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経営・戦略

2026.07.21 07:12

決断が速い経営陣ほど、コストの高い決定を下してしまう理由

stock.adobe.com

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前四半期、ある経営陣が事業部門の売却について90分以内に結論を出さなければならない場面に、私は同席した。彼らはわずか28分で合意に達した。しかし翌朝までに、7人のメンバーのうち3人が、会議室では口にしなかった懸念事項をメールでCEOに伝えてきた。2週間後、その決定は白紙に戻され、手戻りに伴うコストは、当初の決定によって節約できるはずだった金額を上回ってしまった。

多くの上級幹部チームでは、意思決定の速さが過大評価されている。6大陸で30年にわたり経営幹部をコーチングしてきた経験から、私が目にする最も高くつくパターンは、早すぎる決着である。チームは本当の問いが浮かび上がる前に合意に達し、その代償は後になって、やり直し、エンゲージメントの低下、誰も予見していなかった二次的な影響として現れる。下流工程でのやり直しは、意思決定プロセスが初期段階で破綻していることを示す最も明確な指標の1つである。

いま、AIがこの問題を加速させている。89カ国の9000人超のリーダーを対象にしたDeloitteの「2026 Global Human Capital Trends」調査では、「経営幹部の60%が現在、意思決定の支援にAIを日常的に利用している」ことが明らかになった。2027年までに、Gartnerは「ビジネス上の意思決定の半分がAIエージェントによって拡張または自動化される」と予測している。また、1万4000人超のプロフェッショナルを対象にしたOracleの2023年調査「The Decision Dilemma」では、72%がデータ量の多さによって何の意思決定もできなくなったことがあると回答し、リーダーの70%が自分の代わりにロボットに意思決定してほしいと答えた。

私たちが企業クライアントに導入しているGenerative Operating Systemでは、これを「パラドキシカル・キャパシティ」と呼ばれる測定可能な能力として扱う。これは、より良い選択肢が現れるまで、相反する2つの真実を視野にとどめておく能力である。

見極めるべき5つのパターン

経営陣がその能力を築いているのか、それとも速さがひそかに質を犠牲にしているのかを見極めるために、評価すべき5つのパターンを紹介する。

1. 最も強い異論を持つ人が発言する前に、その場が合意に達する

静かな足並みの一致が、本当の合意であることはまれだ。ハーバード大学のAmy Edmondsonはこの点を記録している。異論がないことは、合意ではなく抑圧である場合が多い。強引な決着によるやり直しは、組織にとって、当初の決定で削減するはずだった額を上回るコストになり得る。

有効な手順がある。重要な意思決定を締めくくる前に、その場で最も職位の高い人物が「私たちが決める前に、まだ言っておくべきことは何か」と尋ねる。そして少なくとも30秒、沈黙して待つ。その間の居心地の悪さこそ、この規律が機能している証拠である。

2. 二者択一が議論の枠組みとなり、誰もそれに異を唱えない

「この市場から撤退するのか、それとも投資を強化するのか」「いまリストラするのか、それとももう1四半期待つのか」。経営幹部が集まる会議に持ち込まれる二者択一のほとんどは、検証を待っている偽の選択肢であることに、私は気づいた。

重大な会議において最も価値のある貢献は、わずか15秒間の次の問いかけであることが多い。「これは本当に2つのうちのどちらかを選ぶ問題なのか。それとも、私たちが探すのをやめてしまった第3の選択肢があるのではないか」。この習慣を築いたチームは、4四半期のサイクルを通じて意思決定の撤回が少なくなる傾向がある。

AかBかという選択が、本当の問いであることはまれだ。ほぼ常に、本当の問いは、それをA対Bのように感じさせている制約のほうにある。

3. 上級リーダーが不快感を終わらせるために「とにかく決めよう」と言う

この言葉は、私が追跡している中で最も信頼性の高いパターンの1つである。経営陣の場における不快感は、本当の問いが浮上したことを示している場合が多い。それをあまりに早く打ち切れば、その場がまさに見つけようとしていた答えを手放すことになる。

上級幹部チームで「とにかく決めよう」という言葉が出たら、「ここでもう一往復議論することで、何を失うのか」と尋ねるとよい。答えはほとんどの場合、その場が考えているより小さい。疲労や焦りから下された決定は、最悪のタイミングで戻ってくる傾向がある。

4. 全員が発言する前に、CEOが議論を締めくくる

健全な経営陣では、重要な意思決定のすべてに、上級幹部の全員が声を届ける。不健全な経営陣では、CEOが最初に発言し、残りのメンバーはCEOのトーンに合わせて調整する。その結果、うなずく頭が並び、CEOはチームが本当に足並みをそろえていると心から信じることになる。

解決策は構造的なものだ。重要な意思決定の会話では、CEOが3番目に発言するという規範を設ける。より若手の2人が先に発言する。そのうえで、1四半期にわたり意思決定の質と持続性がどう変わるかを追跡する。この実験を行った多くのCEOは、チームがどれほど多くの知見を控えていたかに驚く。

5. その場で下した決定が、その後メールで蒸し返される

同じ決定が会議をまたいで繰り返し戻ってくる場合、あるいは会議が終わった後にメールで懸念が表面化する場合、そのチームは初期段階で失敗している。本当の問いに答える前に、決着が強いられたのだ。

4四半期のサイクルで意思決定のやり直しを追跡するとよい。私の経験では、健全な経営陣が重要な意思決定を再検討する割合は10%未満である。緊張をあまりに早く解消するチームでは、その割合は20%から30%程度になる。その差が、早すぎる決着のコストであり、それは複利的に積み上がる。

これらのパターンが意味するもの

これらを合わせると、決断力と質を取り違えたチームの姿が浮かび上がる。AIはそのギャップを埋めない。ツールは、それをうまく使いこなす能力よりも速く拡大している。そしてそのギャップは、Deloitteが文化的負債と呼ぶものを蓄積させている。これは、AIの拡大速度に説明責任の構造が追いつけないことで、組織が負うコストである。

パラドキシカル・キャパシティは、ソフトウェアのアップデートではない。プレッシャーの下で私が最も信頼するリーダーたちは、難しい問いにもう一往復向き合い続ける規律には、それを打ち切る快適さを上回る価値があることを学んでいる。それでも、決定を下すのは、あくまでその場にいる人間なのだ。

forbes.com 原文

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