「隣の芝生は青く見える」という表現があるが、比喩ではなく実際に「隣の芝生」を羨望する声が米国で上がっている。
サッカーのFIFAワールドカップ(W杯)2026北中米大会では、アメリカンフットボールのプロリーグNFLのスタジアムが試合会場に使われ、このうち19日(日本時間20日早朝)にスペイン対アルゼンチンの決勝戦が行われたニュージャージー州のメットライフ・スタジアム(大会公式名:ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアム)をはじめ、7つの会場でW杯期間中のみピッチの人工芝を天然芝に置き換える措置がとられた。
この動きに対し、米国のフットボール選手――すなわちNFLを筆頭とするアメフトの選手たちは疑問を呈している。
SNSで声を上げたNFL選手たち
NFL選手らは「#WorthTheCost(その費用に見合う価値がある)」とのハッシュタグを使ってSNSで声を上げている。ワシントン・コマンダーズのオフェンシブタックル(OT)、レアミー・タンシルはX(旧ツイッター)に「スタジアムがW杯のために天然芝を整備できるなら、NFL選手のためにも整備できるはずだ。われわれは#WorthTheCostだ」と投稿した。
If stadiums can make grass work for the World Cup, they can make it work for NFL players. We're #WorthTheCost.
— Laremy Tunsil (@KingTunsil78) July 17, 2026
グリーンベイ・パッカーズのラインバッカー(LB)、ザイール・フランクリンも「何もしないことの代償は、選手たちの体で支払われる。天然芝を義務化すべきだ。#WorthTheCost」とポストした。
The cost of doing nothing is paid for by players’ bodies.
— Zaire Franklin (@ZiggySmalls_) July 17, 2026
Make grass mandatory. #WorthTheCost pic.twitter.com/mqNYwNDdj8
一方、元パッカーズのデービッド・バクティアリは、マサチューセッツ州のジレット・スタジアム(大会公式名:ボストン・スタジアム)がW杯用に敷設していた天然芝を撤去した様子を紹介するXの投稿を引用し、「遠回しに、選手の安全など二の次だと言っているようなものではないか @NFL」とNFL公式アカウントにメンションを飛ばした。
Tell me you don’t care about player’s safety, without telling me you don’t care about player’s safety? @NFL https://t.co/pnZSeqTiv8
— David Bakhtiari (@DavidBakhtiari) July 12, 2026
実は、NFL選手会(NFLPA)は5週間前、W杯開幕に際してSNSに次のような投稿をしていた。「W杯のために天然芝のフィールドを一時的に設置するというのは、一部のNFLチームオーナーが、NFL選手のためには決して行おうとしないことをサッカー選手のためには行うという選択だ。もはや、できるできないの問題ではない。技術も、専門知識も、資源も存在する。NFL選手たちが断然支持する質の良い天然芝のフィールドを設置することはできる」
Tomorrow, the World Cup kicks off. Over the course of the tournament, 11 NFL stadiums will host 78 soccer matches on high-quality grass fields installed to meet FIFA demands.
— NFLPA (@NFLPA) June 10, 2026
When the World Cup ends, many of these same stadiums will go back to turf despite 92% of NFL players… pic.twitter.com/KIh2F6oXKI
NFL選手の92%が天然芝を要望
天然芝を求める選手らの動きは、今に始まったことではない。NFLPAは「原点回帰」だとして、フィールドに天然芝を再導入するようNFLチームに強く求めてきた。その際、NFL選手の92%が天然芝を好むという調査結果や、人工芝では怪我をしやすいことを示唆する研究報告を提示している。特筆すべきは、昨シーズンのNFLでは大きな怪我をした主力選手が例年以上に多かった点だ。
人工芝をめぐる議論は、文字通り「常に緑あざやかに」色あせないテーマだ。管理が容易で、そのため維持費も抑えられる。ということは、ここで大きな決定要因となるのも「緑色」のもの──つまり米ドル紙幣だと考えられる。国際サッカー連盟(FIFA)はW杯の試合会場となる全11カ所のNFLスタジアムに対して天然芝のフィールドを要求したが、スタジアム側は大きな抗議もなくこれに応じた。一方、NFLはこれまでのところ、選手たちがSNSで展開している「#WorthTheCost」運動に反応を示していない。
NFLPAは、昨年のFIFAクラブワールドカップの際にも天然芝への復帰を主張し、メットライフ・スタジアムでフィールドの天然芝への張り替えがいかに容易だったかを指摘している。だが、サッカーの大会でのこうした実績をきっかけに、NFLチームがアメフトのフィールドの芝生について再考するようになるかどうかは大いに疑問だ。



