暮らし

2026.07.22 14:00

「通知オフ」は無意味 スマホを机に置くだけで集中力が低下する理由

stock.adobe.com

重要な点として、実験中はスマホの着信音は鳴らないようにし、通知で注意がそれることはなかった。最初の研究では、スマホが物理的に身近にあるほど利用可能な認知能力が確実に低下することが分かった。課題のパフォーマンスはスマホが机の上に置かれている場合が最も悪く、別の部屋に置いてある場合が最も良好だった。そしてこの傾向はスマホを確認したいという衝動をうまく抑えられた参加者でも見られた。

advertisement

とはいえ、この結果はその後それほど明確な形で裏付けられてはいない。専門誌『Media Psychology』に2023年に掲載された、数十件の追跡研究を統合したメタ分析では、この効果は確かにあるが、最初の実験が示唆していたよりもかなり小さく、より限定的であることが分かった。影響が安定して見られたのはワーキングメモリに大きく依存する課題に限られ、持続的注意や自制心への目立った影響はほとんどなかった。

ほぼ同時期に実施された他の2つのメタ分析ではその傾向は強く、さまざまな認知領域の結果を統合すると有意な効果はまったく認められなかった。これによって最初の研究結果が完全に否定されるわけではないが、影響はそれほど劇的なものではなく、より控えめなものだと言える。つまり、スマホが視界に入ることは思考能力全般ではなく認知機能の特定の狭い領域に負担をかける可能性があるということだ。

ウォードらが提唱したメカニズムは、あらゆる誘惑に抵抗することでさまざまなことで使われる意志力の蓄えが減っていくという、時に「自我消耗」とも呼ばれるより広範な概念ではなく、注意制御に焦点を当てたものだ。

advertisement

この広範な主張については、慎重に捉える必要がある。専門誌『Perspectives on Psychological Science』に2016年に掲載された、同じ手法による大規模な研究では、24の研究室と2100人を超える参加者を対象に検証が行われたが、この効果を再現できなかった。そのため、自制心を1つの枯渇しうるリソースとして捉える考え方は現在では不確かなものと見なされている。

より限定的な解釈、つまりスマホが視界に入る場合に限った方がより説得力がある。デバイスに手を伸ばしたい衝動を抑えるには自動的な反応を積極的に抑制し続ける必要があり、その抑制には目の前の課題に実際に必要なのと同じ限られた注意リソースの蓄えが使われる。

専門誌『Psychological Review』に1994年に掲載された社会心理学者ダニエル・ウェグナーの研究で説明されている関連する現象は、古い理論ではあるものの役立つ類似点を示している。ウェグナーはこれを「皮肉過程理論」と呼んだ。ある考えを意図的に頭から追い出そうとすると、その考えが再び浮かんでいないかを定期的に確認する無意識の監視過程が必要になり、その継続的な監視自体が認知リソースを消費するというものだ。

次ページ > 注意力を守るのは意志の強さではない

翻訳=溝口慈子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事