【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

経営・戦略

2026.07.21 07:18

CEOが予算に織り込んでいなかったAIリスク

stock.adobe.com

stock.adobe.com

企業向けAI競争の初期段階を特徴づけていたのは、切迫感だった。取締役会は圧力をかけ、市場はAIによる生産性の向上を織り込み、最大の懸念は取り残されることだった。

経営者たちは、優位に見えるAIプロバイダーと深く提携し、実際に何を目指して構築しているのかという本質的な問いを先送りしながら、迅速な構築を進めることで対応した。

圧力は消え去ってはいないが、その原動力は変化した。AIプラットフォームのDataiku(データイク)とハリス・ポール(The Harris Poll)が共同で実施した調査(*)によると、CEOの65%が投資不足よりも過剰投資を懸念していると回答しており、これは競争初期の姿勢とは対照的である。現在では、AIの成功を測る主要な指標として、売上成長が生産性の向上をわずかに上回っており、取締役会がもはや単なる試験的導入を評価指標として見ていないことを示している。

それに伴い、経営陣個人にかかるリスクも高まっており、CEOの77%が、AI戦略の失敗やAI起因の危機によって、今年は同業他社のCEOが解任されることになるだろうと予測している。

「投資額が増加しているにもかかわらず、AI導入に対するCEOの自信は低下している」と、Dataikuの共同創業者兼CEOであるフロリアン・ドゥエトー(Florian Douetteau)は語る。「企業が投資を重ねるほど、リーダーたちの確信は薄れていく。なぜなら、新しいシステムを導入するたびに、自分たちがまだ管理できていない領域がいかに多いかを思い知らされるからだ」

誰も予算に織り込んでいなかった構造的リスク

多くの組織が、今や解消困難なベンダー関係に縛り付けられている。価格体系は不透明で、消費量は予測不可能、そして機能は変化し続けている。

特定のプロバイダーにすべてを委ねた企業は、その関係が維持されることを前提に、そのプロバイダーの機能に合わせてワークフローを構築した。しかしその後、契約更新の時期が訪れたり、モデルが廃止されたり、競合他社がより優れたサービスをリリースしたりした。ベンダーの選択に見えた決定は、実は構造的な決定だったのだ。ドゥエトーは「これは家具の周囲にセメントを流し込んだ後で、家が完成する前にその家具が4回も移動することを知らされるようなものだ」と表現する。

また、リスクは取引条件だけにとどまらない。AIインフラが地政学的にきわめて機微なものになるにつれ、アクセス権は規制や輸出管理、あるいはベンダー関係自体を超えた政府の介入によって左右される可能性がある。契約によって価格やサービスレベル、使用権を規定することはできても、誰がモデルにアクセスできるか、どこでどのような条件下で使用できるかを変更するような政策決定から企業を完全に保護することはできない。

CEOの4分の3以上(76%)が、少数のAIベンダーへの依存によって、自社が業務上または戦略上のリスクに過度にさらされていると回答しており、67%が過去1年間にCIO(最高情報責任者)やその他のチームメンバーが行ったAIベンダーに関する決定に疑問を呈したり、異を唱えたりしている。こうした緊張関係の根底では、統合の負担が増大している。Dataikuとモーニング・コンサルト(Morning Consult)が共同で実施した調査によると、IT意思決定者の74%が、断片化したAIツールがスケールアップの大きな障害になっていると回答している。

AIが企業全体に普及するにつれ、AIの方向性を決定づける判断はさまざまなチーム、ベンダー、システムに分散していった。その一方で、説明責任はCEOに課されたままである。ドゥエトーは、自身の調査データに示された明白なギャップを指摘する。CEOの70%がAI戦略の所有権を主張しているにもかかわらず、日々の意思決定に関与しているのはわずか6%にすぎないのだ。「このギャップこそが依存関係を蓄積させる原因だ」と彼は言う。「なぜなら、全体像を把握すべき人物が、その全体像が形作られていく過程を一度も見ていないからだ」

解決策:設計段階からAIの柔軟性を確保し、主導権を社内に維持する

完璧なベンダーを追い求める無駄な努力をするよりも、ベンダー、モデル、経済状況が変化し続けるなかで適応力を維持することの方が有益であると、CEOたちは気づき始めている。これにより、単にライセンスを供与された技術だけでなく、ビジネスを通じて得られた知見を社内に留めることができる。

特定のベンダーとの関係においては、そのベンダーが許可する期間内しか機能を利用できない。しかし、個々のプロバイダーの上位にオーケストレーション・レイヤー(複数のシステムやモデルを統合・制御する層)を構築すれば、異なる価値が得られる。その下にあるワークフローを再構築することなくモデルを自由に入れ替えることが可能になり、システムに組み込まれたロジックやガバナンス、組織としての知識を企業の管理下に維持することができる。

「モデルやシステムの上位にあるレイヤーこそが、企業がベンダーを追加し、モデルを入れ替え、新たなデータソースを接続し、ガバナンスやそれまでに完了した成果を維持することを可能にする」とドゥエトーは言う。「Dataikuは、そのレイヤーになるために構築した」

Dataikuは、ガバナンスが機能するAI環境であり、チームがすでに使用しているさまざまなベンダー、モデル、システムを横断してAIを構築、展開、適応させるための統合された場所を提供する。同時に、管理権限とトレーサビリティ(追跡可能性)も維持される。

この課題を正しく解決することの意義は、業務効率化をはるかに超える。CEOの81%が、自身のAIに関する決定がすでに、自らが残す長期的なレガシー(遺産)を形作り、確固たるものにしていると回答しているからだ。この時期を乗り越えて最も強くなって現れる企業は、必ずしも最も速く動いた企業ではない。市場の推移に合わせて進化できるほど柔軟で、1年後にもそのシステムが何を行っているかを誰もが理解できるほど透明性の高いシステムを構築した企業である。

「私がすべてのCEOに投げかけたい質問は、絞り込んだものだ」とドゥエトーは言う。「自社の意思決定プロセスのどの部分を、自らが管理する稼働システムへと移行させたか。そして、それらのシステムが何を行っているかを、規制当局や自分自身に対して説明できるだろうか」

この時代を勝ち抜く企業は、単に柔軟性を維持した企業にとどまらない。AIが依存する意思決定、ガバナンス、そしてワークフローを、確実に自社の管理下に留め続けた企業である。

本稿の背景にある調査結果の詳細については、Global AI Confessions Report: CEO Edition(グローバルAI告白レポート:CEO編)を参照されたい。

*調査は、Dataikuの委託によりハリス・ポール(The Harris Poll)が2026年2〜3月にオンラインで実施した。対象は、米国、英国、フランス、ドイツ、UAE、日本、韓国、シンガポールに所在する、年間売上高5億ドル(約812億円)以上の企業のCEO 900人である。

forbes.com 原文

2026年8月号発売中

最新号の購入はこちらから

2026年8月号発売中

最新号の購入はこちらから

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事