サイエンス

2026.08.22 18:00

喉仏は「思春期の化石」男性の声が低くなる驚きのメカニズム

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ヒトの男性の首を前から見ると、鎖骨のすぐ上あたりに硬い隆起があるのがわかる。一方、チンパンジーやゴリラ、あるいはほとんどの女性では、そのような隆起はほとんど見られない。

生物学者にとって、これは説明しにくい特徴だ。ヒトの喉にある他のほぼすべての特徴は、霊長類間で共通する部分が非常に多いにもかかわらず、この一つの構造だけが、ある性において、しかも主に思春期以降に際立って目立つようになる。この構造は、「喉仏(喉頭隆起:英語ではAdam’s Apple)」と呼ばれる。

この隆起自体は、独立した臓器ではない。これは甲状軟骨の前縁だ。甲状軟骨とは、喉頭(喉の音声器官)を包み込んで保護する盾のような形状をした組織のことだ。子どもでは、男女を問わず、この軟骨は浅い角度に位置しており、ほとんど目立たない。思春期の男子は、男性ホルモンであるテストステロンの増加により、この軟骨が前方に成長して、より鋭い角度で接合するようになると同時に、そのすぐ後ろにある声帯や声道も伸長する。

これは、男性特有の、思春期に始まる変化であり、1999年に『Journal of the Acoustical Society of America』に掲載された研究で詳述されている。目に見える「リンゴ」のような部分は、実際には、皮膚に鋭い角度で押し付けられている軟骨の継ぎ目に過ぎない。

喉仏と「声の性的二型」

より興味深い問いは、そもそもなぜテストステロンが喉の形を変えるのか、という点だ。その最有力な説明は、音響学的なものだ。声帯が長く太くなると、声の振動が緩やかになるため、思春期を迎えた男子の声はおよそ1オクターブ低くなる。それに対して、女子の声はわずかに低くなる程度だ。

声の性的二型、すなわち声の高さにおける性差を研究する進化生物学者は、一般的にこれを、性的選択の一例と捉えている。つまりこの形質は、生存よりも、配偶者やライバルに与える影響によって形作られているという意味だ。

2016年に『Proceedings of the Royal Society B』に掲載された研究によると、こうした声の高さの性的二型は、交尾競争が激しい霊長類種ほど顕著であり、ヒトは他のどの類人猿よりもその傾向が強いことが明らかになった。

低い声の持ち主は、文化を問わず、体格がより大きく、支配的な人物と受け取られる傾向がある。聞き手は、現実と一致しているかどうかにかかわらず、声の高さだけで、年齢や体格、さらには支配順位までも判断するのだ。

しかし、声の高さだけでは、体の大きさを判断する指標としてかなり大雑把だ。小柄な男性でも声が低い人はたくさんいるし、大柄でも声が低くない人も大勢いる。そこで一部の研究者は、この説明をさらに一歩推し進め、より重要な変化は音程そのものではなく、音が喉や口を通過する際に生じる共鳴周波数である「フォルマント」にあると主張している。喉頭や発声経路が長くなるにつれて、このフォルマントは低くなる。

2022年に『Frontiers in Psychology』に掲載されたレビュー論文によると、実際に、音の高さよりもフォルマントの方が、体格の予測因子として信頼性が高いことが明らかになった。喉頭が長く、位置が低いと、共鳴の間隔が変化し、話者の声が、実際の体格から予測されるよりも大きく聞こえるようになる。この見解によれば、喉仏は実際には音の高さとは関係がない。それは、男性の声を実物よりも大きく聞こえるようにするために、声道の長さが伸びたことの副産物なのだ。

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翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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