環境や社会に配慮する旅行者にとって、カリブ海諸国は難問を突きつける存在になり得る。多くの目的地が、ラグジュアリー観光と、それが地域社会や自然環境にもたらす恩恵とのバランスに苦慮しているからだ。こうした課題に対処すべく、3つの島からなる国家グレナダは近年、市民の暮らしと旅行者の体験の双方を向上させる、新たな観光モデルを築いてきた。グレナダ観光局(GTA)の最高経営責任者(CEO)、ステイシー・リバード氏に、責任ある旅行者がこの地で何を期待できるのかを聞いた。
グレナダが責任ある観光に本腰
リバード氏はまず、ひとつの点を明確にする。グレナダはマスツーリズムの目的地ではない。「私たちが惹きつけているのは、豊かな農業の伝統、活気ある食文化、あるいは地域主導の体験を通じて、意味のあるつながりを求める旅行者です」と同氏は語る。「15を超える滝や保護された熱帯雨林から、世界水準のダイビング、躍動的なフェスティバルカレンダーまで、グレナダには際立った奥行きと多様性、そして強い土地の個性があります」
同国が旅行者を引きつける最大の魅力のひとつは、壮大な自然である。国土の9分の1が保護国立公園として保全されており、周囲には豊かな海洋環境が広がる。そのいずれも厳格に守られている。
「私たちは、Aquanautsと連携した『Roots to Reef』を含むサンゴ礁再生プログラム、マングローブ保護、毎年開催するダイブ&コンサベーション・フェスティバルなど、具体的な保全活動に積極的に投資しています」とリバード氏は言う。こうした要素のすべてが、観光が環境保全に直接的な役割を果たすことを確かなものにしている。
地域社会への恩恵も、グレナダの観光戦略の中核にある。「私たちは地域密着型観光を積極的に推進し、旅行者が地元企業、農家、職人、ガイドと直接関わるようにしています」とリバード氏は語る。「チョコレート農園から料理教室、農園ツアーまで、人気の高い体験の多くは地元が所有・運営し、GTAがすべてプロモーションしています」
スパイスツアーからダイビングまで、グレナダで楽しめること
グレナダの観光コンテンツは、農業をはじめとする伝統に根ざしている。「『スパイスの島』として知られるグレナダでは、ナツメグ、カカオ、その他のスパイスは単なる輸出商品ではなく、人々の日常生活に深く織り込まれています。ナツメグは国旗にも描かれているほどです」とリバード氏は言う。旅行者は現役の農園を歩き、生産者と出会い、収穫に参加し、島の遺産を反映した地産地消の料理を楽しむことができる。シェフ・ケネディのホーム・ホスピタリティ・ガーデンや料理コースのような体験は、旅行者が土地と、その背後にいる人々に直接つながる機会をもたらす。
ウェルネス、サステナビリティ、再生型旅行、より深い文化体験といった島の別の強みを反映させる動きもある。新たな取り組みとしては、世界的に評価されている島の園芸技術を生かした11月のグレナダ・フラワー&ガーデン・フェスティバルのほか、Aquanautsと連携したRoots-to-Reefのように、旅行者がボランツーリズム活動に積極的に参加できる保全主導の体験が挙げられる。
ビーチリゾートや、飛行機で到着してリゾートで寝そべって過ごすだけの旅行に代わる選択肢を促すため、グレナダはヨット、ダイビング観光、アドベンチャー旅行にも投資している。海に関する催しも活発で、1月のグレナダ・セーリング・ウィーク、プティ・マルティニーク・ウィットサンタイド・レガッタ、そして7月の名高いカリアク・レガッタなどがある。カリアク・レガッタは、伝統的な造船と海洋文化遺産をたたえる、カリブ海で最も本格的なセーリングイベントのひとつである。
「同時に、世界初の海中彫刻公園、多様な沈船スポット、10月に毎年開催するダイブ&コンサベーション・フェスティバルのような取り組みを通じて、有数のダイビングデスティネーションとしての地位を強化しています。このフェスティバルは、海洋の専門家と愛好家が集い、私たちの海中生態系を支援し、その魅力を紹介するものです」とリバード氏は語る。水辺以外でも、このデスティネーションはハイキング、リバーチュービング、熱帯雨林探検など、アドベンチャー分野のコンテンツを拡充している。
グレナダを訪れる旅行者はハリケーンを懸念すべきか?
気候変動によってハリケーンなどの異常気象が激甚化するなか、こうした災害が発生しやすい目的地への旅行を懸念する旅行者が増えている。グレナダはカリブ海の南端に位置し、主要なハリケーンベルトの外にあるが、レジリエンス(回復力)は引き続き最優先事項である。
「私たちはインフラを強化し続け、強固な備えに投資し、長期的な観光戦略のあらゆる側面に気候への意識を組み込んでいます」とリバード氏は言う。「2024年のハリケーン・ベリルで最も大きな影響を受けた姉妹島のカリアクとプティ・マルティニークは、この期間を、より強く、より持続可能で、長期的なレジリエンスを高める形で再建する機会として活用してきました」



