エヌビディアは、かつて議論の中心を占めていた中国関連の数十億ドル(数千億円)規模の問題について、言及を減らしている。そして現在同社が力を注いでいるテーマを見れば、今後の成長をどこから生み出そうとしているのか、その大きな変化が読み取れる。
エヌビディア(ティッカー:NVDA)の株価は過去2年間で62%上昇し、現在も史上最高値圏で推移している。そのため、記録的な数字の裏にある意味は見過ごされがちだ。直近の四半期もこの流れどおりで、データセンター部門の売上高は前年同期比92%増と急伸した。しかし、投資家にとって最も重要なシグナルは、必ずしも最も目立つ数字ではない。かつて大きな見出しを飾りながら、今や脚注程度の扱いに後退した問題こそが重要だ。エヌビディアにとって、その問題とは中国である。
目立たなくなった「数千億円規模の中国問題」
少し前まで、中国向けチップに対する米国の輸出規制への対応は、同社を語るうえで欠かせないテーマだった。経営陣は財務への影響を明確に説明しており、2025年5月発表の2026会計年度第1四半期決算には「H20の売上25億ドル(約4050億円。1ドル=162円換算)分を出荷できませんでした」と述べていた。誰の目にも明らかな、重大な障害だったのである。
ところが現在、この話題が語られる機会は減っている。問題自体が消えたわけではない。2026年5月の2027会計年度第1四半期決算説明会でも、同社は「(第2四半期の)業績見通しには、中国のデータセンター向けコンピューティングからの売上を一切織り込んでいません」と認めている。つまり、この市場を事実上切り捨てることで、危機に決着をつけたのだ。騒ぎは収まり、新たな現実を静かに受け入れる段階へと移った。
約32兆円規模の市場を切り拓く新成長ドライバー、自社CPU「Vera」
この静けさをもたらしたのは、エヌビディアが現在打ち出しているテーマの規模の大きさだ。それはCPUである。同社は将来像を大胆に描き直し、大型の新事業に軸足を移した。経営陣は現在、自社のCPU「Vera(ベラ)」を前面に押し出し、これは「エヌビディアにとってまったく新しい2000億ドル(約32.4兆円)のTAM(獲得可能な市場規模)を開くものです。当社がまだ参入していない市場です」と語る。
ウェブキャストでは、さらに具体的に、「今年のCPU売上高は合計200億ドル(約3.2兆円)近くに達する見通しが立っています」とも明らかにした。焦点は移った。苦境に立つGPU市場(対中規制の影響を受けた市場)を守る物語から、まったく新しい市場を積極的に攻める物語への転換である。同社は今や「世界最大のCPUサプライヤー」になることを目指している。



