サイエンス

2026.08.22 18:00

喉仏は「思春期の化石」男性の声が低くなる驚きのメカニズム

stock.adobe.com

喉仏は「思春期の化石」

これについては明確にしておくべき点があるが、「体の大きさを誇張する」という説に、すべての生物学者が完全に納得しているわけではない。2018年に『Trends in Ecology & Evolution』に掲載された論文は、男性の声の高さと、実際の体の大きさや筋力との関連性は弱いことを指摘している。そして、聞き手たちは低い音程を、それが信頼できる手がかりであるかどうかにかかわらず、「(体が)大きい」と解釈するという、古くからの知覚的バイアスが利用されているのではないかと論じている。

advertisement

これとは対立する、以前から提唱されている説によると、喉頭が大きくなって声が低くなるのは単に、筋肉量を増やして肩幅を広げるのと同じ男性ホルモンの急増による副産物であり、それ自体に独立したシグナル機能はないとしている。この説によれば、思春期にはテストステロンが組織を広範囲にわたって再構築するが、喉もその全体的影響を受けているのに過ぎず、それ自体が自然選択の対象の一つとは言えないことになる。

率直に言えば、これら両方のメカニズムが同時に働いている可能性があるということだ。一般的な成長効果が基盤となり、その上に重なり合ったシグナルが、後に有用であることが証明されたために、優先されるようになったというところだろう。

また、よくある誤解についても、正しておく方がいいだろう。女性にもこの軟骨はある。甲状軟骨は誰にでもあり、喉頭を守っている。そして、思春期になると声帯が伸びるため、誰の声も多少低くなる。その差は、有無ではなく程度の問題だ。

advertisement

女性ホルモンのエストロゲンが甲状軟骨の角度や声帯の長さに与える変化は、テストステロンに比べるとはるかに小さい。そのため、女性における喉仏の特徴は、完全に消えてしまうわけではないが、目立たないサイズにとどまる。また、特定の体質や首の構造、体脂肪のつき方などの個人差によって、その目立ち具合は、性別を問わず、人によって異なることがある。

喉仏が教えることは、軟骨それ自体というよりは、それが表すものだ。つまり、「見られる」ためではなく、主に「聴かれる」ために存在しているホルモンのシグナルが、目に見える恒久的な記録として刻み込まれたものだということだ。人が話し終えた瞬間、声の高さは消え去るが、喉の構造は変わらない。その意味で、首にある隆起は、独自の役割を持つ器官というよりは、思春期の化石のようなものだ。体が数年間、実際よりも大きな声を出そうと必死だったという証拠の痕跡なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=藤原聡美/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事