AI保護主義は米国を傷つけかねない
ここまでの話を整理しよう。Inklingは、中国の最良のオープンモデルに性能で劣る。米国企業は、警告と調査と来たるべき規制によって、Inklingのような米国製ベースモデルへと押しやられつつある。一方、米国外の企業にそうした圧力はない。彼らは地上最強のオープン基盤であるGLM、Kimi、DeepSeekをファインチューニングできるのに対し、米国の競合他社はより弱い「許可された」代替品の上に構築することになる。
それが何を意味するか、考えてみてほしい。ファインチューニングしたモデルの性能の上限は、ベースモデルの上限で決まる。シンガポールやイスタンブール、バルセロナの企業がオースティンやニューヨークの企業より強力な基盤から出発すれば、その差は派生プロダクトにもそのまま反映される。コンピューティングの歴史上初めて、米国企業が基盤技術において構造的に不利な立場で戦うことになるかもしれない。才能や資本が足りないからではない。政策が自国企業を最良のインプットから締め出す一方で、世界の他の国々は自由に構築できるからだ。
筆者は長年、米中AI競争の勝敗を決めるのは個々の部品ではなくエコシステムであり、米国企業がグローバル市場とその産物を存分に活用することを妨げる規制は逆効果だと主張してきた。オープンウェイトは、このエコシステムの土台になりつつある。中国のプレーヤーはこの点を非常によく理解しているようで、有能な無料モデルを世界中にあふれさせてきた。一方、米国のフロンティアラボは最高の成果を非公開のまま抱え続けている。
そして今、中国の「オープン戦略」に対する米国の政策的回答は、オープンさで競り勝つことではなく、自国の開発者を縛ることになってしまっている。Inklingは、米国のオープンエコシステムに向けた真摯で歓迎すべき一歩だ。だが同時に、中国の研究成果の恩恵を受けており、当面はその価値を正当化するために保護主義を必要としているように見えることも事実である。その間にも、中国のオープンウェイトモデルは米国のフロンティア能力にじりじりと迫っている。
Inklingの教訓は、Thinking Machinesが何かに失敗したとか、何か間違ったことをしているとかいうことではない。オープンで自由なAIの重心が中国に移った、ということだ。それも、OpenAIの卒業生自身が中国製の基盤の上にモデルを築くほどに。米国産業を囲い込もうとするワシントンの本能は、守るつもりの企業をかえって不利な立場に追い込みかねない。強さは、より良く、より速く、そして、そう、より安く作ることから生まれる。自分のチームに劣った装備で戦わせることからではない。


