heritage Tours)のオーナー、シハム・ラーミンは語る。「この時期の温かさは信じられないほどだった。これこそがスポーツの力だ。かつて訪れた人々の記憶を呼び覚まし、他の人々には次の休暇の予約を促すきっかけになる」
モロッコは何で知られているのか?
「まるで1つの国の中に10の異なる国があるようだ。それほど土地や自然、伝統が地域によってまったく異なる」とラーミンは言う。「モロッコは、その文化、古代の歴史、おいしい食べ物、おもてなしの心、温かい人々、そして多様な伝統で知られている」。ラーミンによれば、旅行者の興味に合わせてさまざまなアクティビティが用意されている。地元の女性たちから家庭の台所で教わる料理教室をはじめ、農場から洞窟へのエクスカーション、カゴ編み教室、陶芸ワークショップ、伝統的な太鼓作り、モロッコの色彩にインスパイアされたドレス作り、さらにはオリジナルの香水作り教室まで多岐にわたる。
「モロッコへの関心は新たに高まっているが、決して新しい旅行先というわけではない」と、ダイバージェント・トラベル・トリップス(Divergent Travel Trips)の創設者でトラベルアドバイザーのリナ・ストックは語る。「この国には確立された観光ルートがあり、さまざまな予算帯に対応したインフラが整っており、選択肢となるツアーも豊富に用意されている」
ここでは、旅行アドバイザーたちが考えるモロッコの魅力と名物を紹介する。
モロッコは魅力的なショッピングの街
「活気に満ちたスーク、古代のカスバ(城塞)、山でのアクティビティ、そして砂漠の砂丘などがあるモロッコは、休暇を過ごす場所として素晴らしい選択肢だ」と、オードリー・トラベル(Audley Travel)のモロッコ専門家、コリン・ランドリーは言う。マラケシュでは、スークの路地に入り込み、陶芸工房や金属細工職人、カーペット職人、革の染色職人などの作業風景を見て回ることができる。ランドリーは、革製品やカーペット、手工芸品などが手に入るため、買い物好きな人には最高の目的地だと付け加える。メイン広場であるジャマ・エル・フナ広場では、蛇使い、ジャグラー、火吹き男、アクロバットなどに出会える。
「砂漠の交易都市リッサニへの旅では、45分間のラクダ乗りを体験でき、オプションで砂漠での一晩のキャンプに延長することもできる」とランドリーは説明する。彼女は、旅の締めくくりに、古い城塞に囲まれた漁師の町エッサウィラで過ごすことを勧めている。そこには多くのアートギャラリーやカフェがあり、魚を焼く屋台が並び、素晴らしくリラックスした雰囲気が漂っている。また、旧市街(メディナ)は十分に小規模で、個人で自由に散策するのに適している。アクティブな旅行者は、風が強く広大なビーチでウィンドサーフィンのレッスンを受けることもできる。
マラケシュの先にあるモロッコを探索する
「初めてモロッコを訪れる人の多くはマラケシュだけに行くが、そこが素晴らしい場所であることは間違いないものの、それはニューヨークだけに行って米国を見たと言うようなものだ」と、ガールズ・ガイド・トゥ・ザ・ワールド(Girls’ Guide to the World)の創設者、ドニ・ベローは言う。彼女はフェズへの立ち寄りは必須だとした上で、フェズから約64km(40マイル)の場所にあり、紀元前3世紀にまでさかのぼるローマ・ベルベル人都市の遺跡が保存されているユネスコ世界遺産(ボリュビリス遺跡)の訪問を勧めている。ベローはさらにこう付け加える。「ユニークな体験としては、ワイナリーを訪れてみるのもいい。予想に反して、モロッコでは美味しいワイン、特にロゼワインが造られている。エッサウィラへ向かう途中にある『ヴァル・ダルガン(Val d’Argan)』というワイナリーがお気に入りだ」
彼女はまた、サハラ砂漠への旅行も提案しており、それはモロッコで最も思い出深い体験の1つになると指摘する。「移動距離が長いため、砂漠のキャンプに1〜2晩滞在することをお勧めする」とベローは言う。「ラクダに乗り、日の出を眺め、日没後の暗い夜空を見上げながら、ベルベル人の文化やライフスタイルに触れてみてほしい」
知られざるモロッコの穴場スポット
「モロッコには、探検する価値が十分にある、まだあまり知られていない場所がいくつもある」と、アーキペラゴス・トラベル(Archipelagos Travel)のオーナー、ジェン・カランは言う。彼女のおすすめは以下の通りだ。
- アシラー(Asilah)は、タンジェの南の海岸沿いに位置する、芸術的で美しい町。時期を合わせて訪れれば、アシラー・アーツ・フェスティバルに参加でき、地元や海外のアーティストが旧市街(メディナ)の壁に壁画を描くのを手伝うことができる。
- ミルレフト(Mirleft)は、さらに南にある美しい海岸沿いの町で、沿岸のトレイルをハイキングしたり、手つかずの荒々しいビーチを独り占めするように訪れたりできる。都会の喧騒から離れてリラックスするのに最適な美しいスポットだ。
- タフラアウト(Tafraout)は、モロッコのベルベル人の中心地として知られることが多く、アンティ・アトラス地方にある華やかで魅力的な小さな町。この地域はピンクの花崗岩で形成された見事な岩石群で知られ、ハイキングやロッククライミングの拠点となっている。町の建築は驚くほどモダンだが、すべての建物にアマジグ(ベルベル人)の図像やシンボルがあしらわれており、非常に興味深い美学を作り出している。近くには、ベルギー人アーティストによる屋外アートインスタレーション「ペインテッド・ロックス」があり、鮮やかな青やピンクに塗られた岩が並ぶ。さらに、アメルン谷には20以上の古いベルベル人の村や隠れたオアシスが点在している。
- ジズ谷(Ziz Valley)は、美しい川の峡谷であり、峡谷に沿って蛇行する国内最大級のヤシの木林がある。ここでは、峡谷の底をハイキングしながら、風景の中に点在する防衛用に建てられた土造りの大きな集落「クスール(Ksour)」を発見することができる。その多くには今も人々が暮らしており、旅行者は農村部のアマジグ文化を垣間見る貴重な体験ができる。フェズからエルグ・シェビへ向かう多くのルートの中継地としても最適だ。
モロッコの異なる地域を巡る
「モロッコの美しさは、その多様な風景、建築、文化、そして驚くべき職人技にある」と、リヴィゴレート(Revigorate)のCEO、スティーブン・ヴィガーは語る。「数千年にわたり、アマジグ、アラブ、アンダルシア、アフリカ、そしてヨーロッパの文化の影響が、現在のこの国を形成してきた。モロッコを十分に体験するには、少し時間を割いて、それぞれ少しずつ異なる表情を見せるさまざまな地域を探索することをお勧めする」
時間に追われずに探索する余裕があるなら、モロッコはロードトリップに最適な場所の1つだ。刻々と変化する景色や、道中のユニークな名所があるため飽きることがなく、むしろモロッコの真の姿のさまざまな一面を見せてくれる。
「マラケシュからサハラ砂漠へ向かう道路沿いには、多くのアマジグの村が隠れている。最も有名な立ち寄り先は、保存状態の良い土造りの建築群が残るアイト・ベン・ハドゥだ。ここは主要な観光スポットなので、より本格的な体験を求めるなら、テルエットのカスバを訪れることをお勧めする」とヴィガーは言う。「そこは19世紀に建てられた城塞宮殿で、より荒々しい雰囲気が残り、主要な観光ルートから外れている。そのため、かつてここが谷を越えて金やスパイス、塩を運ぶキャラバンの主要な中継地だった頃の様子を、静かに想像することができるだろう。この宮殿に行くには、モロッコで最も過小評価されている場所の1つであるウニラ谷を通過する。観光客は非常に少なく、小さな村や農業、息をのむような景色など、現地の素朴な魅力にあふれている」



