私はこれまでに多くの経営幹部と席をともにしてきたが、彼らの多くが従業員の「ロイヤルティ(忠誠心)」を勤続年数で定義している。しかし、変化の加速、絶え間ない混乱、そして従業員の期待の移り変わりにより、勤続年数はコミットメントの指標として不十分なものとなっている。組織が成長するか停滞するかを真に決定づけるのは、在籍期間の長さではなく、一人ひとりが日々どれだけ自発的に力を発揮しているかである。
ロイヤルティは、従業員が毎日行う、目に見えない小さな選択の積み重ねによって形成される。職場で最近自分が行った選択について考えてみてほしい。例えば、あるアイデアを思いついたものの、他者に共有する前にもう少し具体化するまで待とうと判断したかもしれない。あるいは、同僚が自分の役割を超えた助けを必要としているときに、手を差し伸べるべきかどうか迷ったかもしれない。何千人もの従業員が、何百日もの勤務日を通じて行うこれらの目に見えない選択が掛け合わされることで、良い組織は優れた組織へと生まれ変わる。こうした選択が繰り返されることで、義務を超えて貢献しようとする姿勢、すなわち「主体的なロイヤルティ(active loyalty)」が形成されるのだ。
特典を増やすだけでは、主体的なロイヤルティは生まれない
このような自発的なロイヤルティは、単なる勤続年数よりもはるかに価値がある。そして、人々がそうした選択を継続できるようにするために不可欠なのが、そのプラスアルファの努力が認められることだ。日常の業務に「承認」が組み込まれていると、従業員は組織の成功に対して主体的に関与していると実感しやすくなる。O.C.タナーが「グローバルカルチャーレポート2026」のために従業員の要望を調査したところ、承認は従業員の意欲を喚起し、ベストを尽くさせるために不可欠な要素であることがわかった。インスピレーションを得た従業員は、優れた成果を生み出す可能性が高まり、離職する可能性も大幅に低くなる。
ここで、私が支援するリーダーたちからよく受ける質問を紹介しよう。「ロイヤルティが日々の選択によるものであるなら、それをお金で買うことはできるのか」という問いだ。率直な答えは「ノー」である。良かれと思って従業員向けの特典(パークス)に多額の予算を投じながら、エンゲージメントがほとんど向上しない組織は多い。ジムの会員権や食事手当を支給しても、自分が認められていると感じたり、自分の貢献が評価されていると実感したりすることにはつながらないからだ。
特典は実用的なギャップを埋めるものであり、人間的なギャップを埋めるものではない。一方で、承認は異なる作用をもたらす。ある人の仕事が具体的かつ誠実な方法で認められると、心境に変化が生じる。そして、この組織は自分の力を注ぐ価値がある場所だと信じ始める。その信頼こそが、次の課題に対してベストなアイデアを出すか、あるいは自分の力を出し惜しみして、正当に評価してくれる別の場所のために取っておくかを、静かに左右するのだ。
従業員に合わせた「承認」のあり方
私が学んだ重要な事実がある。それは、単に認められるだけでは片手落ちだということだ。ロイヤルティを真に維持するのは、従業員のキャリアや期待、職場におけるアイデンティティの進化に合わせて、その承認がどのように形を変えていくかである。キャリアの初期に心から認められていると感じる要素は、10年後に必要とされるものとは全く異なる。人が成長するにつれて仕事との関係性も変化するため、承認のあり方もそれに合わせて進化しなければならない。
例えば、若手社員は心の中で、常に本質的な問いを投げかけている。「私はここにいていいのだろうか」という問いだ。この段階における承認は、仕事の成果そのものよりも、その人自身に向けられるべきである。彼らはまだ実力を十分に発揮する前の段階であり、自信と、チームの一員として受け入れられているというサインを必要としている。公の場での称賛や励ましは、彼らに所属意識を与える一助となる。
中堅社員は、最も複雑な業務と重い責任を担っているにもかかわらず、成果を出すことが当然視されがちなため、最も承認を受けにくい傾向にある。彼らが求めているのは、自身の仕事が組織に影響を与えていること、その存在に価値があること、そして自分の努力が重要な人物に見守られているという実感である。
最も経験豊富なベテラン社員にとって、問いは自身の存在意義へと変わる。長年にわたり、変化や混乱、経営陣の交代などを乗り越えてきた彼らが聞きたい言葉は、シンプルに「あなたはここで今も価値ある存在だ」ということだ。意見を求められ、責任ある役割を託され、彼らがもたらす継続性が評価されること。それこそが、彼らが望んでいることである。組織がこれを正しく実践できれば、単なる人材の引き留め以上の効果が得られる。日々の組織文化を醸成する、経験豊かな人材の力を得ることができるのだ。
単なる意図から日々の習慣へ
多くの組織において、承認が不十分に終わってしまう原因は、それを継続的な習慣ではなく、一過性のイベントとして扱っている点にある。多くの場合、承認が行われるのは、年末や勤続記念日、あるいは無視できないほど目立つ成果を上げた時だけである。それ以外の期間、人々は懸命に働いているにもかかわらず、評価の言葉をほとんど耳にしない。真のロイヤルティを築くには、リーダーが自身の役割に対する考え方を変える必要がある。単に節目を祝うだけでなく、日々の意義ある瞬間を見逃さないこと。結果だけでなく、努力やその意思を評価すること。そして、一般的なお決まりの言葉ではなく、個人に合わせた言葉で承認を伝えることだ。
リーダーである私たちは、従業員を留まらせるにはどうすればよいかという問いに多くの時間を費やしがちだ。しかし、彼らが在籍している毎日、常にベストを尽くしてもらうにはどうすればよいか、と問い直してみてはどうだろうか。その答えは、組織が何を提供する(与える)かではなく、何を一貫して見ている(気づいている)かにある。なぜなら、一時的ではなく、日々の仕事の安定したリズムの中で自分が心から認められていると実感できれば、他により自分を評価してくれる場所があるのではないかと疑う必要がなくなるからだ。
いかなる福利厚生や制度をも超えて、それこそがロイヤルティが築かれる基盤となるものである。



