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2026.07.20 13:14

AI時代のホテル戦略──ヒルトンCMOが語る信頼とロイヤルティの未来

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何十年もの間、旅行マーケティングは極めて予測可能な経路をたどってきた。消費者は旅を夢見て、航空券を検索し、ホテルを比較し、最終的に予約する。

そのファネルは完璧ではなかったが、認識しやすいものだった。そのモデルが急速に変化している。

人工知能(AI)は、消費者が旅行を発見し、計画し、予約する方法を再定義し始めている。同時に、コンサート、スポーツイベント、フェスティバル、食、文化、一生に一度の瞬間といった「体験」が、そもそも人々が旅に出る最大の理由になりつつある。ヒルトン(Hilton)にとって、これは機会と課題の両方をもたらす。旅への入り口が、もはや従来の検索エンジンや旅行サイト、直接予約の経路ではなくなるかもしれないなかで、いかにして信頼される旅行ブランドであり続けるかという課題だ。

ヒルトンのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)であるマーク・ワインスタインは、AIを単なるマーケティングツール以上のものと捉えている。彼はそれを、新たなエコシステムの始まりと見ているのだ。

AIはまだ極めて初期の段階にある

ワインスタインは、AIをめぐる議論は成熟してきたと考えている。業界は、AIが重要かどうかを議論する段階から、AIがどのようにビジネスを変革し、効率を高め、顧客エンゲージメントを再構築できるかを問う段階へ移行した。

「以前は『本当に必要なものなのか』と積極的に抵抗したり反発したりする段階だったが、今ではその影響について議論するようになっている」とワインスタインは語る。

しかし彼は、議論の多くがいまだ狭すぎることに警鐘を鳴らす。生成AIが最も注目を集めている一方で、最終的に消費者に代わって行動するシステムである「エージェンティックAI(自律型AI)」がもたらす広範な影響については、まだ明らかになり始めたばかりだからだ。

「マーケターとして、少なくとも私のキャリアの残りの期間は、2つの異なるマーケティングミッションが存在する世界になるだろうと考えている」とワインスタインは言う。「ひとつは人間に向けたマーケティング、もうひとつは(AI)エージェントに向けたマーケティングだ」

これは旅行ブランドにとって大きな転換である。かつてブランドは消費者を直接説得しなければならなかった。将来的には、消費者が意思決定を行うのを支援するAIシステムにも影響を与える必要があるかもしれない。

その懸念されるリスクは、AIが旅行の意思決定を「価格」「立地」「空室状況」といった極めて合理的でコモディティ化された変数へと還元してしまうことだ。それは便利かもしれないが、人々がなぜある特定のホテルブランドを選ぶのかという理由を十分には捉えきれない。

ワインスタインが言うように、AIは「知的なのではなく、単にパターンを見つけているだけ」だ。もしAIが、旅行の意思決定は近さと価格だけに基づいていると判断してしまえば、ブランドはその価値を担保する感情的かつ信頼ベースの側面を失うことになる。

信頼は薄れるどころか、より重要になる

AIが主導する旅行の世界において、信頼は今日よりもさらに重要になる可能性がある。

消費者はインスピレーションを得るため、あるいは計画や比較のためにAIツールを使うかもしれないが、ワインスタインは、ほとんどの人がまだ旅行の意思決定のすべてをAIに委ねる準備はできていないと考えている。彼らはAIに旅程の作成や選択肢の絞り込み、オプションの検索を手伝ってもらうかもしれないが、最終的な決定はやはり人間が下したいのだ。

これは、実績あるブランドに重要な役割をもたらす。

ヒルトンの課題は、AIによる探索結果に表示されることだけでなく、ブランドが持つ意味が正しく伝わるようにすることだ。AIエージェントが選択肢を評価する際、旅行者が機能的な変数だけで意思決定をしているわけではないことを理解させる必要がある。ロイヤルティ、過去の経験、ブランドへの親近感、安全性、認知度、そして信頼が重要なのだ。

「私たちにとって重要なのは、エージェントが世の中にある膨大な情報群(コーパス)を見るとき、意思決定を極めて合理的なものだけに絞り込まないようにすることだ」とワインスタインは言う。「非合理的な要素も意思決定の一部になる。それは、人々が日々の生活の中でブランドに対して抱いている親近感だ」

この考え方は、誤った判断の代償が大きい旅行において特に重要である。消費者はリスクの低いカテゴリーであれば、未知の商品を試してみるかもしれない。だが家族旅行、出張、海外滞在は別である。

ホテルは単なる部屋ではない。それは旅の約束事の一部なのだ。

非線形化する旅行ファネル

もうひとつの大きな変化は、旅行計画が非線形化していることだ。

歴史的に、消費者はまず交通手段から始めることが多かった。航空券を予約し、それからホテルを探し、その周りに旅行の残りの要素を構築していった。現在では、より多くの消費者が体験からスタートしている。

彼らはまず、サッカーのチケット、コンサートの座席、F1へのアクセス、フードフェスティバル、洞窟ツアー、文化的なイベント、あるいは限定イベントなどを求める。その希少な体験が確保されて初めて、旅の他の部分がその周りに構築される。

ワインスタインは、これを合理的かつ感情的なシフトと表現する。

「最も希少なアイテムこそ、最初に確保しなければならないものだ」と彼は言う。「20年前であれば、それは航空券だった。今の問題は『希望するコンサートチケットが手に入るか? 行きたいF1のチケットが手に入るか? サッカーのチケットが手に入るか?』ということだ」

これはホテルブランドの役割を変化させる。ホテルはもはや最初の決定事項ではないかもしれないが、旅行が成功するかどうかの中心であり続ける。消費者が特定のイベントや体験に参加することを強く望んでいる場合、彼らは少し離れた場所に滞在したり、交通手段を調整したり、異なる宿泊形態を検討したりすることを厭わない。

旅は体験によって支えられる。ホテルはその体験を可能にする役割を担う。

体験エコノミーが再形成する旅行

体験重視の旅行の台頭は、単なるパンデミック後のトレンドではない。それは消費者行動のより広範な変化を反映している。

人々は、思い出やストーリー、社会的価値(ソーシャルカレンシー)を生み出す旅行をますます求めるようになっている。友人がすでに投稿したような象徴的な瞬間を求める人もいれば、自分の周囲の誰も経験したことのない珍しい体験を求める人もいる。

ワインスタインによると、消費者は「友人がみんな体験したような、インスタ映えして追体験できる瞬間、あるいは家族や周囲の誰もこれまでに経験したことのない、前代未聞の体験」を求めているという。

これは、滞在の重要性を見失うことなく、部屋の枠を超えてサービスを提供できるホスピタリティブランドにとっての好機となる。ヒルトンがホテル企業以外の何かになる必要はない。しかし、ホテルがより大きな旅の一部であることを理解する必要はある。

滞在と体験は、ますます密接に絡み合っている。

AIの世界でもロイヤルティは依然として重要

旅行がより感情的になり、AIが活用されるようになっても、ワインスタインはロイヤルティ(顧客忠誠度)が依然として中心的な役割を果たすと考えている。

「ヒルトン・オナーズ(Hilton Honors)」は単にポイントを貯めるだけのものではない。それは価値、認知、安心感に関わるものだ。ポイントを獲得したり、無料宿泊に交換したりするという合理的な特典は依然として重要だ。しかし、感情的な特典も同様に強力かもしれない。

「大切な旅行で、子供たちの前で部屋をアップグレードしてもらい、父親や母親がヒーローになること以上に素晴らしいことはない」とワインスタインは言う。

そこにおいて、ロイヤルティは単なる取引以上のものになる。それは旅の感情的な構造の一部となる。会員は価値を求めるが、それと同時に自分が認知され、認められ、配慮されていると感じることも望んでいるのだ。

AIが主導する市場において、ロイヤルティプログラムは、ブランドが選好や信頼を示す手がかりにもなり得る。消費者がヒルトンとの関係を築いている場合、AIツールが将来の旅行の選択肢を評価する際、その関係性が重要視されるべきだ。

人間とマシンの両方に向けたマーケティング

旅行マーケターにとって、次の時代にはより幅広い戦略(プレイブック)が必要になる。

ブランドには依然としてストーリーテリング、コンテンツ、パートナーシップ、クリエイター、そして感情的な共鳴が必要だ。しかし同時に、その価値がマシン(機械)に解読可能であることも確認しなければならない。つまり、ソーシャルプラットフォーム、レビュー、クリエイター、Reddit、TikTok、Pinterest、その他のシグナルといった、インターネットのより広範なエコシステムがさらに重要になることを意味する。

ワインスタインは、ヒルトンはもはや「入り口」をコントロールできていると思い込むことはできないと指摘する。

「ファネルは消え去った」と彼は言う。「どこから入り口が現れるかを自分たちでコントロールできると想定することは、もはや不可能なのだ」

これこそが最も重要な示唆かもしれない。AIがブランドの必要性をなくすことはない。むしろ、ブランドがより明確で、より信頼され、より感情的に結びつきやすい存在になるためのハードルを上げる可能性が高い。

ヒルトンにとって、旅行マーケティングの未来は単にテクノロジーの向上だけを意味するのではない。人間とAIエージェントの双方が旅に影響を与える世界において、信頼、ロイヤルティ、そしてブランドの意味が確実に受け継がれていくようにすることなのだ。

ホテルでの滞在は依然として重要だ。しかし、旅行者がどのようにそこにたどり着き、なぜある特定のブランドを他よりも選ぶのかというプロセスは、今まさに書き換えられようとしている。

forbes.com 原文

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