現在ロサンゼルスで生活していると、2028年のオリンピックに向けた準備が本格化していることを実感せざるを得ない。世界中から選手やメディア、観光客を迎える準備が進むなか、空港の整備、会場の改修、交通プロジェクト、住宅計画などが着実に進行している。これらの計画が本格的に始動したのとほぼ同じ時期に、筆者の会社は最新の消費者意識調査を終えようとしていた。今回の調査では、全米を代表する1300人の回答者を対象にアンケートを実施したほか、私たちが「ミューラリング(muraling)」と呼ぶ、既存の確立された研究を精査する手法を取り入れた。
私たちの調査から、人々は支出と意思決定の両面においてより慎重になっていることが明らかになった。米国人の73%が、不要不急の支出を削減していると回答した。また、42%が人生の大きなイベントを延期またはキャンセルしたと報告している。企業が自社のビジネス活動についてオープンかつ誠実であると信じている人はわずか29%で、企業が消費者に対して透明性を保っていると信じている人は28%にとどまった。
世界的大規模イベントを巡る議論の変化
オリンピックの開催都市は、伝統的にこの大会を経済的機会、市民の誇り、そして国際的なつながりを生み出すものとして位置づけてきた。スポンサーが巨額の投資を行うのは、オリンピックが膨大な観客を引きつけ、世界的な注目を集めるからである。
しかし近年、FIFAワールドカップや冬季オリンピックなどの主要なスポーツイベントでは、競技そのものと並んで、世間でより幅広い議論が交わされるようになっている。報道では、チケットの価格、セキュリティ、渡航制限、交通輸送能力、および大規模な国際イベントを開催することの費用負担などに対する疑問が頻繁に取り上げられる。実際、多くの開催都市は、大会に伴う混乱や多額の出費により、閉幕後に「二日酔い(後遺症)」を経験している。こうした議論は競技への関心を削ぐものではないが、人々の大会の受け止め方に確実に影響を与えている。
多くの家庭にとって、主要なスポーツイベントへの参加は今や、旅行や住宅リフォームといった他の選択的支出と同様に、限られた予算の優先順位を争う対象となっている。ネット上のレビューや推奨、企業の主張に不信感を持つ消費者は、大規模イベントに関連する機関、運営団体、組織に対しても同じように厳しい目を向ける傾向がある。
変化するイベントへの「参加」の定義
スポーツファンは依然として大規模なイベントに深く関わっているが、その関わり方は現地に足を運ぶこと以外にも多様化している。
私たちがSnapchat(スナップチャット)と共同で行った調査によると、毎月2億1500万人以上のスナップチャット利用者がスポーツコンテンツに関わっており、毎日の利用者の85%が今年のワールドカップを観戦またはチェックする予定であると回答した。多くのファンは、大会を通じて選手、クリエイター、チームをフォローしており、そこでの会話、コンテンツの共有、オンラインコミュニティが体験そのものの一部となっている。
今日のワールドカップを追いかけるファンは、1日のなかで試合の生中継、ハイライト映像、クリエイターによる解説、選手のインタビュー、そして友人との会話の間を絶えず行き来するかもしれない。イベントは、実際の競技そのものをはるかに超えて広がっているのだ。
デジタルによる参加の拡大は、多くの主要なスポーツイベントを現地で観戦するためのコスト上昇と時期が重なっている。人々はすべての試合を追い、すべてのストーリーを把握し、友人たちと何時間も大会について議論しながらも、現地に足を運ぶことなどまったく考えないかもしれない。多くのファンにとって、「参加」とは会場の中ではなく、メディア、クリエイター、グループチャット、ソーシャルプラットフォームを通じて行われるものなのだ。
空席をもたらしたワールドカップのチケット価格の高騰や、ロサンゼルスの住民に2028年の大会チケットを手頃な価格で提供するという約束が反故にされたことは、この現状を浮き彫りにした。こうした出来事は、こうした組織が国の誇りやコミュニティ、文化ではなく、単に金儲けにしか関心がないという印象を人々に与えかねない。
オリンピックと「より慎重な」一般大衆
2028年のロサンゼルスオリンピックは、長年にわたるインフレ、政治的分断、急速な技術変化、そして多くの制度や機関に対する信頼低下ののちに開催される。また、エンターテインメント、メディア、大規模なパブリックイベントを中心に構成された都市で開催されることになる。
大会が開催される頃には、多くの米国人は自身の支出習慣を調整し、情報の信憑性を疑い、どの組織を信頼すべきかを再評価するようになってから、ほぼ10年が経過していることになる。
オリンピックは多くの場合、それが開催される時代そのものを反映する。1984年のロサンゼルス大会は、2012年のロンドン大会や2021年の東京大会とは異なる経済環境を反映していた。2028年のロサンゼルス大会は、多くの消費者が支出に対してより慎重になり、情報を疑い、信頼の置き場をより厳選する時代に開催されることになる。
このような広範な変化は、買い物や旅行からメディア消費、エンターテインメントに至るまで、日常の意思決定においてすでに顕著に現れている。オリンピックがロサンゼルスで開催されるとき、人々が「参加」「アクセス」「価値」をどのように捉えるかに、これらの変化が影響を与える可能性は高い。
これがブランドに意味すること
オリンピックキャンペーンを計画しているブランドにとって、こうした消費者行動の変化は実質的な影響をもたらす。これからの2年間は、消費者の期待がどのように変化しているかを理解し、スポンサーシップやマーケティングプログラムが大会前にどのように受け止められるかをテストする好機となる。
ブランドは今すぐ、以下の対策を進めることで準備を始めることができる。
・キャンペーンの指標と並行して、信頼度や価値認識を追跡する。現在から大会開催までの間に、消費者の心理、信頼、価値への認識は進化し続けるため、メッセージをいつ修正すべきかを判断しやすくなる。
・オリンピック関連のメッセージ発信を早期にテストする。キャンペーンを大規模に展開する前に、どのようなスポンサーシップのメッセージ、パートナーシップ、アクティベーションを消費者が関連性があり価値があると感じるかを評価する。
・身近に感じられる体験を創出する。すべての消費者が現地で観戦するわけではない。デジタル体験、限定コンテンツ、コミュニティベースのアクティベーションは、自宅から参加するファンとブランドが関わる手助けとなる。
・スポンサーシップ以外の価値を示す。消費者は、単にイベントにロゴを掲載するだけでなく、企業がコミュニティ、選手、そしてオリンピック体験全体にどのように貢献しているかをより深く理解したいと考えている。
・認知度と並行して「信頼度」を測定する。認知度は依然として重要であるが、消費者が組織をより注意深く評価するようになるなか、オリンピックのスポンサーシップが信頼、透明性、ブランドの好感度を高めているかを理解することも、同様に価値があることが証明されるかもしれない。
アスリートたちの競い合いは、常に大会の中心にある。2028年までに消費者が定義する「価値」「参加」「信頼」を理解したブランドこそが、閉幕後も長期にわたりオリンピックへの投資を響かせることができる有利な立場に立つだろう。



